第3章:問題解決のアイデアを出してみよう
1.TRIZトゥリーズによる問題解決の思考プロセス
TRIZ によるロジカルアイデア創造法(その9)まででTRIZトゥリーズの全体概要については理解していただけたことと思います。しかし、TRIZトゥリーズは学問ではありません。「知行合一」。理論を実践してこそ新しい創造性が得られるのです。ここでは、クライアントでお手伝いしているプロセスの概要をお話します。
TRIZトゥリーズとは世界中の特許の分析から抽出された問題解決理論です。具体的には
・ 「矛盾」と「進化」の両面から解決アイデアを出す手法。
・ 自分の知識経験だけではなく他分野の知識や知恵をうまく活用することです。
これだけ聞くととても良いことずくめのように感じますが、何事にも表と裏の両面があります。TRIZトゥリーズを知るだけでは、問題解決につなげられないというのも事実です。1996年に日本に紹介されて以来、多くの企業がTRIZトゥリーズを導入して問題解決を図ってきましたが、成功している企業ばかりではありません。その理由は大きく2つあります。
・ 問題の根本原因が見つけられないこと
・ TRIZトゥリーズがアイデアを出してくれるという誤解
1つ目の「問題の根本原因発見」は、ロジカルシンキング(論理的な思考)の実践が足りないからです。対策を考えるべきポイントが漠然としていると、アイデアも漠然としか出て来ず、その数も少なくなるのです。たとえば、「大きな自動車は出力が大きいが、燃費が悪い」という問題を考えてみましょう。
この矛盾からTRIZトゥリーズに持ち込むことは可能ですが、「大きい自動車」と「燃費が悪い」の間には、まだ論理的な距離が遠そうです。したがって、「大きい自動車」のどこについて解決策を考えるかが曖昧になります。「大きい自動車」がなぜ「燃費が悪くなるのか」の根本原因、たとえば「ピストンリングとシリンダーの摩擦が大きいから」を掴むと、考える対象が明確になり、より的確なアイデアを出すことができるのです。つまり、問題を起こしている本質的な要因を明確にすることで、そこに存在する矛盾を的確に定義することがTRIZトゥリーズを効果的に使うための第1のポイントといえます。
2つ目は「TRIZトゥリーズがアイデアを出すという誤解」です。TRIZトゥリーズは、条件を入力していくとその論理的な答えが得られるものではありません。「先人達はこの考え方で優れた解決策を出したようだよ」と方向を指し示してくれるのです。そもそも、クリエイティブな問題解決において論理的な正解など存在するはずがないのです。
最終的解決策は「実現可能性」に根ざした「Emotional(=感情的)」なものだと思います。つまり「解答」は自分で決めるものなのです。TRIZトゥリーズは、その判断に耐えうるような解決策を、心理的惰性を排除して数多く出すことに大きな貢献をします。
図14 優れたアイデアの出し方
◆TRIZトゥリーズ による問題解決の流れを整理します。
【ステップ1:問題の本質化】
問題(今、困っていて解決したいと考えていること) を起こしている根本原因を掴むためにロジカルに
攻める。
【ステップ2:TRIZによるアイデア出し】
解決すべき要因が見つかったらその部分に対して徹底的にアイデアを出す。
【ステップ3:アイデアの有効化】
出たアイデアの選択と結合によって問題解決のコンセプトを作り上げる。
この「収束⇒発散⇒収束」のプロセスこそが、優れたアイデアを生み出すための基本です。
図15 TRIZによる問題解決のフロー
次回は、TRIZ によるロジカルアイデア創造法(その11)として、第3章:問題解決のアイデアを出してみようの2.TRIZの思考プロセスで「ユニットバス」を改善してみようを解説します。
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