新たな時代の「ものづくり」(後編)商品企画と技術力の活かし方

更新日

投稿日

1.商品企画の要点

 前回は、「新たな時代の「ものづくり」(前編) 従来と異なる分野で事業化する」を解説しました。今回は、商品企画と技術力の活かし方です。商品企画のタイプは、マーケットイン型とプロダクトアウト型に大別されます。前者は、顧客のニーズが前提であり、顧客に解決策(技術・製品・サービス)を提供することによって市場に入っていきます。後者は、提供側の技術シーズを前提に、解決策を必要とする顧客や市場を探索することになります。
 各社の経営状況や得意分野が異なる為、企画のタイプに優劣はありません。解決策の提供で重要なことは、作り手側の自己満足的な技術スペックの羅列ではなく、ユーザーの不足・不便・不安などの解決となる顧客のベネフィットを実現する事です。
 マーケットイン型は、他社が断るような難しい技術要求を顧客から出された場合、特に有効です。自社の技術力を高める絶好の機会であり、オンリーワンにもなり得るからです。一方のプロダクトアウト型の場合は、市場探索の際に異分野と関連づける力が重要となります。但し、この場合、勘違いしてはいけない注意事項は、強みでない技術を未知の異分野に提供するリスクを回避することです。具体的には、(1)工業製品として自社の卓越した技術の強みを活かす事と、(2)切り口を変えた解決策として異分野に提供する事、となります。

2.技術資産の棚卸と技術の見える化

 製造業の競争力を次式で表してみました。

     競争力=(市場の成長力)X(際立った技術資産)………………(1)

 自社の際立った技術の強みを明確化するには、事業ドメインから離れて技術資産を抽象化してみることが有効です。例えばデジタルカメラの場合、オートフォーカス、手振れ補正技術、顔認識技術など、製品に使われている技術を抽出し、これらを体系化してみます。技術資産を棚卸することで、その強みを際立たせて明確にし、異分野転用の可能性に合わせて再編集するのです。
 完成品ではなく、B2Bの組込み製品(部品・モジュール・デバイス等)の場合は、部品を製造する技術を抽象化して、別の形で「技術の見える化」をすることも有効です。例えば金属加工技術の曲げ、溶接、磨きなどの加工技術を使って、全く異分野のB2C製品で技術力の高さを示したのが、プルトップ缶オープナーの事例です。
 モジュール製品の技術を見える化する場合には、使い方を想定した模型を見せて顧客に理解させることも有効でしょう。例えば、模型を見た異業種の通信業界からオファーを受けて、既存市場の中のニッチな潜在市場を開拓できたのが、カメラに見えない卓上型カメラの事例です。
 完成品として際立った技術を持っている場合には、逆に...

1.商品企画の要点

 前回は、「新たな時代の「ものづくり」(前編) 従来と異なる分野で事業化する」を解説しました。今回は、商品企画と技術力の活かし方です。商品企画のタイプは、マーケットイン型とプロダクトアウト型に大別されます。前者は、顧客のニーズが前提であり、顧客に解決策(技術・製品・サービス)を提供することによって市場に入っていきます。後者は、提供側の技術シーズを前提に、解決策を必要とする顧客や市場を探索することになります。
 各社の経営状況や得意分野が異なる為、企画のタイプに優劣はありません。解決策の提供で重要なことは、作り手側の自己満足的な技術スペックの羅列ではなく、ユーザーの不足・不便・不安などの解決となる顧客のベネフィットを実現する事です。
 マーケットイン型は、他社が断るような難しい技術要求を顧客から出された場合、特に有効です。自社の技術力を高める絶好の機会であり、オンリーワンにもなり得るからです。一方のプロダクトアウト型の場合は、市場探索の際に異分野と関連づける力が重要となります。但し、この場合、勘違いしてはいけない注意事項は、強みでない技術を未知の異分野に提供するリスクを回避することです。具体的には、(1)工業製品として自社の卓越した技術の強みを活かす事と、(2)切り口を変えた解決策として異分野に提供する事、となります。

2.技術資産の棚卸と技術の見える化

 製造業の競争力を次式で表してみました。

     競争力=(市場の成長力)X(際立った技術資産)………………(1)

