設計品質の作り込みと、人的設計ミス防止策(その4)

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【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】

 

3.デザイン・レビューを有効なものにするためには

 
 設計品質設計品質を検証する「デザイン・レビュー」について考えてみましょう。デザインレビュー(DR)は、一般に有識者の参画のもとに実施するレビューで、有識者からの指摘事項を再確認し、抜け漏れをフォローする形で実施されています。
 
 設計の検討不足、抜け漏れを防ぎ、過去の不具合を二度と発生させないことは設計品質マネジメントの基本です。そのためのデザイン・レビューは、効率的かつ客観的に行われる必要があります。
 

(1)デザイン・レビューの問題点

 
 多くの企業がこのプロセスを効果的に実施できておらず、自信を持って、DRを実施したから問題は出ないと言いきれない部分があります。設計者は、設計チェックリスト(設計ノウハウで構成されたもので、デザイン・レビューで一般に用いるリスト)を準備してDRに臨みます。ただ、このチェックリストに大きな問題があるのです。
 
 チェックリストは、多くの企業で作成されていますが、ことあるごとに追加され、また陳腐化して現状に合わない項目が残っていて、蓄積量が多くなりすぎ、逆にレビューモレが発生してしまう、という現象も挙げられます。
 
 設計ノウハウや再発防止策は蓄積されてはいるのですが、それらが体系的に整理・分類されていないことや、キーワードなどが設定されておらず、検索や選別がしにくいことがデザイン・レビューでのチェックモレが発生する要因となっています。また、有識者、または製造部門やサービス部門などの見方からの指摘事項を得ると言っても、有識者がなかなか集まらず、時間も限られていることから、レビュー内容も十分とは言えず、形だけのデザイン・レビューとなっています。
 

(2)効果の上がるデザイン・レビューとは

 
 効果の上がるデザイン・レビューを実施するにはどうすればいいでしょうか、この悩みを解決する特効薬は残念ながらありません。レビューのメリットの一つは、欠陥や問題の早期発見による修正コストの低減ですが、欠陥や問題の検出は、レビュー会議に先立って設計者の責任で実施すべきものです。設計者自身が、能動的に働き掛けて、何をレビューしたいのかを明確にしておく必要があります。受け身の態度でレビューに臨むことは避けるべきです。
 
 自ら実施した設計プロセスの説明、それを採用した根拠・比較検討データなども示せるように準備を整えることが重要です。設計作業は、一つ一つ根拠を明確に示せるかどうか、それを選択した判断基準が重要となります。設計の欠陥や問題の検出作業の密度を高めること、レビュー会議でも短時間で、問題や欠陥の有無を確認することを意識します。つまり、設計者の設計に対する考え方が正しいかどうかを判断してもらう場と考えるべきなのです。
 
 最近の傾向として、DRで3次元データを使うことが有効であり、分かりやすくより突っ込んだ議論ができることが期待できます。視覚的に理解しやすいし可動部の動きの表現も可能で、説明のための時間を短縮できます。また、DMU(デジタルモックアップ)機能で、部品のぶつかりや、組立順序の確認など組立性を検証が可能となってきました。
 
 流動解析、応力解析など各種のCAEツールの普及も相...

 

【設計品質の作り込みと人的設計ミス防止策 連載目次】

 

3.デザイン・レビューを有効なものにするためには

 
 設計品質設計品質を検証する「デザイン・レビュー」について考えてみましょう。デザインレビュー(DR)は、一般に有識者の参画のもとに実施するレビューで、有識者からの指摘事項を再確認し、抜け漏れをフォローする形で実施されています。
 
 設計の検討不足、抜け漏れを防ぎ、過去の不具合を二度と発生させないことは設計品質マネジメントの基本です。そのためのデザイン・レビューは、効率的かつ客観的に行われる必要があります。
 

(1)デザイン・レビューの問題点

 
 多くの企業がこのプロセスを効果的に実施できておらず、自信を持って、DRを実施したから問題は出ないと言いきれない部分があります。設計者は、設計チェックリスト(設計ノウハウで構成されたもので、デザイン・レビューで一般に用いるリスト)を準備してDRに臨みます。ただ、このチェックリストに大きな問題があるのです。
 
 チェックリストは、多くの企業で作成されていますが、ことあるごとに追加され、また陳腐化して現状に合わない項目が残っていて、蓄積量が多くなりすぎ、逆にレビューモレが発生してしまう、という現象も挙げられます。
 
 設計ノウハウや再発防止策は蓄積されてはいるのですが、それらが体系的に整理・分類されていないことや、キーワードなどが設定されておらず、検索や選別がしにくいことがデザイン・レビューでのチェックモレが発生する要因となっています。また、有識者、または製造部門やサービス部門などの見方からの指摘事項を得ると言っても、有識者がなかなか集まらず、時間も限られていることから、レビュー内容も十分とは言えず、形だけのデザイン・レビューとなっています。
 

(2)効果の上がるデザイン・レビューとは

 
 効果の上がるデザイン・レビューを実施するにはどうすればいいでしょうか、この悩みを解決する特効薬は残念ながらありません。レビューのメリットの一つは、欠陥や問題の早期発見による修正コストの低減ですが、欠陥や問題の検出は、レビュー会議に先立って設計者の責任で実施すべきものです。設計者自身が、能動的に働き掛けて、何をレビューしたいのかを明確にしておく必要があります。受け身の態度でレビューに臨むことは避けるべきです。
 
 自ら実施した設計プロセスの説明、それを採用した根拠・比較検討データなども示せるように準備を整えることが重要です。設計作業は、一つ一つ根拠を明確に示せるかどうか、それを選択した判断基準が重要となります。設計の欠陥や問題の検出作業の密度を高めること、レビュー会議でも短時間で、問題や欠陥の有無を確認することを意識します。つまり、設計者の設計に対する考え方が正しいかどうかを判断してもらう場と考えるべきなのです。
 
 最近の傾向として、DRで3次元データを使うことが有効であり、分かりやすくより突っ込んだ議論ができることが期待できます。視覚的に理解しやすいし可動部の動きの表現も可能で、説明のための時間を短縮できます。また、DMU(デジタルモックアップ)機能で、部品のぶつかりや、組立順序の確認など組立性を検証が可能となってきました。
 
 流動解析、応力解析など各種のCAEツールの普及も相まって、2D図面だけでは洗い出すことができない不具合を事前に洗い出し、対策できるようになり、これらの解析結果を、デザイン・レビューで抜け漏れが無いかどうかを確認することで、より効果が得られるようになります。
 
 トヨタグループで採用されているDRBFMは、新規点・変更点に着目したFMEAとして、有効性が評価されています。心配点を列挙し、徹底的にレビューを行うデザイン・レビューのツールとして位置づけられます。最近の傾向として組込みソフトを含む電子制御機能の比重は高まっており、この部分の潜在バグをいかに事前に検出するかが課題となっています。
 
 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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