【SDGs取組み事例】創業118年、缶メーカーの覚悟を世間に示したい 側島製罐株式会社(愛知県海部郡)

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このほど、側島製罐株式会社が発売した「Canday(キャンディ)缶」

「世界にcanを」。老舗缶メーカーの側島製罐株式会社(代表取締役・石川貴也氏)はこのほど、日本製鉄株式会社(東京都千代田区)が製造する低CO2鋼材を使ったスチール缶容器「Canday(キャンディ)缶」を発売しました。スチール缶の高いリサイクル率にCO2削減という価値も加わったCanday缶を提案することで缶メーカーの覚悟を世の中に示し、環境や未来に対する人々の意識を高めたいとしています。

【目次】

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    1.菓子メーカー中心に贈答用容器を生産

    側島製罐株式会社の創業は1906(明治39)年。スチール缶やブリキ缶の製造・販売や各種プレス加工などを行い今年、118年目を迎えました。石川代表で6代目となりますが、缶の生産は1940年ごろ、愛知陸軍からカンパン保存用容器の生産を請け負ったのが始まりだといわれています。以降、主に贈答用の焼き菓子や海苔(のり)などを保存する容器を生産し、現在は中部地方の菓子メーカー等を中心に全国約300社と取引を進めています。

    側島製罐株式会社の社屋(左)と同社工場

    写真説明】側島製罐株式会社の社屋(左)と同社工場(同社提供)

     

    2.社運懸け、低CO2鋼材使った「Canday缶」発売 

    「缶の製造は生産工程で産業廃棄物も出なければ、鉄くずも100%がリサイクルされる非常にエコな産業。缶を作り始めた時から事業自体が環境に優しいものであったため、SDGs(持続可能な開発目標)に対する意識もあまりなかった」と話す石川代表。そんな同社が社運と持続可能な開発推進を目指して取り組んだのが、日本製鉄が製造する低CO2鋼材「NSCarbolex® Neutral(エヌエスカーボレックス・ニュートラル)」を使用したカラフルなスチール缶「Canday(キャンディ)缶」の発売です。
    NSCarbolex® Neutralは「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営上の最重要課題としてCO2排出量の削減に取り組む日本製鉄が、自社で製造の際に削減したCO2排出量を割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を削減したと認定される鉄鋼製品です。

    生産中の「Canday(キャンディ)缶」(左)と「Canday缶」

    写真説明】生産中の「Canday(キャンディ)缶」(左)と「Canday缶」(同社提供)

     

     スチール缶はリサイクルの優等生

    缶は包装資材の中でも紙やプラスチック製品と比べると、高級品に位置づけられていますが、石川代表 は「リサイクル率も高くクローズドループな製品という、環境に優しく時流にも合った特長を持つ反面、その認識の低さから市場で選ばれないという実態に日ごろから違和感を持っていた」と話します。さらに、事業自体が薄利多売であることから、価格面や輸送コストなどでは大手メーカー製品と比較しても分も悪いのが現状です。そこで「缶のリサイクルに対する私たちの覚悟がみえないと、購入者の心も動かない。『環境に優しく、丈夫で保存性が高い』といった面だけでなく、缶を買うことに意義を感じてもらえる価値を作っていかなければならない」と、企業ブランディングに取り組みました。「価格ではなく、側島製罐の製品だから使い続けたいと思われる製品を作りたい」との思いを胸に、解決法を模索していたところ、日本製鉄からの声掛けもきっかけとなり、低CO2鋼材使ったCanday 缶が誕生しました。
    生産は既存の製造ラインに新材料(低CO2鋼材)を充てるだけですが、材料単価が高くなることからリスク面を考慮し、当初は1色展開を検討しました。しかし「中途半端なことでは世の中に自分たちの覚悟を示せない」との判断から、全17色での製造・販売が決定されています。 既存取引先の菓子屋や包装資材メーカーを中心に評判も上々で、同社通販サイトから1個単位(767円・税込み)で購入することも可能です。

     

    3.働きがいのある職場づくり「自己申告型報酬制度」を導入

     同社の社内環境などに対する取り組みですが「会社は他人(従業員)の人生を預かる器」と話す石川代表ですが、一番の特長は...

    このほど、側島製罐株式会社が発売した「Canday(キャンディ)缶」

    「世界にcanを」。老舗缶メーカーの側島製罐株式会社(代表取締役・石川貴也氏)はこのほど、日本製鉄株式会社(東京都千代田区)が製造する低CO2鋼材を使ったスチール缶容器「Canday(キャンディ)缶」を発売しました。スチール缶の高いリサイクル率にCO2削減という価値も加わったCanday缶を提案することで缶メーカーの覚悟を世の中に示し、環境や未来に対する人々の意識を高めたいとしています。

    【目次】

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      1.菓子メーカー中心に贈答用容器を生産

      側島製罐株式会社の創業は1906(明治39)年。スチール缶やブリキ缶の製造・販売や各種プレス加工などを行い今年、118年目を迎えました。石川代表で6代目となりますが、缶の生産は1940年ごろ、愛知陸軍からカンパン保存用容器の生産を請け負ったのが始まりだといわれています。以降、主に贈答用の焼き菓子や海苔(のり)などを保存する容器を生産し、現在は中部地方の菓子メーカー等を中心に全国約300社と取引を進めています。

