在庫コントロールと物流

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1. 安全在庫とロット在庫

SCM
 荷主会社の物流改善ニーズとして必ずと言っていいほど挙げられるのが「在庫削減」です。どこの会社でも在庫が多いことに悩んでいる証だと言えるのではないでしょうか。在庫はあらゆる活動の結果として生じるものです。
 
・ 買いすぎの結果として生じる余剰在庫
・ つくりすぎの結果として生じる余剰在庫
・ 設備トラブルが多いことによる安全(安心)在庫
・ サプライヤーの未納が多いことによる安全(安心)在庫
・ 顧客からのオーダーの振れによる安全(安心)在庫
 
 在庫には必ずその発生要因が潜んでいるのです。したがいまして在庫を削減するためにはこういった裏に潜む要因を潰していくことが必要なのです。在庫はロット在庫と安全在庫に分けられます。ロット在庫とは調達や生産の一回当たりのサイズが大きいことによって生じます。たとえば月に一回サプライヤーから資材を調達するのであれば、調達直後の在庫量は一か月分ということになります。月に一回生産するのであれば、生産ロットは「一か月」ということになります。生産直後のロット在庫は一か月分ということになるのです。ロット在庫は徐々に減っていき、次の納入や生産のタイミングで最少(限りなくゼロに近づく)になるのです。
 
 生産ロットや調達ロットの大きさを決めるのは生産や調達の頻度ということになります。生産(調達)が月に一回であれば一か月分のロットサイズであると言います。生産(調達)が週に一回であれば一週間のロットサイズということになるのです。生産(調達)の結果として発生する在庫も一か月分、一週間分ということになります。すでにお分かりいただけたかと思いますが、ロット在庫を縮めるためにはロットサイズを小さくする必要があるのです。一カ月に一回生産(調達)していたものを一カ月に二回、三回と増やしていくことで在庫が少なくなっていく理屈はご理解いただけるのではないでしょうか。
 

2. 安全在庫と安心在庫

 安全在庫は何かしらのトラブルに備えて持つ在庫のことを指します。トラブルとは設備故障や協力会社の未納、顧客の要求の振れなどいくつもあると思います。これらのトラブルが発生した際にはこの安全在庫を切り崩して次工程に悪影響を与えないようにするのです。この安全在庫ですが、担当者が必要以上の数量を持ってしまう傾向があります。これは担当者が自分の責任で次工程に支障をきたすことを嫌うことにあります。
 
 このような要因で持たれる在庫のことを「安心在庫」と呼びます。この安心在庫は本当に必要な安全在庫よりはるかに多くの数量となることが一般的です。設備故障で復帰まで1時間かかる場合、安全在庫は1時間分あればよいことになります。しかし、設備故障用の安全在庫と称して一日分の在庫を持ってしまうことがあるのです。この場合一日分と1時間分の差が安心在庫ということになります。この安心在庫は削減代ということになるのです。理由が不明な在庫は即刻削減することが望ましいと考えられます。
 
 在庫は「罪固」と表現することがあります。在庫は少なければ少ないほど良いと言われます。しかし理由もなく「なんとなく」持ってしまうものは会社にとって「罪なこと」と言わざるを得ないのです。理由が明確な在庫は「財庫」です。理由が不明確な在庫は「罪固」です。この認識を常に持つことが必要なのです。在庫はなぜ悪者扱いされるのでしょうか。その一つの要因として在庫を持つことに伴うコストが挙げられます。
 
 皆さんもお分かりのことと思いますが、在庫を持つと在庫を保管するための「容器」が必要です。その保管のための「場所」が必要になります。在庫が増えてくると一カ所で置ききれなくなります。そうなると「横持ち運搬」が必要になります。そしてそもそも論として「在庫管理」が必要となり、その管理要員が必要になるのです。つまり在庫を持つことでいろいろなコストを発生させてしまうということになるのです。当然のことながら安易に在庫を増やしてはならないことになるわけです。在庫を持つ場合にはその在庫の担当者を明確にすることをお勧めします。この在庫は購買部のAさん管理在庫、あの在庫は生産管理部のBさんの在庫、といった具合にするのです。
 

3. 在庫削減のコツ

 在庫が悪者扱いされる二つ目の理由は「ムダを隠してしまう」ということにあります。その事例を見ていきましょう。安全在庫を持つ理由として「設備故障」があるというお話をしました。安全在庫があれば設備が故障して生産が止まってしまったとしても次工程に迷惑をかけることがありません。このように在庫によるメリットがある一方で、デメリットもあるのです。そのデメリットとははっきり言うと設備そのものが故障しないように事前メンテナンスしようという意識が薄れてしまうことです。在庫があるから設備故障があっても大丈夫、ということは設備の故障を容認することにもつながってしまうということです。
 
 協力会社の未納があっても在庫を持っていれば生産は止まりません。一方で協力会...

