今回は自社技術の棚卸しについてお話します。これは、保有している技術の一覧表を作ることです。一覧表といっても作りかたは様々で、自社技術の競争力の確認や、技術に基づいた新たなアプリケーション(新製品)を作るための着想を得るのに使用されます。
日本企業では、継続的に、技術の棚卸しが行われてきました。そして過去20年間の新規事業のトレンドは、こうした技術の棚卸しの結果、保有していると分かっている技術に基づく新製品だったのではないでしょうか。
1.製品を要素技術に分解
技術の棚卸しを行う方法の一つは、製品から要素(製品を構成する部品など)に分解し、分解された要素に関連性のある技術を一つ一つ洗い出す方法です。
デジタルカメラを例にすれば、レンズ、CMOSセンサ、映像エンジン(MPU)、メモリ、インターフェース、筐体などの部品で構成されます。レンズはガラス製やプラスチック製などがあり、プラスチック製の場合、レンズの設計技術、金型技術、成形技術、品質管理技術などに分解出来ます。設計技術は、要求の仕様化、仕様に基づいた図面の作成、図面に基づいた性能評価等の詳細な設計というプロセスに分解され、更に分解されていきます。
たしかに、要素技術への分解は大切なのですが、要素技術への分解を「どこまで(細かく)やるか」については、次の視点が重要です。
2.顧客価値を文章化
技術はいくらでも分解できてしまうので、「どこまでやるか」という視点は非常に重要です。「程よくやる」というのが回答なのですが(笑)、論理的な回答を試みれば、顧客価値を発揮するレベルにまで分解すればいい、ということになります。
先ほどのレンズの例では、性能が、明るさ(F値)、絞り、倍率等の指標で表現されます。仮に、写真やレンズに詳しくない人を顧客としたならば、性能値は顧客価値ではありません。「暗い場所でもブレない」とか、「ズームで撮影しても手ブレがない」とかいった言葉が顧客価値になります。では、「暗い場所でもブレない」という顧客価値を対象とした場合、どうなるでしょうか?
暗い場所でもブレないためは、レンズの明るさが関係します。F値が高ければ、明るいレンズになります。F値が高いレンズをプラスチックで成形するのは難しい技術です。なぜなら、プラスチックの収縮によって、型通りのレンズが出来ないからです。
このように、どういう顧客価値を実現するのかを考えて文章化しておくことが重要です。「F値2.0のレンズをプラスチックで成形できる」 という技術については、「暗い場所でも手ブレしない」 という文章でレンズの顧客価値が表現出来るのです。
3.顧客価値の文章化から競争力を評価
顧客価値を表現したら、次にアプリケーションの探索に入ります。レンズであれば、「暗い場所でも手ブレしない」レンズをプラスチックで大量に生産できる技術力が背景となり、この競争力を評価します。つまり、他社が実施できるのか、できないのか、どの程度競争力があるのか、それはなぜなのか、特許があるのか、などを一覧表にしていく訳です。
これによって、技術ごと、顧客価値ごとの競争力が明確になります。
4.成長市場と照合
これから成長するであろう市場、...