前回のその3に続いて解説します。シックスシグマでは、顧客主義に基づいてVOC(顧客の声:Voice of Customer)で始まり、顧客の声で終わると言われます。顧客要求を満たせなかったものが「欠陥=Defect」となります。従って、顧客要求は測定可能な数値に置き換えられ定義されます。VOCにはサービスを購入する顧客だけでなく、社内要求も対象となります。
シックスシグマでは、経営に対して重要な影響を与えるVOCを取り上げます。Defineフェイズで行う事は、問題や課題を取り上げた背景や現状と将来への影響度を考慮し、解決するための具体的取り組み内容と、数値目標及びスケジュールを決める事です。
1.CTQ(Critical to Quality)を明らかにする
CTQとは、問題や課題に対して「決め手」となるものを指します。問題や課題の性質を把握し、達成すべき測定可能な目標を設定するためには、まず問題や課題の実態を知る必要があります。通常は経営課題の選択を行うチャンピオンから提供される事例情報に基づき、問題・機会記述書を作成します。問題・機会記述書に決められた書式は特にありませんが、次のような事柄をチームでシェアし、その次のプロジェクトチャーター作成に進みます。
•問題や課題の背景は何か?何故解決しなければならないのか
•その問題や課題によって、どの様な(悪)影響が発生するのか
•この問題や課題に対処しなければ将来どうなるのか
上の例で言えば、問題は低い歩留りです。よって最低5%といった歩留り改善目標を据えがちです。しかし、歩留りを下げている要因はある程度目処がついており、何を改善し歩留りを向上させるのか、もっと具体的内容を設定出来るはずです。例えばタイプBの欠陥が歩留り低下の主要因なら「タイプBの欠陥不適合率:○%→□%へ削減」、さらにかみ砕き「タイプB欠陥個数:△個±5個、Cpk>1.0」の様に、具体的数値目標に落とし込みます。%の様な相対値より、出来るだけ絶対値による設定を試みて下さい。
2.プロジェクトチャーターを作成する
プロジェクトチャーターとはプロジェクトの計画書です。既出の問題・機会記述書のまとめを含め、以下の様な項目を記入していきます。
a. ビジネスケース
b. 問題・機会記述書
c. 目標記述書
d. プロジェクトの適用範囲、制約、前提条件
e. チームメンバー
f. 利害関係者
g. プロジェクト期間
ビジネスケース等のプロジェクトチャーターの一部はチャンピオンにより既に記入されているので、既述部分はメンバーで確認し、残りを埋めて行きます。dのプロジェクトの適用範囲や制約について上述の歩留り改善のケースで言えば、新製品Cの歩留り改善に限定して、他の製品を適用外とする等の改善対象を明確にする事です。プロジェクトの成否や改善効果を明確にする為にも、これらを決めておく必要があります。
3.プロジェクトチャーター作成事例
ビジネスケースは問題の背景を分かりやすく記述し、問題・機会記述書は既に作成したものの要約を記入します。それを受けて目標記述の部分には、本プロジェクトで達成すべき目標を具体的数値で明記します。注意すべき部分は、目標記述の部分です。本件で問題となっているのは低い歩留りなので、歩留りを何%改善するという目標設定でも良く思えます。しかしながら実際に取り組んでみると、歩留り改善の為に何をどのように改善するのか、具体的に注力すべき部分が解ります。これをDefineフェーズで最初から明確にして、具体的目標として記す事がプロジェクトの成功に関わる重要な決定部分です。
問題が解決されないもしくは効率良く解決できないのは、問題が明確になっていないからです。もし具体的なバックデータが無くこれから調査や分析が必要なら、Defineフェイズを長めに取って具体的目標を設定します。また目標設定は複数でも構いません。本事例で言えばB型欠陥以外に"キズ"という別要因があり、2因子の改善を目指すなら、キズの目標値も合わせて設定します。
4.目標基準の設定
Defineフェイズの最後では、プロジェクトが目標とし達成すべき基準を設定します。プロジェクトチャーターの目標記述で記載した内容を、具体的かつ明確に記述します。目標Yの数値目標を到達目標の平均値や...