1. 安全在庫とロット在庫

SCM
 荷主会社の物流改善ニーズとして必ずと言っていいほど挙げられるのが「在庫削減」です。どこの会社でも在庫が多いことに悩んでいる証だと言えるのではないでしょうか。在庫はあらゆる活動の結果として生じるものです。
 
・ 買いすぎの結果として生じる余剰在庫
・ つくりすぎの結果として生じる余剰在庫
・ 設備トラブルが多いことによる安全(安心)在庫
・ サプライヤーの未納が多いことによる安全(安心)在庫
・ 顧客からのオーダーの振れによる安全(安心)在庫
 
 在庫には必ずその発生要因が潜んでいるのです。したがいまして在庫を削減するためにはこういった裏に潜む要因を潰していくことが必要なのです。在庫はロット在庫と安全在庫に分けられます。ロット在庫とは調達や生産の一回当たりのサイズが大きいことによって生じます。たとえば月に一回サプライヤーから資材を調達するのであれば、調達直後の在庫量は一か月分ということになります。月に一回生産するのであれば、生産ロットは「一か月」ということになります。生産直後のロット在庫は一か月分ということになるのです。ロット在庫は徐々に減っていき、次の納入や生産のタイミングで最少(限りなくゼロに近づく)になるのです。
 
 生産ロットや調達ロットの大きさを決めるのは生産や調達の頻度ということになります。生産(調達)が月に一回であれば一か月分のロットサイズであると言います。生産(調達)が週に一回であれば一週間のロットサイズということになるのです。生産(調達)の結果として発生する在庫も一か月分、一週間分ということになります。すでにお分かりいただけたかと思いますが、ロット在庫を縮めるためにはロットサイズを小さくする必要があるのです。一カ月に一回生産(調達)していたものを一カ月に二回、三回と増やしていくことで在庫が少なくなっていく理屈はご理解いただけるのではないでしょうか。
 

2. 安全在庫と安心在庫

 安全在庫は何かしらのトラブルに備えて持つ在庫のことを指します。トラブルとは設備故障や協力会社の未納、顧客の要求の振れなどいくつもあると思います。これらのトラブルが発生した際にはこの安全在庫を切り崩して次工程に悪影響を与えないようにするのです。この安全在庫ですが、担当者が必要以上の数量を持ってしまう傾向があります。これは担当者が自分の責任で次工程に支障をきたすことを嫌うことにあります。
 
 このような要因で持たれる在庫のことを「安心在庫」と呼びます。この安心在庫は本当に必要な安全在庫よりはるかに多くの数量となることが一般的です。設備故障で復帰まで1時間かかる場合、安全在庫は1時間分あればよいことになります。しかし、設備故障用の安全在庫と称して一日分の在庫を持ってしまうことがあるのです。この場合一日分と1時間分の差が安心在庫ということになります。この安心在庫は削減代ということになるのです。理由が不明な在庫は即刻削減することが望ましいと考えられます。
 
 在庫は「罪固」と表現することがあります。在庫は少なければ少ないほど良いと言われます。しかし理由もなく「なんとなく」持ってしまうものは会社にとって「罪なこと」と言わざるを得ないのです。理由が明確な在庫は「財庫」です。理由が不明確な在庫は「罪固」です。この認識を常に持つことが必要なのです。在庫はなぜ悪者扱いされるのでしょうか。その一つの要因として在庫を持つことに伴うコストが挙げられます。
 
 皆さんもお分かりのことと思いますが、在庫を持つと在庫を保管するための「容器」が必要です。その保管のための「場所」が必要になります。在庫が増えてくると一カ所で置ききれなくなります。そうなると「横持ち運搬」が必要になります。そしてそもそも論として「在庫管理」が必要となり、その管理要員が必要になるのです。つまり在庫を持つことでいろいろなコストを発生させてしまうということになるのです。当然のことながら安易に在庫を増やしてはならないことになるわけです。在庫を持つ場合にはその在庫の担当者を明確にすることをお勧めします。この在庫は購買部のAさん管理在庫、あの在庫は生産管理部のBさんの在庫、といった具合にするのです。
 

3. 在庫削減のコツ

 在庫が悪者扱いされる二つ目の理由は「ムダを隠してしまう」ということにあります。その事例を見ていきましょう。安全在庫を持つ理由として「設備故障」があるというお話をしました。安全在庫があれば設備が故障して生産が止まってしまったとしても次工程に迷惑をかけることがありません。このように在庫によるメリットがある一方で、デメリットもあるのです。そのデメリットとははっきり言うと設備そのものが故障しないように事前メンテナンスしようという意識が薄れてしまうことです。在庫があるから設備故障があっても大丈夫、ということは設備の故障を容認することにもつながってしまうということです。
 
 協力会社の未納があっても在庫を持っていれば生産は止まりません。一方で協力会社が未納を何としても無くそうという考え方にはつながらないというデメリットがあるのです。こういったデメリットは在庫を持っていると顕在化しません。顕在化しないということはその問題点を改善するというアクションにつながりません。つまり在庫がいろいろな問題点を隠してしまうことになり、会社にとっては不幸なことと言えるでしょう。このような隠された問題点を顕在化させるためには「在庫を強制的に減らす」ことが一番です。そして担当者にプレッシャーをかけることです。そうすれば担当者は在庫に逃げることなく本質的な問題点の改善へと動くことになるのです。
 
 安心在庫を減らすためには今ある在庫をいったん凍結してしまうことをお勧めします。そして凍結した在庫を使うことなく一定期間経過した後にその在庫を本当に削減するのです。在庫の担当者を決めるとともに、その在庫を保有する理由を明確化していきましょう。いかがでしょうか。物流を担当していると必ず在庫問題に直面することになります。長期間動かない在庫を認識しているのは物流担当者です。常に在庫情報を関係部署にフィーバックすることで在庫コストを削減するとともに、隠されたムダを顕在化させ改善することで企業体力向上に貢献していきましょう。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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