手法から技法そして仕組みへ、ものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスの両立を確保する技術を蓄積する

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    1. 成功事例ではなく成功体験

    最初に手法と技法の違いについて簡単に説明します.手順通りに実施することで正しい結果が得られるツールを手法と呼ぶことにしています.統計的品質管理の多くのツールは手法と言えます.例えば原因x と結果y の間に明確な因果関係がある場合に単回帰分析を実施して予測モデルを構築しますが,そのモデル式は元のデータが同じであれば誰が解析を実施しても同じ結果が得られます.つまり正しい答えが存在します.多変量解析も同様に学習データが同じであれば結果に差がでません.ベイズ最適化も既存の制御因子の最適化が目的なので,最初に取り上げた制御因子と水準が共通であれば結果に大きな差が出ません.このように,手順で結果が決まる手法はツール化も可能です.単回帰分や重回帰分析はエクセルの分析ツールで簡単に解析結果を得ることができます.

    ◆関連解説記事:品質工学による技術開発(その5)手法から技法そして仕組みへ 

     

    手法から技法そして仕組みへ、ものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスの両立を確保する技術を蓄積する

    図. ものづくりプロセスと有効な手法・技法

    出典:タグチメソッドによる技術開発 ~基本機能を探索できるCS-T法~ 日科技連

     

    一方,技法とは結果を得るために発想や工夫が必...

    手法から技法そして仕組みへ、ものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスの両立を確保する技術を蓄積する

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      1. 成功事例ではなく成功体験

      最初に手法と技法の違いについて簡単に説明します.手順通りに実施することで正しい結果が得られるツールを手法と呼ぶことにしています.統計的品質管理の多くのツールは手法と言えます.例えば原因x と結果y の間に明確な因果関係がある場合に単回帰分析を実施して予測モデルを構築しますが,そのモデル式は元のデータが同じであれば誰が解析を実施しても同じ結果が得られます.つまり正しい答えが存在します.多変量解析も同様に学習データが同じであれば結果に差がでません.ベイズ最適化も既存の制御因子の最適化が目的なので,最初に取り上げた制御因子と水準が共通であれば結果に大きな差が出ません.このように,手順で結果が決まる手法はツール化も可能です.単回帰分や重回帰分析はエクセルの分析ツールで簡単に解析結果を得ることができます.

      ◆関連解説記事:品質工学による技術開発(その5)手法から技法そして仕組みへ 

       

      手法から技法そして仕組みへ、ものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスの両立を確保する技術を蓄積する

      図. ものづくりプロセスと有効な手法・技法

      出典:タグチメソッドによる技術開発 ~基本機能を探索できるCS-T法~ 日科技連

       

      一方,技法とは結果を得るために発想や工夫が必要なアプローチです.枠組みは与えられていますが,評価計画や実験計画の立案には発想や工夫が必要になります.その代表が品櫃工学の機能性評価,ロバストパラメータ設計,CS-T法などです.これらの技法は機能の定義,現象説明因子の発想,さらには新規の制御因子やシステム構造の考案が求められます.このように創造性が要求される技法はツール化することができません.また,正しい結果も存在しません.役立つ結果を得ることが狙いなのです.役立つ結果とは意思決定や次のアクションにつながる技術情報のことです.
       
      かつて,良い手段は自然に広まるという考え方を前提にして,成功事例が活用拡大の原動力になるという意見が多くありました.しかしながら成功事例が活用の拡大にはつながらないということは過去の事例から明らかになっています.その理由はいくつかありますが,真似をしても成果につながらないということが挙げられます.では活用を拡大するにはどうしたらよいかですが,成功体験を持つ技術者を増やすことに尽きると思います.多くの技術者に成功体験を感じてもらうことを目的とした推進戦略が求められています.その原動力がOJTです.技法のスキルはOJTを通じた実践を通じて得るものであることは自分自身でも体験しています.

       

      2. 最適化が目的ではない

      タグチメソッドの代表的な手法がパラメータ設計であることもあって、タグチメソッドの目的は最適化であると誤解されているケースもあります.最適化が目的であれば最近はベイズ最適化など直交表ベースの実験よりも効率的なツールが登場していますのでパラメータ設計の出番は減っていくでしょう.

       

      タグチメソッドを含む品質工学が目指すところを企業からの期待視点で再度共有したいと思います.それは一言で言えばフロントローディングです.具体的にはものづくりプロセスの上流段階で性能とロバストネスの両立を確保する技術を蓄積することです.しかも、その技術蓄積は様々な製品設計に汎用的に使えるものである必要があります.さらに、その技術はお客様の期待を超えるものでなければ事業を成長させることができない時代となりました.

       

      このように狙いを定めたときに最適条件の情報がどこまで役立つかを考えることが重要です.そもそも既存の制御因子の水準を最適化するだけで性能とロバストネスを両立確保できるテーマはほとんどありません.よって、新たなシステムや制御因子を発想することが必須であり、それこそが技術開発の目的と言えます.発想のための創造技法が求めらているのです.そのための新しい品質工学技法がCS-T法であり、さらにCS-T法を含む仕組みが"T7“です.今の日本製造業は欧米企業に比べて創造活動に弱点があると言われています.新しい品質工学やT7の有効性が高まっていると感じています.

       

      【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

      ◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏

       

      ◆関連解説記事:パラメータ設計とは 【連載記事紹介

      ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

       

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      この記事の著者

      細川 哲夫

      お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。

      お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。


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