1.技能伝承
◆ 指導書とビデオで勉強会
昔から物流業務の標準化は遅々として進んでいません。その影響でしょうか、物流スキルも俗人的な場合が多くみられ、その人がいなくなったら業務に支障が出るケースが出てきています。物流業務の標準化の遅れにより、物流ノウハウをふんだんに持ち合わせた会社は多くないのです。このようなノウハウの伝承は簡単ではないかもしれませんが、企業の永続的な存続を考えると、少しずつでもよいので後輩に教えることが必要です。
標準作業が作成されていない会社では、その作業の手順と要点を一度書き出してみましょう。書き出してみると、その作業の修正ポイントもみえてくる可能性があります。もちろん、それがそのまま後輩に対する指導書になることもあるでしょう。やはり教えるためには「書き物」は必要なのです。その「書き物」を手にしながら仕事をやってみせ、やらせて確認するというプロセスを踏むことが重要です。実際にやらせる前に指導書を読ませて「説明させる」というプロセスを入れるともっとよいと思います。
自分しかできないと思われる作業を持っている人は、優先的に仕事を書き出してみましょう。あるいは自分の作業をビデオに撮ってもらうことも効果的です。その職場の人たちを集めてビデオを使った勉強会を開き、その作業について意見交換するのです。「自分だったらここをこうする」、「安全上ここをこうした方がよい」といったようにディスカッションするのです。普段はなかなか、他の人の仕事をじっくりと観察する機会はないと思われますので、できるだけ積極的に勉強会の場を設けるとよいでしょう。
運送作業であれば、ドライブレコーダーを使った勉強会も可能です。また、デジタコで診断される評価が優秀な人の運転状況を確認することもよい勉強になるうえ、後輩に対する良いお手本にもなります。
2.人財の育成・教育計画
◆ 計画的な人財育成
物流業務を指導する際はその後輩に何をやらせたいのか、業務水準はどのレベルにあるのか、またその水準からどのような教え方をしなければならないのかを明確にすることから始めましょう。
(1)業務の洗い出しの例
- パレット品棚入れ作業
- 小物製品ピッキング作業
- 在庫チェック作業
業務の洗い出しは、どのような作業を後輩に身につけてほしいのかを明確にします。洗い出しが終わったら次のステップに移ります。
(2)期待値のレベル設定例
期待値のレベル設定方法はいろいろあると思いますが、極力シンプルにするとよいのではないでしょうか。一例を示しましょう。3点満点で示します。
- 3点:人に教えられるレベル
- 2点:一人で(一人前に)仕事ができるレベル
- 1点:人に指導されながら、仕事ができるレベル
それぞれの作業で、その人に「こうなってほしい」というレベルを明らかにします。例えば「小物ピッキング作業」について目標レベルを3点と設定します。それと同時に現状レベルを明確にします。同じ作業について2点としましょう。つまりその人は「小物ピッキング作業」の現状レベルが2点、それを引き上げて3点にしようという意図です。
このようにして、物流現場の後輩の現時点での実力値と引き上げたい目標値を定めるのです。
以上が計画的人財育成の準備段階です。これが終わったら次に教育計画を作成します。教えられる人の数が限られていると、いつでも教育可能というわけにはいきませんので、スケジュールをつくることが必要になります。その日は指導側も教えられる側も必ず時間を空けるようにします。
このような教育の運営が計画的人財育成ということになるのです。場当たり的な人材育成は長続きしません。職場のみんなが等しく実力を向上できるような仕掛けが必要です。
3.作業訓練の道場
◆ 道場で基本学び、現場で仕事を覚える
ノウハウを伝えることができてきたら、いよいよ作業を標準化していくプロセスに移ります。
本来であれば、この順番が逆であることを認識しておく必要があります。つまり仕事を始める前提条件として標準化があるということです。仕事を標準化し、標準作業書を作成し、それを使って仕事を教えるというプロセスが正しい手順だということです。
しかし最初から標準化だとか標準作業書とか言い始めると、その入り口で作業者が抵抗感を覚えてしまい、先に進まない恐れがありますので、まずベテラン社員が仕事を書き出し、それを標準作業書と位置づけ、徐々に改善していく方式をとっても良いと思います。
前述の作業者ごとの現状の実力値と目標レベルについては、物流現場に貼り出しましょう。誰の目にも触れるようにし、計画的人財育成を行っているということを周知し、共有していくことが望ましいと思われます。
一つ、事例を紹介しますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
「作業訓練道場」と称して実際に体を動かし、作業トレーニングを実施できるエリアを...