3.「あるべき姿」や「ありたい姿」を考える技術者であれ
最近の経営者や政治家の中には、企業や国家の理想の姿を考えずに目先の問題ばかり取り上げて議論している姿が目立ちますが、技術者でも問題解決型で研究開発を行っているものが実に多いのです。
「問題とは理想と現実の差」ですから、品質工学では理想機能や目標レベルを定義して、現実との距離を縮めるための開発活動(問題の最小化)を行うわけです。その時に技術者が最も考えなければならないことは「何のため」とか「誰のため」などです。
- お客様が何を欲しいのか(どんな機能や性能を期待しているのか)
- お客様が欲しくないものは何か(お客様の使用条件を満足しているか)
- 地球環境保護を考えているか(公害や廃棄物などで自然を破壊しないか)
- その上で企業の利益の確保に努めているか
「研究のための研究」や「設計のために設計」や「試験のための試験」ではなく「お客様のための研究や設計や試験」であって欲しいのです。
技術者がもっと現場に出てお客様の声を聞きお客様の不満を聞くことが大切です。顧客満足度とは「顧客が満足する」ことであって、「顧客を満足させる」ことではないのです。
4.「胆識」を持った技術者であれ
技術者が品質工学や固有技術の「知識」を学んでいても仕事で活用できないのは、活用できる「見識」にまで高まっていないためですが、いくらスキルが高くても上司の圧力に負けて従来型の仕事のやり方に戻ってしまう技術者が多いのです。上司も説得できて、周りの技術者も積極的に取り込んで品質工学を推進できるものは「胆識」のある技術者だと考えています。
先日、サッカー協会の会長になられた川淵さんが心境を語られていましたが、それは“斃(たお)れてのち已(や)む”(五経の一つ礼記(らいき)からの言葉)でした。
たとえ味方は少なくても、己の道を信じて自らやりぬく情熱を持ち続けることが「ほんまもんの技術者」の条件だと思います。
1994年の品質工学誌で発表されたニコンと日立マクセルが共同開発した次世代光磁気ディスク(LIMDOW)は、理論で説明できるのは3層ぐらいまでで、それ以上になると理論で説明すること自体が困難でその限界を打ち破ったのが「基本機能によるパラメータ設計」でした。この研究に携わった技術者はたった3人でした。
私は“道楽と極道の人生(道を楽しみ、道を極める)”を座右の銘にしています。人それぞれ生きる道は異なりますが「何のため」とか「誰のため」を考えた生き方が大切だと思います。私の考える“道”とは、“顧客満足と地球環境保護の上にたった企業の...