情報発信で物流改善を進めよう 物流サイドからの情報発信(その3)

投稿日

 前回のその2:物流に表れる 生産・調達・営業の結果に続いて解説します。

1. 物流部門からの情報発信

 物流は往々にして何らかの行動の結果として生まれる現象ととらえることができます。前回の事例のように各部門が部分最適を求めて勝手に動くとその傾向が強まります。そこで物流についてはその要因を発生させる部門で費用を負担する方向に改めると良いと思います。たとえば次のような例です。
 
   ・ ロット生産で必要になる物流エリア、容器、機器、工数等 ==> 生産部門
   ・ 調達方法で必要になる物流エリア、容器、機器、工数等 ===> 購買部門
   ・ 売買契約で必要になる輸送コスト =============> 営業部門
 
 物流コストは、その恩恵を受ける部門で負担するという思想です。受益者負担と考えればわかりやすいのではないでしょうか。こうすることで必要以上の行為が改められる可能性があります。ただし、そうなる前に物流は自部署で発生しているさまざまな現象についてその要因部署へ情報発信することが必要です。なぜならば、生産部門や営業部門、購買部門などは物流現場に行くことがほとんど無いと思われます。そうなると物流現場にどのような影響があるかなど、知る由もないからです。
 
 物流部門は影響度合いについて数字で示すことが望ましいでしょう。エリアが何m2必要になっているのか、物流工数がどれくらい余分に必要になっているのか、容器が不足して詰め替えコストがどれくらい発生しているのかなど、数字で示せば相手も納得するでしょう。実はこの物流による情報発信ですが、社内でのやりとりに限られるわけではありません。顧客との間でも情報を渡して改善要請を行った方が良いケースもあるのです。例えば、当初の契約時と状況が大幅に変更されたのであれば、契約内容の見直しも必要になります。この状況変化は軽油価格、労務費、荷量の大幅な変動、為替の変動などが挙げられます。何の情報も発信しなければ物流の状況は変わりません。そこで契約時との状況変化があれば、それについて顧客と話し合いをするべきなのです。
 

2. 荷主に喜ばれる情報とは

 SCM物流側から情報を発信することで、本来部署の改善につながるということを頭の中に入れて活動しましょう。例えば、まとめて大ロットで生産する工程に対してもの申すことにより、その部署ではロットサイズを小さくする活動を迫られます。これによって結果的にその工程が小ロット生産に対応できるようになれば、その工程が改善され体力が向上したことになるのです。
 
 どこの部署も今のやり方がベストであると思い込んでいる節があります。しかし他社ではもっと良いやり方をしている可能性があります。物流からプレッシャーをかけることで競争力を身につけることができるのであれば、こんな大きな貢献はありません。
 
 他業界で実施している先進物流の情報を荷主会社に対して行うと喜ばれます。もちろん秘匿情報もありますから常識の範囲内で情報提供することは言うまでもありません。荷主会社は他社、他業界でどのような物流を実施しているのかをとても気にしているのです。なかなか同業他社を見に行くことができず情報源を掴みかねています。
 
 しかし、物流会社はいろいろな会社に入り込める特権を持っています。そのため、ドライバーは意識して見ていればいろいろな情報を収集することができるのです。物流会社はこのドライバーの情報を吸い上げ、それを営業に活用すると良い...

 前回のその2:物流に表れる 生産・調達・営業の結果に続いて解説します。

1. 物流部門からの情報発信

 物流は往々にして何らかの行動の結果として生まれる現象ととらえることができます。前回の事例のように各部門が部分最適を求めて勝手に動くとその傾向が強まります。そこで物流についてはその要因を発生させる部門で費用を負担する方向に改めると良いと思います。たとえば次のような例です。
 
   ・ ロット生産で必要になる物流エリア、容器、機器、工数等 ==> 生産部門
   ・ 調達方法で必要になる物流エリア、容器、機器、工数等 ===> 購買部門
   ・ 売買契約で必要になる輸送コスト =============> 営業部門
 
 物流コストは、その恩恵を受ける部門で負担するという思想です。受益者負担と考えればわかりやすいのではないでしょうか。こうすることで必要以上の行為が改められる可能性があります。ただし、そうなる前に物流は自部署で発生しているさまざまな現象についてその要因部署へ情報発信することが必要です。なぜならば、生産部門や営業部門、購買部門などは物流現場に行くことがほとんど無いと思われます。そうなると物流現場にどのような影響があるかなど、知る由もないからです。
 
