メーカー物流の改善ポイント (その3)

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 前回のその2に続いて解説します。
 SCM

1. 現状を変える時、一か所だけ先に

 サプライヤー支援時には、数値で示して相手を説得できることが成功の秘訣になります。外部から人が来て、とやかく今まで自分たちがやってきたことを変えられることに、少なからず否定的な考え方を持つことが普通でしょう。単なる発注者とサプライヤーの力関係だけで現状を変えようとしても上手くいくはずがありません。そうではなく、現状を変えればこれだけ良いことがあるという説明が必要です。自社内でもサプライヤーの現場でも同様ですが、「一か所だけやってみる」というやり方は効果的だと思います。理屈で言ってもなかなか理解しがたいことは皆さんも経験されていることではないでしょうか。そんな時に「実験」してみることは良いことです。
 
 たとえば台車カンバン方式を一か所だけ導入してみる。それをしばらく運用してみる。その結果として腹に落ちるものがあれば水平展開していくようなやり方でいかがでしょうか。何か「目に見えるもの」があると人間は気づきを実感します。ちょっとした管理ボードがあるのとないのとでは大違いです。在庫の適正水準が見える化されていると、現場作業者の意識は格段に高まります。そのために在庫の最小値と最大値を在庫置場に表示します。その基準があれば、在庫が最大値を超えようとすると、何かしらのアクションを取ろうとするものです。これも複数ある在庫置場のどこか一か所だけやってみればよいのです。
 
 まず自社内でこのような改善を進め、その後でサプライヤー支援を行った方がよいでしょう。なぜなら、自分でやったことがないものを他人にやらせることは説得力に欠けるからです。さて自社の改善もできる、そしてサプライヤーの支援もできる物流スタッフを育成していくわけですが、その際に5機能+情報機能のスキルに加えて重要なスキルを入れておきましょう。それが「改善力」です。現状の決められた作業をその通りに行うことは当然ですが、その作業を行う中で改善点を見つけられるようなスキルは重要です。改善提案制度を導入している会社は多々ありますが、改善力を体系的に向上させていくしくみを入れている会社は多くないかもしれません。改善点の見つけ方や、現場分析手法の教育など、メーカー物流には必要になってきます。ぜひIE手法も含め、こういった人財育成にも着手していきたいものです。
 

2. サプライチェーンのための技能向上

 物流人財育成では多能工化が欠かせません。これは現場作業であれ、管理業務であれ同様です。今や「一つの仕事しかできない」では広範なメーカー物流には対応できないのです。この多能工化ですが、仕事が広範だということだけではなく、仕事と仕事がつながっていることも要因として挙げられます。部品発注業務と在庫管理業務はとながっています。在庫管理業務を倉庫管理業務はつながっています。このように、さまざまな業務が連携していますので、これをぶつ切りで実行していくことは効率低下という結果を招くリスクがあるのです。そこで一人ができる領域を広げ、まずは自分がやらないとしても、別業務に自分の業務が与える影響を知る必要があります。
 
 多能工化のための技能向上策としまして、「一人3作業」の原則があります。これは一人ができる仕事を3つにするという、技能向上の第一歩ともいうべき施策です。まずはこのレベルから始めます。そして次に「1作業三人」の原則が挙げられます。その名の通り、1つの作業をその職場の三人の人がで...
 前回のその2に続いて解説します。
 SCM

1. 現状を変える時、一か所だけ先に

 サプライヤー支援時には、数値で示して相手を説得できることが成功の秘訣になります。外部から人が来て、とやかく今まで自分たちがやってきたことを変えられることに、少なからず否定的な考え方を持つことが普通でしょう。単なる発注者とサプライヤーの力関係だけで現状を変えようとしても上手くいくはずがありません。そうではなく、現状を変えればこれだけ良いことがあるという説明が必要です。自社内でもサプライヤーの現場でも同様ですが、「一か所だけやってみる」というやり方は効果的だと思います。理屈で言ってもなかなか理解しがたいことは皆さんも経験されていることではないでしょうか。そんな時に「実験」してみることは良いことです。
 
 たとえば台車カンバン方式を一か所だけ導入してみる。それをしばらく運用してみる。その結果として腹に落ちるものがあれば水平展開していくようなやり方でいかがでしょうか。何か「目に見えるもの」があると人間は気づきを実感します。ちょっとした管理ボードがあるのとないのとでは大違いです。在庫の適正水準が見える化されていると、現場作業者の意識は格段に高まります。そのために在庫の最小値と最大値を在庫置場に表示します。その基準があれば、在庫が最大値を超えようとすると、何かしらのアクションを取ろうとするものです。これも複数ある在庫置場のどこか一か所だけやってみればよいのです。
 
 まず自社内でこのような改善を進め、その後でサプライヤー支援を行った方がよいでしょう。なぜなら、自分でやったことがないものを他人にやらせることは説得力に欠けるからです。さて自社の改善もできる、そしてサプライヤーの支援もできる物流スタッフを育成していくわけですが、その際に5機能+情報機能のスキルに加えて重要なスキルを入れておきましょう。それが「改善力」です。現状の決められた作業をその通りに行うことは当然ですが、その作業を行う中で改善点を見つけられるようなスキルは重要です。改善提案制度を導入している会社は多々ありますが、改善力を体系的に向上させていくしくみを入れている会社は多くないかもしれません。改善点の見つけ方や、現場分析手法の教育など、メーカー物流には必要になってきます。ぜひIE手法も含め、こういった人財育成にも着手していきたいものです。
 

2. サプライチェーンのための技能向上

 物流人財育成では多能工化が欠かせません。これは現場作業であれ、管理業務であれ同様です。今や「一つの仕事しかできない」では広範なメーカー物流には対応できないのです。この多能工化ですが、仕事が広範だということだけではなく、仕事と仕事がつながっていることも要因として挙げられます。部品発注業務と在庫管理業務はとながっています。在庫管理業務を倉庫管理業務はつながっています。このように、さまざまな業務が連携していますので、これをぶつ切りで実行していくことは効率低下という結果を招くリスクがあるのです。そこで一人ができる領域を広げ、まずは自分がやらないとしても、別業務に自分の業務が与える影響を知る必要があります。
 
 多能工化のための技能向上策としまして、「一人3作業」の原則があります。これは一人ができる仕事を3つにするという、技能向上の第一歩ともいうべき施策です。まずはこのレベルから始めます。そして次に「1作業三人」の原則が挙げられます。その名の通り、1つの作業をその職場の三人の人ができるようにするということです。そして最後に「全作業三人」の原則を構築します。これはその職場の全作業をできる人を三人育てるという原則です。各職場でこの3つの原則が構築できれば、技能向上としましてはそこそこのカバー率になるかと思います。
 
 間接業務では在庫管理と一言で言っても、調達部品の在庫管理は購買管理、完成品の在庫は生産管理、販売用の在庫管理は営業管理の知識が必要になります。サプライチェーン全体を見渡せば、物流としてこれらの知識は持っておきたいところです。「買いの知識」「つくりの知識」「売りの知識」はメーカーとして必須要件です。現場作業のスキルを身につけることよりやや難しいかもしれません。しかしサプライチェーン効率化のためにはこれらの知識をまとめたテキスト等を作成し、勉強会を実施していくことは大切なことではないでしょうか。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


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