今回は、Q&A形式で、品質工学の応用について解説します。
◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』
Q1. 直交表を作るときにたいていはその右隣に誤差因子の欄もつけますが、ここでいう誤差因子は目的の変数としてとらえて構いませんか?望小特性を意識したいのであればここを目的にすればいいのでしょうか?
A1. まず、言葉の定義からお話しします。
(1) 制御因子
安定性の改善のために、設計者が自由にその値を決めることができる因子を制御因子といいます。接着強度を改善する目的なら、接着剤は何がよいか、塗布回数は何回がよいかなど、接着方法を決めるすべての因子が制御因子になります。
(2) 誤差因子
安定性の改善をする際に、設計者がその値を決めることができない因子を誤差因子といいます。接着強度は大きいほどよい望大特性の場合、使用環境で温度が高くなると強度が低下するというときには、温度は誤差因子となります。 この場合、低い温度と高い温度でそれぞれデータをとりますので、直交表L18では18×2(低温と高温)=36通りの実験を行なって、SN比を大きくする条件を見出すことになります。
Q2. 直交表を作るときに例えば要素がA~Eまであったら5つそれぞれの水準を指定することになるとは思うのですが、その右隣におそらくはeだとかそういう誤差の指定があることがほとんどだと思います。当然上述の誤差因子(目的)とは違う誤差だとは思いますが、参考書を読んでも、まったくその水準のランダムな羅列に意味が見いだせていません。どうやってこの誤差eの部分の水準を決定しているのでしょうか?
A2. 直交表L18は、2水準が1列、3水準が7列から構成されていますので、制御因子が5個で、それぞれA~Eにわりつけた場合には、残りのF~Hの3列が余ることになりますが、それを誤差列(e)といいますこの誤差列も、水準1、水準2および水準3のSN比が計算されます。 当然、そこには制御因子の水準はありませんから、水準1~水準3間のSN比の差は、実験誤差等の誤差ということになります。 なお、誤差列はどの列を指定してもかまいません。
Q3. 直交表の要素が水準で求まらない値であれば...例えば材質AとかBとかA+Bの複合材質とかCとかであったとき、水準では求まらない値をとるとは思うのですが、品質工学的に言ってここはどう扱えばいいでしょう?一回ぽっきりの検証で済まないことはなんとなくわかります。
A3. 制御因子が材質の場合、材質A、B、A+Bの複合材質およびCが水準になります。 この場合は4水準ですので、6水準まで可能な直交表L18の変則形を用いれば実験が可能です。
Q4. 目的特性=望小特性でいいんですしょうか?私のケースですと、誤差因子をそのまま外側に張付けてもいいのだと考えます。
A4. 実験の目的が摩耗量を少なくすることであれば、目的特性は摩耗量になります。 また、摩耗量を少なくしたいわけですから、望小特性のSN比の計算式を用います(SN比は望小特性でも、望大特性でも、値が大きいほうが目的にかなうことを意味します)。
Q5. 誤差因子の中でもマイナス条件/標準条件/プラス条件を加味しながら外乱=誤差因子をつけていくのだと思います。このケースであると、誤差因子のマイナス条件/標準条件/プラス条件との分岐がまったく理解できません。実験して誤差因子を確かめるのか?というレベルから頭がこんがらがってしまいます。
A5. 摩耗の例で言いますと、誤差因子とは、摩耗に悪さをする(摩耗量を多くする)けれども、その値を管理できない因子となります。 したがって、温度の高低によって摩耗量の多少があるなら温度が誤差因子になりますし、製品の場所によって摩耗量の多少があるなら、製品の場所が誤差因子になります。 あくまでも、摩耗に悪さをし、しかも管理できない因子が誤差因子になりますので、このことを考慮して誤差因子を決めてください。
また、誤差因子におけるマイナス条件とは摩耗量を多くする条件のことであり、プラス条件とは摩耗量を少なくする条件になりますが、摩耗量は少ないほうがいいわけですから、誤差因子としてはマイナス条件(N1)と標準条件(N2)の2つでよいことになります。
Q6. 目的特性と誤差因子という言葉が混同しているのでは?と自分でも推測いたしますが、今一度ご教授お願いできませんでしょうか。
A6. 直交表L18のわりつけとデータの取り方の例をもとに説明します。
制御因子 A B … G H 摩耗量(N1) 摩耗量(N2) SN比
実験No.1 1 1 … 1 1 実測値 ...