法令遵守 物流のリスク認識を高める(その3)

更新日

投稿日

サプライチェーンマネジメント

◆ コンプライアンスリスクへの対応

 BCP(事業継続計画)は一般的に大地震や風水害などの大規模災害を対象に取り組むことが多いようです。物流ではコンプライアンスリスクについても十分に取り組んでおく必要があります。帝国データバンクによると、コンプライアンス違反をきっかけとする倒産が増加しており、その中でも運送事業者の行政処分などによる倒産が急増しているとのことです。

 2012年4月に関越自動車道で発生したツアーバスの死亡事故以降、監査が厳格化したほか行政処分を受けた運輸業の倒産が相次ぎ『業法違反』[1](60件、構成比30%)が初のトップになったとのこと。どうやら運輸業の『業法違反』が急増したことで全体の倒産件数を押し上げているようですね。大変残念なことだと思います。また荷主の目も厳しくなっており、コンプライアンスを守れない業者とは取り引きをしないという傾向も強まってきています。

 トラックドライバーの労働時間を守らない、社会保険に加入しない、下請法違反を繰り返しているなどの物流会社はその事実が判明したと同時に取引停止になる可能性も秘めています。このようなコンプライアンスに対して「法令を厳格に守っていたら収益など出ない」とうそぶいている経営者がいることも事実です。こう言いたくなることも理解できないわけではありません。かといってそれを容認することは100%ないといえると思います。

 また、法令の内容を知らなかったから違反を犯してしまったという事例も多々あります。しかしこれもまた言い訳に過ぎません。実務に必要な法令は知っていて当たり前と言われたら返す言葉もないでしょう。コンプライアンスは日頃の活動で十分に対処することが可能です。それに少しの時間とコストをかける必要があることはやむを得ないことです。

 法令は社会のルールですから、それを守れなければ市場から退場するしかありません。ま...

サプライチェーンマネジメント

◆ コンプライアンスリスクへの対応

 BCP(事業継続計画)は一般的に大地震や風水害などの大規模災害を対象に取り組むことが多いようです。物流ではコンプライアンスリスクについても十分に取り組んでおく必要があります。帝国データバンクによると、コンプライアンス違反をきっかけとする倒産が増加しており、その中でも運送事業者の行政処分などによる倒産が急増しているとのことです。

 2012年4月に関越自動車道で発生したツアーバスの死亡事故以降、監査が厳格化したほか行政処分を受けた運輸業の倒産が相次ぎ『業法違反』[1](60件、構成比30%)が初のトップになったとのこと。どうやら運輸業の『業法違反』が急増したことで全体の倒産件数を押し上げているようですね。大変残念なことだと思います。また荷主の目も厳しくなっており、コンプライアンスを守れない業者とは取り引きをしないという傾向も強まってきています。

 トラックドライバーの労働時間を守らない、社会保険に加入しない、下請法違反を繰り返しているなどの物流会社はその事実が判明したと同時に取引停止になる可能性も秘めています。このようなコンプライアンスに対して「法令を厳格に守っていたら収益など出ない」とうそぶいている経営者がいることも事実です。こう言いたくなることも理解できないわけではありません。かといってそれを容認することは100%ないといえると思います。

 また、法令の内容を知らなかったから違反を犯してしまったという事例も多々あります。しかしこれもまた言い訳に過ぎません。実務に必要な法令は知っていて当たり前と言われたら返す言葉もないでしょう。コンプライアンスは日頃の活動で十分に対処することが可能です。それに少しの時間とコストをかける必要があることはやむを得ないことです。

 法令は社会のルールですから、それを守れなければ市場から退場するしかありません。まさに事業を継続するため避けて通れないのがコンプライアンスリスクへの対応なのです。以上のように、リスク対応は会社を継続させていくために必須要件です。ぜひ会社内でリスクマインドを高めるとともにリスクマネジメントを実施していきましょう。

[1]業法とは、特定の業種の営業の自由を公共の福祉のために制限する内容の法律を指す。法令用語ではなく、講学上の用語ないしは俗語である(引用:Wikipedia)。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
海外工場支援者のための「物流指導7つ道具」(その8)

第8回 道具5「物流評価シート」(下) 前回のその7に続いて解説します。 ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.海外工場の物流設計評価...

第8回 道具5「物流評価シート」(下) 前回のその7に続いて解説します。 ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.海外工場の物流設計評価...


SCM構築の必要性・目的を明確にすることの重要性 SCM最前線 (その4)

 前回のその3に続いて解説します。    3. SCM構築が進まない最大の理由:SCM構築の必要性と目的が曖昧  ...

 前回のその3に続いて解説します。    3. SCM構築が進まない最大の理由:SCM構築の必要性と目的が曖昧  ...


収益を決定するサプライチェーンの関係性

1.サプライチェーンの同期化と能力  個々の業務スピードが高くても、そのスピード自体がバラバラだと在庫が溜まるため、機会損失が発生します。そういった機会...

1.サプライチェーンの同期化と能力  個々の業務スピードが高くても、そのスピード自体がバラバラだと在庫が溜まるため、機会損失が発生します。そういった機会...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
顧客から頼られる物流人財の育成とは 真の物流事業者(その3)

        今回は、物流事業者が真の物流事業者となるための人財育成についてです。従来の運送業、倉庫業では、顧客から指示されたことを正確にこなすこ...

        今回は、物流事業者が真の物流事業者となるための人財育成についてです。従来の運送業、倉庫業では、顧客から指示されたことを正確にこなすこ...


顧客満足度を知ろう:物流の地位向上のために(その2)

  ◆ 顧客満足度を知ろう 世間の物流に対する認識が低いことは事実ですが、物流業務に携わっている人にとってみると物流の地位が低いこと自体...

  ◆ 顧客満足度を知ろう 世間の物流に対する認識が低いことは事実ですが、物流業務に携わっている人にとってみると物流の地位が低いこと自体...


トラックドライバーの荷待ち時間などの実態把握 物流会社の交渉術(その2)

        国交省は平成29年5月31日、トラックドライバーの荷待ち時間などの実態把握や解消に向けて、 荷待ち時間などの記録を義務付けた貨物自動...

        国交省は平成29年5月31日、トラックドライバーの荷待ち時間などの実態把握や解消に向けて、 荷待ち時間などの記録を義務付けた貨物自動...