物流情報の一元化によるコスト削減とは

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1. 社内コミュニケーション

SCM
 物流を効率化するためには荷物を集めるという原則があります。物量が集まれば一単位当たりのコストは下がります。そこでものを発送するときにはできるだけまとめた方がコスト的に有利になるのです。同一方面に同じタイミングで送る場合は荷物を合わせて出すことが基本だと考えましょう。
 
 こういった原則があるにもかかわらず、ばらばらに物流を行っているケースが多いのです。それは、まとめるべき荷物があることに気づかないことが多いと言った方が良いかもしれません。その例として次のようなケースが考えられます。
 
 同じ会社に営業一部と営業二部がありました。営業一部では日用雑貨を取り扱っています。営業二部では食品を扱っています。各部ではそれぞれ倉庫内でピッキングを行い、出荷しています。同じ倉庫ですが、一部は一階、二部は二階と三階で保管とピッキングを行っているのです。それぞれの部ではできるだけトラックがいっぱいになるように工夫はしていますが、平均積載率は、65%程度となっています。この会社では非常に重要な点を見落としているのです。それは日用雑貨も食品も「同じ届け先」があるという事実です。得意先からは日用雑貨と食品とで別々のオーダーが入ってきていますが、納品先は同じ店舗なのです。しかしそれぞれの部ではこの点に気づくことなく、それぞれ別々に配車をしています。
 
 情報が分断されていることでこのような現象が発生しているのですが、もし一部と二部で、コミュニケーションが取れていれば、最初から混載で届けていたことでしょう。実はこのような事例が山ほどあるのです。ただ単に気づいていないだけで、物流ロスを発生させてしまっているのです。
 

2. 物流契約書

 
 社内で部門ごとに物流機能を持っていると、それぞれが別の動きをすることがあります。物流会社との契約形態も部門に任されているケースも見かけます。輸送業務を委託しているA部門とB部門で内容が異なることはよくあることです。例えば、A部門では車建契約、B部門では個建契約といったように、まちまちの内容が同じ社内で存在するのです。料率そのものの水準も異なることがあります。同じ物流会社に委託していても、部門ごとに料率水準が異なるのです。
 
 このように同一会社内での差異の存在について調べてみる必要がありそうです。一度社内に「物流契約委員会」なるものを設け、現契約の実態について調査してみましょう。どのような物流業務を、どこの物流会社に発注しているのか、その時の料率水準はどうなっているのか、委託側と受託側の責任範囲はどうなっているのか、契約書をチェックしながら明らかにしていきましょう。
 
 場合によっては、契約書を取り交わしていないケースに出くわすことがあるかもしれません。また今の業務の実態が契約書の内容とかけ離れていることがあるかもしれません。「物流契約委員会」ではじっくりと時間をかけて実態を調べ、問題点を抽出します。最終的には明らかになった問題点を一つひとつつぶしていく作業に入ります。
 
 同じ会社で同じ物流会社に発注していながら、サービス内容や料率が異なることは望ましい姿ではありません。これらの統一を図るべく、活動していきましょう。荷主会社は物量を増やし、できるだけ同じ物流会社に発注することで有利な価格を得ることを目指すべきだと考えられます。そこで今の外部に発注している物量情報、そして発注先を洗い出しましょう。契約形態もどのような方式がふさわしいのか考えていきましょう。
 

3. サービスレベルアグリーメントとKPI

 
 同一会社で同一物流会社に発注しているのであれば、たとえば輸送の発注であれば、発注窓口を一カ所とし、そこから物流会社に発注するようにしてみたらいかがでしょうか。各部門で発注すると、0.5台分の荷物しかないのに1台配車し、別部門が同じ日に同様の配車をする可能性があります。大きな会社になればなるほど、こういった現象が発生しやすくなる傾向にあります。物流情報は一元化する必要があるのです。
 
 容器を購入する場合もスケールメリットを活かすべきでしょう。各部門や各工場でばらばらに発注するのではなく、まとめて年間発注数を決めて契約価格を定めることを最初にやるべきことではないでしょうか。その上で個別に必要数を必要タイミングで購入していくのです。要は価格についてはその会社としての取引価格を定めることです。部門価格ではないのです。
 
 サービス内容についても会社として定めます。物流会社とはきっちりとサービスレベルアグリーメント(SLA)を結び、その通りに仕事をしてもらうとともに、そのレベルに見合った価格設定を行います。仕事のパフォーマンスについては各部門で評価を行い、それを集約したうえで物流会社とパフォーマンス...