 自社の際立った技術の強みを明確化するには、事業ドメインから離れて技術資産を抽象化してみることが有効です。例えばデジタルカメラの場合、オートフォーカス、手振れ補正技術、顔認識技術など、製品に使われている技術を抽出し、これらを体系化してみます。技術資産を棚卸することで、その強みを際立たせて明確にし、異分野転用の可能性に合わせて再編集するのです。
 完成品ではなく、B2Bの組込み製品(部品・モジュール・デバイス等)の場合は、部品を製造する技術を抽象化して、別の形で「技術の見える化」をすることも有効です。例えば金属加工技術の曲げ、溶接、磨きなどの加工技術を使って、全く異分野のB2C製品で技術力の高さを示したのが、プルトップ缶オープナーの事例です。
 モジュール製品の技術を見える化する場合には、使い方を想定した模型を見せて顧客に理解させることも有効でしょう。例えば、模型を見た異業種の通信業界からオファーを受けて、既存市場の中のニッチな潜在市場を開拓できたのが、カメラに見えない卓上型カメラの事例です。
 完成品として際立った技術を持っている場合には、逆に異業者から協業のオファーを受ける場合もあります。マーケットイン型の協業に発展したネイルニッパーの事例です。
 自社事業の主要製品が、組込み部品であっても、技術の見える化が企業のブランディング形成に貢献し、企業価値を高める役割を果たします。具体的事例は、「活用事例」で別稿にて紹介していきます。

お知らせ:下川さんの大人気セミナーがDVDになりました!simokawa2
「新ビジネス・新製品開発 目からウロコのアイデア発想法」
 https://www.monodukuri.com/dvd_library/dt/4

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石川 耀弓

技術をお金に変える元ソニーの女性エジソン。日本国内で休眠中の76%もの技術の種を掘り起こし、金の卵を孵化して世界に送り出す事。これが、私、女性エジソンの使命です。

技術をお金に変える元ソニーの女性エジソン。日本国内で休眠中の76%もの技術の種を掘り起こし、金の卵を孵化して世界に送り出す事。これが、私、女性エジソンの使...


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
開発リーダーが気をつけるべき口ぐせとは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その25)

        今回は「開発リーダーが気をつけるべき口ぐせ」をテーマにしました。この記事では、口ぐせが及ぼす...

        今回は「開発リーダーが気をつけるべき口ぐせ」をテーマにしました。この記事では、口ぐせが及ぼす...


時間軸(Time) 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その53)

        イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)の解...

        イノベーションに必要な要素を表したKETICモデルの2つ目、Experience(経験)の解...


自社の存在価値 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その118)

  前回は、「整理するフレームワークで整理・構造化した知識の中で焦点を当てる。重要部分を切り取る。」という議論の中で、果物の変色に目を付け...

  前回は、「整理するフレームワークで整理・構造化した知識の中で焦点を当てる。重要部分を切り取る。」という議論の中で、果物の変色に目を付け...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
生産性向上の鍵、イノベーションへの挑戦

 今回は、マクロ的な視点でみたイノベーションの意味について、解説します。2016年は、グローバリゼーションに対する変化が顕在化した年でした。イギリスのEU...

 今回は、マクロ的な視点でみたイノベーションの意味について、解説します。2016年は、グローバリゼーションに対する変化が顕在化した年でした。イギリスのEU...


‐現場観察のチェックポイント‐  製品・技術開発力強化策の事例(その8)

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...

 前回の事例その7に続いて解説します。現場観察はどのような場合でも非常に大切です。 価値ある情報をくみ上げる観察力を絶えず自己啓発する必要があります。現場...


自動車部品メーカーの「待ち受け型から提案型製品開発」への転換~QFD-TRIZの活用

※画像はイメージです  今回はステアリングシャフトやドアヒンジなどの輸送用機器メーカーで2015年からTRIZを活用した技術課題解決力の強化、シーズ...

※画像はイメージです  今回はステアリングシャフトやドアヒンジなどの輸送用機器メーカーで2015年からTRIZを活用した技術課題解決力の強化、シーズ...