ロボット塗装の条件最適化で時間短縮と安定性向上を達成したアルパインプレシジョンの事例

 2010年の品質工学会研究発表大会でアルバインプレシジョン株式会社の菅藤智行さんが発表した「ロボット塗装条件の最適化」の概要を紹介します。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

1.はじめに

 ロボット塗装システムの各種条件が塗装品質に与える影響の定量的な評価が社内になかったため、塗装の多様な品質特性の評価ではなく、塗膜の均一性と塗着効率を観点にシステムの評価を行なうこととしました。

 

2.ロボット塗装システムの概要

  評価したシステムは、作業者がテーブルにワークを設置し、塗装ロボットで塗装後に乾燥コンベア作業者が移載する半自動ラインです。

 

3.評価、実験方法

  システムの基本機能として、吐出した塗料重量に対してワークに塗着した塗料重量が比例することと考えました。塗料重量は吐出時間と時間当たりの吐出量の積で計算しました。重量測定には最少表示0.01mgの電子天秤を用いました。  誤差因子は塗装の位置を5水準とパレット内の位置2水準を採用し、以下の制御因子をL18に割り付けました。

  A:オーバーストローク距離

  B:ガン速度

  C:ガン距離

  D:霧化圧/パタ‐ン圧

  E:シンナー種類

  F:シンナー希釈量

  G:パターンオーバラップ量

  H:ガン角度

 

4.実験結果

  SN比(安定性)に効果が大きかったのはB,G,H因子で、感度に効果が大きかったのはA,C,D,F,Hでした。これらの最適組み合わせで確認実験したところ、初期条件に対するSN比の利得9.3db、感度の利得が3.7dbで推定値と非常に近く、信頼性があると考えられます。

  この結果塗装時間が半分以下に短縮された上に、塗装膜厚の偏差が7.5umから4.0um...

に大幅に改善されました。

 

5.考察

  この実験の結果、各制御因子の影響度が明確になったため、条件設定時に塗着効率最大の条件から各塗料要件に合せて条件を調整出来るようになったことが大きなメリットです。

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