1. 社内コミュニケーション

SCM
 物流を効率化するためには荷物を集めるという原則があります。物量が集まれば一単位当たりのコストは下がります。そこでものを発送するときにはできるだけまとめた方がコスト的に有利になるのです。同一方面に同じタイミングで送る場合は荷物を合わせて出すことが基本だと考えましょう。
 
 こういった原則があるにもかかわらず、ばらばらに物流を行っているケースが多いのです。それは、まとめるべき荷物があることに気づかないことが多いと言った方が良いかもしれません。その例として次のようなケースが考えられます。
 
 同じ会社に営業一部と営業二部がありました。営業一部では日用雑貨を取り扱っています。営業二部では食品を扱っています。各部ではそれぞれ倉庫内でピッキングを行い、出荷しています。同じ倉庫ですが、一部は一階、二部は二階と三階で保管とピッキングを行っているのです。それぞれの部ではできるだけトラックがいっぱいになるように工夫はしていますが、平均積載率は、65%程度となっています。この会社では非常に重要な点を見落としているのです。それは日用雑貨も食品も「同じ届け先」があるという事実です。得意先からは日用雑貨と食品とで別々のオーダーが入ってきていますが、納品先は同じ店舗なのです。しかしそれぞれの部ではこの点に気づくことなく、それぞれ別々に配車をしています。
 
 情報が分断されていることでこのような現象が発生しているのですが、もし一部と二部で、コミュニケーションが取れていれば、最初から混載で届けていたことでしょう。実はこのような事例が山ほどあるのです。ただ単に気づいていないだけで、物流ロスを発生させてしまっているのです。
 

2. 物流契約書

 
 社内で部門ごとに物流機能を持っていると、それぞれが別の動きをすることがあります。物流会社との契約形態も部門に任されているケースも見かけます。輸送業務を委託しているA部門とB部門で内容が異なることはよくあることです。例えば、A部門では車建契約、B部門では個建契約といったように、まちまちの内容が同じ社内で存在するのです。料率そのものの水準も異なることがあります。同じ物流会社に委託していても、部門ごとに料率水準が異なるのです。
 
 このように同一会社内での差異の存在について調べてみる必要がありそうです。一度社内に「物流契約委員会」なるものを設け、現契約の実態について調査してみましょう。どのような物流業務を、どこの物流会社に発注しているのか、その時の料率水準はどうなっているのか、委託側と受託側の責任範囲はどうなっているのか、契約書をチェックしながら明らかにしていきましょう。
 
 場合によっては、契約書を取り交わしていないケースに出くわすことがあるかもしれません。また今の業務の実態が契約書の内容とかけ離れていることがあるかもしれません。「物流契約委員会」ではじっくりと時間をかけて実態を調べ、問題点を抽出します。最終的には明らかになった問題点を一つひとつつぶしていく作業に入ります。
 
 同じ会社で同じ物流会社に発注していながら、サービス内容や料率が異なることは望ましい姿ではありません。これらの統一を図るべく、活動していきましょう。荷主会社は物量を増やし、できるだけ同じ物流会社に発注することで有利な価格を得ることを目指すべきだと考えられます。そこで今の外部に発注している物量情報、そして発注先を洗い出しましょう。契約形態もどのような方式がふさわしいのか考えていきましょう。
 

3. サービスレベルアグリーメントとKPI

 
 同一会社で同一物流会社に発注しているのであれば、たとえば輸送の発注であれば、発注窓口を一カ所とし、そこから物流会社に発注するようにしてみたらいかがでしょうか。各部門で発注すると、0.5台分の荷物しかないのに1台配車し、別部門が同じ日に同様の配車をする可能性があります。大きな会社になればなるほど、こういった現象が発生しやすくなる傾向にあります。物流情報は一元化する必要があるのです。
 
 容器を購入する場合もスケールメリットを活かすべきでしょう。各部門や各工場でばらばらに発注するのではなく、まとめて年間発注数を決めて契約価格を定めることを最初にやるべきことではないでしょうか。その上で個別に必要数を必要タイミングで購入していくのです。要は価格についてはその会社としての取引価格を定めることです。部門価格ではないのです。
 
 サービス内容についても会社として定めます。物流会社とはきっちりとサービスレベルアグリーメント(SLA)を結び、その通りに仕事をしてもらうとともに、そのレベルに見合った価格設定を行います。仕事のパフォーマンスについては各部門で評価を行い、それを集約したうえで物流会社とパフォーマンスミーティングを実施するようにしましょう。つまりその会社としての評価を物流会社に伝えるのであって、それぞれの部門から発信するのではないということです。
 
 また、自社の物流KPIについても部門間で統一しておくと良いと思います。ルート別積載率や荷姿充填率、誤出荷率(流出率)や工程内不良率(未流出率)などは各部門で把握し、その程度を比較するようにします。物流のやり方次第で物流コストが変わってきますので、その要因としてのKPIは共通化し、どこの部署がうまくオペレーションできているのかについて、評価できれば良いのではないでしょうか。できれば全社的に物流状況を把握し、企画運営できる物流管理部を設置できることが望ましいと思います。
 
 会社として物流に関してばらばらに取り組むことは、さまざまなロスの発生につながります。情報を共有化し、物流のパフォーマンスを向上することが、コスト削減に繋がります。
 
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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