IoT 時代の製品開発とは - カギとなるデータ指向とシステム設計 -

更新日

投稿日

 
 今回は、BtoB のビジネスをベースにハードウェア開発を中心としていたメーカーが IoT に対応した製品開発にシフトする際のカギとなるデータ指向とシステム設計について解説します。
 
 IoT ビジネスに必要となるのは、センサーや機器からデータを受け取り、他のデータと組み合わせて分析することにより、従来とは違う新しい価値を顧客に提供することです。センサーや機器を使ってどのようなデータを収集し、他の様々な機器のどのようなデータと組み合わせると新しい価値を作り出すことができるのか、データを使ったシステム全体の設計力が問われるということなのです。
 
 ハードウェア技術が中心となっている製品開発の場合、仕様や精度、コストなどの目標が明確で、それを達成するためにモノ(実物)を使って試行錯誤や擦り合わせを繰り返すという目標達成スタイルであり、そもそもデータを活用する意識が低いという傾向があります。
 
 まず必要なことは、製品やサービス(ソリューション)の企画や開発をデータの活用を中心にしたスタイルに変えることです。
 
 自らの製品開発スタイルをデータの活用や管理を重視した開発スタイルのシフトしないと、データの活用に必要となるシステムエンジニアを育成したり SIer との協業を行うことも難しいのが現実です。データ指向の開発スタイルに変えるには、私の次の記事が参考になります。
 
 
 加えて取り組むべきことはシステム設計の見直しです。ハードウェア技術が中心となっている製品開発の場合、ハードを中心に必要な機能や要素の見通しが立てやすいため、システム設計が行われていないことがほとんどです。これが IoT ビジネスにシフトする際の大きな障害となります。
 
 IoT ビジネスにおける製品開発とは、従来からの装置やデバイスなどを、ハード、ソフト、データが一体化したシステムとして設計し、全体として機能するソリューションやサービスを開発するということなのです(システム設計とは下図に示している範囲)。ハード、ソフト、データを合わせたトータル・システムとしての設計力が問われることになります。
 
  技術マネジメント
 
 従来の製品開発スタイルがハード技術中心のものであっても、ハード、ソフト、データを合わせたシステム設計を行うことは可能です。ハード技術者を中心に頭の中で暗黙的、属人的にやっていた従来の設計作業を可視化することによって、ハード技術者であってもシステム設計に取り組むことが可能です。ここではそのポイントを紹介しておきましょう。
 

◆ 対象は製品あるいはシステム全体

 
 電気、機構、ソフトといった主要なサブシステムはもちろん、データも合わせてシステム設計の対象となります。さらに、生産技術、製造、保守、サービスといった領域もシステム設計の対象になります。
 

◆ 機能要求と非機能要求のセットで考える

 
 システム設計では仕様や要件のブレークダウンを行いますが、その際に常に品質属性を考慮することが大切です。機能要求と非機能要求とをセットで取り扱うことにより、総合的な品質属性管理を行います。
 

◆ ブレークダウン(展開)は構成要素間の関係を保証して実施する

 
 システム設計は、仕様の詳細化や仕様から内部構造への変換など、適宜構成要素をブレークダウンしていくことになりますが、その際に、構成要素間の関係がどのよ...
 
 今回は、BtoB のビジネスをベースにハードウェア開発を中心としていたメーカーが IoT に対応した製品開発にシフトする際のカギとなるデータ指向とシステム設計について解説します。
 
 IoT ビジネスに必要となるのは、センサーや機器からデータを受け取り、他のデータと組み合わせて分析することにより、従来とは違う新しい価値を顧客に提供することです。センサーや機器を使ってどのようなデータを収集し、他の様々な機器のどのようなデータと組み合わせると新しい価値を作り出すことができるのか、データを使ったシステム全体の設計力が問われるということなのです。
 
 ハードウェア技術が中心となっている製品開発の場合、仕様や精度、コストなどの目標が明確で、それを達成するためにモノ(実物)を使って試行錯誤や擦り合わせを繰り返すという目標達成スタイルであり、そもそもデータを活用する意識が低いという傾向があります。
 
 まず必要なことは、製品やサービス(ソリューション)の企画や開発をデータの活用を中心にしたスタイルに変えることです。
 
 自らの製品開発スタイルをデータの活用や管理を重視した開発スタイルのシフトしないと、データの活用に必要となるシステムエンジニアを育成したり SIer との協業を行うことも難しいのが現実です。データ指向の開発スタイルに変えるには、私の次の記事が参考になります。
 
