エネルギー比型SN比は、品質工学における新しい評価尺度であり、SN比の比較対象間でデータの数や信号値の大きさが異なる場合でも、公平な比較が可能です。実務者にとって従来のSN比の制約を気にしながらケースバイケースで使いこなすのは煩雑で、間違いの原因ともなります。本稿では、従来のSN比の課題を具体例でひも解きながら、エネルギー比型SN比の数理や利点を解説し、エネルギー比型SN比の計算例とともにその活用成果を解説しています。その3です。
2.4. 従来のSN比の課題(3) ~個別的な計算方法~
品質工学ではさまざまな型のSN比が広く用いられてきました。以下に、主なSN比の分類を示します。
(1)静特性のSN比 ・・・主に品質特性の評価に用います。
(1-1)望小特性のSN比
出力の大きさyの平均を誤差成分と考えます。
式2.4.1
(1-2)望大特性のSN比
出力の逆数1/yの望小特性と考えます。
式2.4.2
(1-3)望目特性のSN比
誤差分散σ2を、「1データあたり(1/n)の平均の変動(Sm-Ve)」で除したものを誤差成分と考えます。
式2.4.3
(1-4)ゼロ望目のSN比
平均値からの偏差2乗和を誤差成分と考える。このとき平均値mは0に調整(校正)可能で、誤差成分の大きさの校正にも用いないので、SN比には出てきません。
式2.4.4
(2)動特性のSN比 …主に機能の安定性の評価に用います。
(2-1)ゼロ点比例式のSN比
2.2節で述べたとおり、入力Mの-2乗の次元[1/M2]をもつ量です。
式2.4.5
(2-2)標準SN比
2.3節で述べたとおり、誤差変動の自由度...