 物流部門は影響度合いについて数字で示すことが望ましいでしょう。エリアが何m2必要になっているのか、物流工数がどれくらい余分に必要になっているのか、容器が不足して詰め替えコストがどれくらい発生しているのかなど、数字で示せば相手も納得するでしょう。実はこの物流による情報発信ですが、社内でのやりとりに限られるわけではありません。顧客との間でも情報を渡して改善要請を行った方が良いケースもあるのです。例えば、当初の契約時と状況が大幅に変更されたのであれば、契約内容の見直しも必要になります。この状況変化は軽油価格、労務費、荷量の大幅な変動、為替の変動などが挙げられます。何の情報も発信しなければ物流の状況は変わりません。そこで契約時との状況変化があれば、それについて顧客と話し合いをするべきなのです。
 

2. 荷主に喜ばれる情報とは

 SCM物流側から情報を発信することで、本来部署の改善につながるということを頭の中に入れて活動しましょう。例えば、まとめて大ロットで生産する工程に対してもの申すことにより、その部署ではロットサイズを小さくする活動を迫られます。これによって結果的にその工程が小ロット生産に対応できるようになれば、その工程が改善され体力が向上したことになるのです。
 
 どこの部署も今のやり方がベストであると思い込んでいる節があります。しかし他社ではもっと良いやり方をしている可能性があります。物流からプレッシャーをかけることで競争力を身につけることができるのであれば、こんな大きな貢献はありません。
 
 他業界で実施している先進物流の情報を荷主会社に対して行うと喜ばれます。もちろん秘匿情報もありますから常識の範囲内で情報提供することは言うまでもありません。荷主会社は他社、他業界でどのような物流を実施しているのかをとても気にしているのです。なかなか同業他社を見に行くことができず情報源を掴みかねています。
 
 しかし、物流会社はいろいろな会社に入り込める特権を持っています。そのため、ドライバーは意識して見ていればいろいろな情報を収集することができるのです。物流会社はこのドライバーの情報を吸い上げ、それを営業に活用すると良いと思います。こういった活動を行う物流会社は多くの顧客を獲得することができるでしょう。
 
 以上のように、ものづくりの弊害や間違った資材調達、顧客獲得のための過剰なサービスなどの結果が物流に表れます。物流はこれらを是正し、企業体力をつけるために貢献していくべきです。荷主会社に対しても契約内容の是正や、さらなる営業拡大のために情報発信を続けていくべきだと思います。黙っていては状況は改善しません。ぜひ常に情報を発信し続ける姿勢を貫いていただきたいと思います。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
調達物流 儲ける輸送改善 (その5)

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...

  【儲ける輸送改善とは 連載目次】 1.輸送改善はなぜ『おいしい』のか 2.輸送改善のための工場環境整備とは ...


SCM構築の必要性・目的を明確にすることの重要性 SCM最前線 (その4)

 前回のその3に続いて解説します。    3. SCM構築が進まない最大の理由:SCM構築の必要性と目的が曖昧  ...

 前回のその3に続いて解説します。    3. SCM構築が進まない最大の理由:SCM構築の必要性と目的が曖昧  ...


サプライチェーンにおける収益向上のメカニズム

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時...

 オペレーションの連携、すなわちシンクロナイゼーションがサプライチェーンマネジメントの課題です。一般的なジャストインタイムの定義は、必要なものを、必要な時...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流サービス契約とは

  1.サービスレベルアグリーメント ◆ 業務変更時の対応 荷主と物流事業者、工場の製造工程と物流部門など、それぞれの間でどのような物...

  1.サービスレベルアグリーメント ◆ 業務変更時の対応 荷主と物流事業者、工場の製造工程と物流部門など、それぞれの間でどのような物...


物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

  1. それでも無くならない物流 日本では物流に対する学問体系もしっかりし、物流に対する認識がそれほど高くないことは皆さんもお気づきの...

  1. それでも無くならない物流 日本では物流に対する学問体系もしっかりし、物流に対する認識がそれほど高くないことは皆さんもお気づきの...


人事評価と給与のしくみ 物流スタッフの評価(その1)

        物流スタッフの人事評価をどのように実施されているでしょうか。このような人事マターについてはじっくりと検討されていないかもしれません。...

        物流スタッフの人事評価をどのように実施されているでしょうか。このような人事マターについてはじっくりと検討されていないかもしれません。...