【計測の精度と不確かさとは 連載目次】
測定の”不確かさ”という従来の“精度”に置き換わる概念が「世界中のどこでも共通の定義で扱える量」「計算や表現が規定される量」として、1993年以来ISOで提案され、国際規格や論文等の技術基盤として浸透しつつあります。今回と次回はこの考え方や方法について解説していきます。
【この連載の前回:計測の精度と不確かさとは(その3)へのリンク】
4.「不確かさ」とは
(1) 基本スタンス
“不確かさ”は次のスタンスで組み立てられ、“精度”の課題を回避しています。
- 計測の信頼性を表す“不確かさ”という新しい概念を導入する
- “誤差”という概念を用いることなく、標準からのトレースをベースとする
- 影響要因を加味した計算方法を規定することで一貫した信頼度の体系を構築する
(2) 定義
“不確かさ”は、各種の規定やガイド文書の中で、次のように規定されています。[1][2]
- 計測の結果に付随した,合理的に測定対象量に結び付けられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ(GUM,VIM2 , JIS Z8103)
- 用いる情報に基づいて,測定対象量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける負でないパラメータ(VIM3)
つまり、“不確かさ”は計測結果の信頼性を示す指標であり、測定のばらつきを表しているということです。この考えの中では、従来の「系統誤差(計測値のかたより)」と「偶然誤差(ばらつき)」を分離せずに総合的に合成して表現することを意味しています。(既知のかたよりは予め計算・補正する前提)
このことは、図3のように計測の方法によって温度の影響がばらつきとして作用する場合とかたよりとして作用する場合があり、これをどちらとして計算するかは、ユーザが決定すべきであるという立場に立っていることになります。
測定の”不確かさ”は、測定を行った際の「その計測条件下での測定結果の信頼性」を評価するものです。従って「計測器の不確かさ」という表現は誤りで、仮に製品仕様書内にこのような記載があった場合は「計測器の校正の不確かさ」を慣用的な形で表していることになります。
【参考文献】
[1].ISO/IEC Guide 99:International Vocabulary of Metrology(VIM)国際計量計測用語):計量に関す...