基本機能の定義と狙い、品質工学の骨格に位置づけられる概念とは

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基本機能の定義と狙い、品質工学の骨格に位置づけられる概念とは

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    基本機能は品質工学の骨格に位置づけられる概念といっても過言ではありません.最新の用語集では、基本機能を「目的機能の達成に用いる技術の基本原理」と定義しています.なんとも漠然としていますね.さらに,目的機能は「顧客の立場で対象システムに要求する機能」とされています.こちらも,わかったようなわからないような漠然とした印象です.ここでは目的機能,基本機能をもう少し明確に定義してみたいと思います.

     

    1. 機能

    出力としての計測特性yと,yの値を変化させる入力Mの関係y=F(M)

     

    2. 目的機能の計測特性

    お客様がほしいVOCを計測可能な特性yで代用した例

    【自動車】

    • ほしいVOC:ある地点からある地点まで移動すること y=加速度
    • 加速度を変える入力M:アクセルを踏む量
    • 目的機能のメリット:トータルシステムの評価が可能
    • 目的機能のデメ...

    基本機能の定義と狙い、品質工学の骨格に位置づけられる概念とは

    【目次】

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      基本機能は品質工学の骨格に位置づけられる概念といっても過言ではありません.最新の用語集では、基本機能を「目的機能の達成に用いる技術の基本原理」と定義しています.なんとも漠然としていますね.さらに,目的機能は「顧客の立場で対象システムに要求する機能」とされています.こちらも,わかったようなわからないような漠然とした印象です.ここでは目的機能,基本機能をもう少し明確に定義してみたいと思います.

       

      1. 機能

      出力としての計測特性yと,yの値を変化させる入力Mの関係y=F(M)

       

      2. 目的機能の計測特性

      お客様がほしいVOCを計測可能な特性yで代用した例

      【自動車】

      • ほしいVOC:ある地点からある地点まで移動すること y=加速度
      • 加速度を変える入力M:アクセルを踏む量
      • 目的機能のメリット:トータルシステムの評価が可能
      • 目的機能のデメリット:加法性が不十分のため交互作用の影響を受けやすい(と言われている)

       

      3. 基本機能の計測特性

      目的機能を実現するメカニズムを記述する因子Xiの中から目的機能の計測特性yを完全に置き換え可能なもの.ここで完全の意味は,評価対象に関して,目的機能の計測特性yと因果関係を持つすべての制御因子と因果関係を持つ因子であることです.これが成立しないと部分最適の方向になってしまいます.

       

      【自動車の場合】

      エンジンのシリンダ内部の燃焼現象を記述するセンシングデータ など

      • 基本機能のメリット:加法性が良いので交互作用の影響を受けにくい(と言われている)
      • 基本機能のデメリット:部分最適化になりやすい

      基本機能とはエネルギー変換であると定義されることも多いのですが,目的機能を実現するメカニズムはエネルギー変換を計測することで記述できるケースが多いとするのが適切かと思います.なぜならば,基本機能=エネルギー変換としてしまうと用紙搬送のような微小なエネルギーで駆動するシステムではその計測が困難なため基本機能を使うことができないとなってしまうからです.

       

      用紙搬送の目的機能の計測特性は速度や移動時間ですが,その基本機能の計測特性は用紙を移動させるメカニズムの良さをセンシングしたものであるとすれば,用紙の挙動などもその対象になります.基本機能を考案する狙いは評価のものさしとしての加法性確保だけではなく,目的機能を実現するメカニズムを把握することによって新たなシステムや制御因子を考案することも狙いの一つなのです.むしろ後者の狙いの方が重要かもしれません.そのための技法がCS-T法です.また,CS-T法,機能性評価,公理設計などの技法を活用する技術開発プロセスを設計するプラットフォームが"T7"です.

       

      【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

      ◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏

       

      ◆関連解説記事:品質工学による技術開発 【連載記事紹介】

      ◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

       

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      この記事の著者

      細川 哲夫

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