1. 稼働分析とは
◆ 稼働分析にチャレンジ
今保有している資源をどこまで有効に活用しているかを知ることは重要です。今回は改善手法の一つ「稼働分析」についてです。物流スタッフはムダを定量化しそれを根こそぎ解決できなければなりません。稼働分析はその名の通り現場の稼働状況を分析して定量化するものです。
稼働状況には人の状況と機械の状況があります。たとえば人が一日八時間仕事をしているとしたら、その中でどのような仕事をどれくらいやっているのかを分析するのです。機械は本来であれば24時間、365日稼働させたいものです。しかし実際にはそこまで動かしている例はまれです。
たとえば物流業界でいえばトラックという機械をどれくらい稼働させているのかどうかを調べてみると、意外と少ない時間しか動かしていないことがわかります。ではどのように稼働分析を行っていくかについてです。
稼働分析には「連続稼働分析」と「ワークサンプリング」の二つがあります。前者はその人や設備に一日張り付いて稼働状況を調べていく方法です。
人の場合で例を示すと朝のミーティングが8時から始まり、8時15分から1分かけて作業場に移動、8時16分から2分かけて機械の立ち上げを行って・・・というように事細かに一日の作業を把握していきます。
そうすると一日の仕事として何をやっているのか、手待ちはどれくらいあるのか、改善すべき点は何があるのか、そういった詳細の状況がすべてわかるのです。これは細かいデータの把握という点では非常に有効な手法だと言えます。しかし一日で一人の作業者しか観測できない、時間がかかる、などのデメリットがあることも事実です。
そこでもっと簡単な手法としてのワークサンプリングを活用する手があります。
ワークサンプリングとは一定の間隔で作業者や機械を観察し稼働状況を把握していく手法です。具体的には物流現場のどこかに立ちそこから見える作業者や機械を観察します。ここでいう一定間隔とは15秒間隔とか30秒間隔といった時間的な間隔を指します。欲しいデータ数を考慮し、その間隔時間を定めればよいと思います。
2. 身につけるべき分析手法とは
◆ 物流稼働分析結果の認識
(1)ピッキング作業の稼働分析
稼働分析の結果としてどのような仕事をどれくらいの比率で行っているのかがわかります。ピッキング作業を例にとって説明します。ピッキング作業の付加価値作業とは「ものを棚から取り出す」ということになります。稼働分析の結果、この作業には20%かかっていることがわかります。
以下、次のような比率であることがわかるのです。
- カートに商品を投入 15%
- オーダーシート確認 15%
- 歩行 25%
- 探し、迷い 20%
- 商品の絡みほぐし等 5%
いかがでしょうか。一度この稼働分析を実施することをぜひお勧めしたいのですが、その理由は一日の作業の中で付加価値を生む仕事は20%しかないということに気づくからです。これはどこの物流現場でも似たり寄ったりだと思われます。
現場には「仕事」と「ムダ」の二種類しかないと言われます。この事例では仕事は「ものを棚から取り出す」という行為のみです。その他は原則として「ムダ」であると考えるべきなのです。したがってムダは無くすか減らすかを考えていかなければならないのです。以上が稼働分析のやり方とその結果についての説明となります。
(2) 工程分析
物流スタッフはもう一つ別の分析手法を身につけるとよいと思います。それは「工程分析」という手法です。これも簡単な割に効果抜群なのでぜひ取り組んでいただきたいと思います。
工程分析とは簡単に言うと「ものの流れの分析」です。つまり物流には大変相性の良い手法だと言えます。この分析ではものが構内に入ってから出ていくまでの間にどのようなプロセスをたどっていくのかを調べます。
3. 提案ができるスタッフの育成とは
(1)工程分析で分かること
プロセスは「加工」「運搬」「検査」「停滞」に分類することが一般的です。では例を挙げて考えていきましょう。まず倉庫にものが納入されそれが仮置きされたとします。そしてその時に納入検品が行われたとしましょう。
- 納入荷降ろし(運搬)
- 納入場で仮置き(停滞)
- 検品作業(検査)
ここまでに三つの工程がありますが、付加価値作業たる「加工」は無いことがわかります。検品を終えた納入品はその後運搬され格納されることになります。
- 保管場へ運搬(運搬)
- 保管棚に格納(保管)
- 出庫(加工)
- ピッキング場へ運搬(運搬)
- ピッキング棚へ投入(保管)
そしていよいよ顧客のオーダーに基づきピッキングされます。
- ピッキング(加工)
- 出荷場へ運搬(運搬)
- 出荷場で仮置き(保管)
物流倉庫としてはピッキングして初めて付加価値が与えられます。もっと言うとこれが顧客の元へと届いた時点でキャッシュが生まれますので、この「届ける」という作業が最も付加価値が高いものと思われます。
このように工程分析を実施することでいかにムダな工程が多いかがわかります。さらに分析の中に運搬距離を加えることで長い距離を運搬していることがわかります。工程分析では付加価値工程の比率が一目瞭然です。この分析結果を見て無付加価値工程、低付加価値工程を減らしていくことに取り組むことが求められるのです。
(2)「会話力」と「改善力」
これらの分析手法を身につけ改善活動に取り...