      側島製罐株式会社の社屋(左)と同社工場

      写真説明】側島製罐株式会社の社屋(左)と同社工場(同社提供)

       

      2.社運懸け、低CO2鋼材使った「Canday缶」発売 

      「缶の製造は生産工程で産業廃棄物も出なければ、鉄くずも100%がリサイクルされる非常にエコな産業。缶を作り始めた時から事業自体が環境に優しいものであったため、SDGs(持続可能な開発目標)に対する意識もあまりなかった」と話す石川代表。そんな同社が社運と持続可能な開発推進を目指して取り組んだのが、日本製鉄が製造する低CO2鋼材「NSCarbolex® Neutral(エヌエスカーボレックス・ニュートラル)」を使用したカラフルなスチール缶「Canday(キャンディ)缶」の発売です。
      NSCarbolex® Neutralは「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営上の最重要課題としてCO2排出量の削減に取り組む日本製鉄が、自社で製造の際に削減したCO2排出量を割り当てることで、鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を削減したと認定される鉄鋼製品です。

      生産中の「Canday(キャンディ)缶」(左)と「Canday缶」

      写真説明】生産中の「Canday(キャンディ)缶」(左)と「Canday缶」(同社提供)

       

       スチール缶はリサイクルの優等生

      缶は包装資材の中でも紙やプラスチック製品と比べると、高級品に位置づけられていますが、石川代表 は「リサイクル率も高くクローズドループな製品という、環境に優しく時流にも合った特長を持つ反面、その認識の低さから市場で選ばれないという実態に日ごろから違和感を持っていた」と話します。さらに、事業自体が薄利多売であることから、価格面や輸送コストなどでは大手メーカー製品と比較しても分も悪いのが現状です。そこで「缶のリサイクルに対する私たちの覚悟がみえないと、購入者の心も動かない。『環境に優しく、丈夫で保存性が高い』といった面だけでなく、缶を買うことに意義を感じてもらえる価値を作っていかなければならない」と、企業ブランディングに取り組みました。「価格ではなく、側島製罐の製品だから使い続けたいと思われる製品を作りたい」との思いを胸に、解決法を模索していたところ、日本製鉄からの声掛けもきっかけとなり、低CO2鋼材使ったCanday 缶が誕生しました。
      生産は既存の製造ラインに新材料(低CO2鋼材)を充てるだけですが、材料単価が高くなることからリスク面を考慮し、当初は1色展開を検討しました。しかし「中途半端なことでは世の中に自分たちの覚悟を示せない」との判断から、全17色での製造・販売が決定されています。 既存取引先の菓子屋や包装資材メーカーを中心に評判も上々で、同社通販サイトから1個単位(767円・税込み)で購入することも可能です。

       

      3.働きがいのある職場づくり「自己申告型報酬制度」を導入

       同社の社内環境などに対する取り組みですが「会社は他人(従業員)の人生を預かる器」と話す石川代表ですが、一番の特長は今年9月から始めた自己申告型報酬制度です。これは、従業員が自身で給料や仕事の役割などを考えた上で申告を行い、企業がその自律性や発展性を考慮し、従業員の未来に先行投資を行うものです。
      導入について「企業の駒として機械的に働かされているという環境をなくしたかった。この制度は誰でも宣言できるチャンスがあり、人間らしい働きができる職場環境を整備することで、心の健康づくりにも取り組みたかった」と話します。また「人事考課を経営者や役員・上司が握り、一方的に仕事を指示、命令するという従来の中央集権型の仕組みを排除し、一人ひとりが自律性を持って働く自立分散型の組織づくりを進めたほうが、わが社には向いていると考えた」と振り返ります。結果、従業員に対するイコーリティ(平等性)が生まれ、責任感の芽生えやモチベーションの向上などがみられました。さらに、従業員も「いくら仕事を頑張っても報われないかもしれない」といった思いから解放されたほか、報酬は金銭的価値だけでなく、やりがいや仕事も“報酬の一つ”といった気付きにも繋(つな)がったのです。

      同社従業員(左)と出荷作業のようす

      写真説明】同社従業員(左)と出荷作業のようす(同社提供)

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       人生を託すに値する企業に

      このほか、同社では「学び続ける機会の提供」として、資格や技術取得に必要な費用は全額補助を行っています。また、従業員40人のうち、女性が約35%を占めていますが、技術者や資材調達部門に配属するなど、男女の隔てなく活躍する場が提供されています。さらに、50年ほど前から始められていた障害者雇用では現在、2人が就業するなど、ジェンダーや国籍にとらわれない組織づくりも進められています。地域貢献においては、大治町子供会への寄付をはじめ、中学校や特別支援学校からのインターンの受け入れが行われており、寄付はキャンプなどの課外活動やスポーツといったイベントに役立てられているということです。
      「缶は高級パッケージとして位置付けられ、大事なものを入れるというイメージがあるため『宝物を託される人になろう』というビジョンを基に事業を進めています」と話す石川代表。最後に「人生はその人の宝物でもある。会社は従業員の人生を預かっている以上、それを託すに値する企業でなければいけない。ただそれは、誰かが作ってくれたものを享受するのではなく、自分たちが誇り、心から喜び、顧客から選ばれる会社を目指していくことで、結果としてビジョンの実現が進んでいくのではないかと思う」と意気込みを語ってくれました。側島製罐の挑戦はまだ始まったばかりです。

      記事:産業革新研究所 編集部 深澤茂

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