 
 加えて取り組むべきことはシステム設計の見直しです。ハードウェア技術が中心となっている製品開発の場合、ハードを中心に必要な機能や要素の見通しが立てやすいため、システム設計が行われていないことがほとんどです。これが IoT ビジネスにシフトする際の大きな障害となります。
 
 IoT ビジネスにおける製品開発とは、従来からの装置やデバイスなどを、ハード、ソフト、データが一体化したシステムとして設計し、全体として機能するソリューションやサービスを開発するということなのです(システム設計とは下図に示している範囲)。ハード、ソフト、データを合わせたトータル・システムとしての設計力が問われることになります。
 
  技術マネジメント
 
 従来の製品開発スタイルがハード技術中心のものであっても、ハード、ソフト、データを合わせたシステム設計を行うことは可能です。ハード技術者を中心に頭の中で暗黙的、属人的にやっていた従来の設計作業を可視化することによって、ハード技術者であってもシステム設計に取り組むことが可能です。ここではそのポイントを紹介しておきましょう。
 

◆ 対象は製品あるいはシステム全体

 
 電気、機構、ソフトといった主要なサブシステムはもちろん、データも合わせてシステム設計の対象となります。さらに、生産技術、製造、保守、サービスといった領域もシステム設計の対象になります。
 

◆ 機能要求と非機能要求のセットで考える

 
 システム設計では仕様や要件のブレークダウンを行いますが、その際に常に品質属性を考慮することが大切です。機能要求と非機能要求とをセットで取り扱うことにより、総合的な品質属性管理を行います。
 

◆ ブレークダウン(展開)は構成要素間の関係を保証して実施する

 
 システム設計は、仕様の詳細化や仕様から内部構造への変換など、適宜構成要素をブレークダウンしていくことになりますが、その際に、構成要素間の関係がどのようになっていて、それが機能・非機能要求を満足することになっていることを記述することが大切です。また、設計根拠を明確にすることも重要です。
 
 実際に、従来の製品開発のやり方を上記の方法で変えることにより、単独で稼働する民生品や生産設備を作っていたメーカーが、他製品とネットワークでつなげることができる製品を開発できるようになった実績もあります。いきなり直接的な IoT 製品やソリューションの開発を行うのではなく、まずは、データ指向とシステム設計に取り組むこと、IoT ビジネスはこの延長上にあります。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
リーン製品開発の基本原則(その2)

   前回の「リーン製品開発の基本原則(その1)」に続けて解説します。 3. リーン製品開発の基本原則3 【コミュニケーションの見える...

   前回の「リーン製品開発の基本原則(その1)」に続けて解説します。 3. リーン製品開発の基本原則3 【コミュニケーションの見える...


知識・経験を物理量で整理する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その67)

 前回までは、知識や経験を時系列で整理するという話をしてきましたが、当然時系列以外の物理量という軸があります。今回からは「知識・経験を物理量で整理する...

 前回までは、知識や経験を時系列で整理するという話をしてきましたが、当然時系列以外の物理量という軸があります。今回からは「知識・経験を物理量で整理する...


仕事のプロセスを改善ストーリー(SRストーリー)で可視化

 仕事のプロセス(やり方)は、各個人や企業によって多種多様です。そのためチームや組織で課題を共有化するためには、工夫が必要です。たとえば、チームや組織内で...

 仕事のプロセス(やり方)は、各個人や企業によって多種多様です。そのためチームや組織で課題を共有化するためには、工夫が必要です。たとえば、チームや組織内で...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
新技術の特長活かした新規事業機会創出に向けて

※イメージ画像   1. 電子部品業界を牽引 ~ リバーエレテック社  今回は水晶振動子や水晶発振器を中心に業界のリーディングカンパニー...

※イメージ画像   1. 電子部品業界を牽引 ~ リバーエレテック社  今回は水晶振動子や水晶発振器を中心に業界のリーディングカンパニー...


製品開発部へのカンバン導入記(その1)

        最近ビジネスの世界では、カンバンを使ってプロジェクトを管理しようとする動きがとても強いようで...

        最近ビジネスの世界では、カンバンを使ってプロジェクトを管理しようとする動きがとても強いようで...


進捗の可視化は必要最小限にするのがポイント(その2)

  3. アクティビティとプロダクトの2軸管理    基本メトリクスセットの4指標(基本メトリクスと呼びます)について計画と実績...

  3. アクティビティとプロダクトの2軸管理    基本メトリクスセットの4指標(基本メトリクスと呼びます)について計画と実績...