【パテント・ポートフォリオの構築方法、連載目次】
3.事業活動の展開に合わせたパテント・ポートフォリオの構築
特許性がないと社内判断された研究成果についても、「公開」か「守秘」かの判断が必要です。他社による万が一の特許化を恐れる場合には「公開技法」等の手段による公知化が必要です。他社による実施が自社事業の大きな損失になる場合には守秘を選択することが必要です。守秘を選択した場合には万が一に備えて先使用権確立のための措置を取っておかなければなりません。以上のことから明らかなように、「公開」か「守秘」かの判断には、研究・知財の観点に加えて、事業戦略的な観点からの判断が不可欠です。
さらに、研究開発の展開の中で代替技術・競合技術に対し、十分な配慮を払うことが必要です。研究開発は、事業戦略上の「課題」に対し、「解決手段」を与えることを目的とするものですが、その「解決手段」はひとつとは限らず、むしろ幾通りもあると考えるべきです。もし、他社が自社に比べてより良い解決手段の構築に成功すれば、自社の事業化への道は閉ざされてしまいます。したがって、代替・競合技術に常に気を配りながら、必要に応じて、技術開発の方向を変える、あるいは代替・競合技術領域にも特許出願を行うなどの対策を講じていくことが必要です。
以上の過程において常にパテント・ポートフォリオの見直しを行いながら「事業目的に対して最適化された状態」へと構築していくことが必要です。
4.特許情報の収集・解析をベースにしたパテント・ポートフォリオの構築
それでは「事業目的に対して最適化された」パテント・ポートフォリオを構築していくためには具体的にどのように特許情報を収集、分析、活用したら良いのか、以下にその手法を説明します。
(1)「戦略データ・ベース」の構築
特許情報をパテント・ポートフォリオの構築のために活用するためには、「戦略データ・ベース」の構築が不可欠です。「戦略データ・ベース」とは、事業ないし研究開発テーマに関連する全ての特許情報を特許情報解析ツールに収録した後、後述するように「付加情報」(統一されたキーワード)を入力することによって、これらのキーワードによる検索、解析ができるように加工されたデータ・ベースのことを言います。特許情報解析ツールとしては市販の各種特許マップソフトが利用可能ですが、その他、エクセル、アクセス等のソフトもこの目的に使用することがでます。「戦略データ・ベース」の構築手順は以下の通りです。
① 事業戦略あるいは研究開発戦略に関係す...