今回は、データ解析手法を取り入れたいと思っている製造現場で効率的に統計や品質工学を習得するにはどうすればいいのかを解説します。
◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』
統計的手法(統計ではなく統計的手法)や品質工学を習得するには、まず基本的な入門書を読み、セミナーに参加し、研究会にて事例を学び、自社テーマに応用するといったスタイルが一般的で間違いではないでしょう。
ところが、これが効率的かといえば、そうともいえません。司法試験対策に憲法の基礎からはじめ、順次極めていくという勉強法スタイルに似ています。
これでは、一生かかっても受からないでしょう。憲法研究だけでも5年ぐらいかかり、それから刑事訴訟法やら商法をやっていたら、一生をおえるからです。
統計的手法・品質工学でも同じことです。たとえば、正規分布だけでも、極めることは大変です。へたすると、そこで落ちこぼれます。品質工学の損失関数を極めていたら、肝心の実験に入る前に退職になります。おおげさにいえば、そういうことです。
製造現場でのデータ解析には、データそのものの種類も様々ですから、どういった手法が役に立つかは、そのデータの特徴と問題(テーマ)に合わせた手法を選ぶ必要があります。
このため、効率的に統計的手法(ご質問では統計)や品質工学を習得することが本来の目的ではなく、問題解決・課題達成のために「効率よく統計的手法や品質工学を習得する」ということが目的だとしたら、まず「ターゲットとする実在のテーマ」を設定することをお勧めします。
そのうえで、どういったデータを扱うのか、なにをしたいのかで習得しなくてはならない手法に狙いをつけたほうが、効率的です。効果が得られれば、人はその理論背景に興味を持ち、学習していくものです。実践から入り、基礎にかえるというスタイルが、製造現場というキーワードに対する統計的手法・品質工学の習得を効率化させるのです。
たとえば、次のような対比が考えらえます。
- テーマ:工程対応データと品質特性値があり、工程パラメータを最適化したい ⇒ 手法:重回帰分析
- テーマ:異常ロットとそうでないロットの違いや着眼点を知りたい ⇒ 判別分析、MT法
- テーマ:慢性品質問題や設備能力を上げる実験をしたい ⇒ 実験計画法、パラメータ設計
- テーマ:抜取検査をしているが、この最適な頻度やサンプルサイズを決めたい ⇒ 抜取検査設計、オンラインQE
現場データといっても、さまざまな問題を抱えたデータです。どういったデータをどういう目的で解析したいのかによって、解析手法は大きく変わってきます。
このため、解析手法に合わせてデータをみるのは本末転倒で、データと目的に応じた解析手法が必要です。そして、こういったスタイルでなければ、実学である統計的手法や品質工学は身につかないでしょう。少なくとも効率的な習得法は、手法が実学であ...