ものづくり原価低減の進め方(その4)

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◆中小企業の原価低減ものづくり改革Q&A

 
 利益の出る「原価低減ものづくり改革」は、トヨタ生産方式でおなじみの、ムダを徹底的に省いて、生産性向上、リードタイム短縮により、ものづくり工場の原価低減、在庫削減により利益を向上させる改革です。しかしながら、トヨタ生産方式の考え方を理解した上で、自社に適したやり方を模索しながら改革を進めなければなりません。導入する上で最も基本となる項目について、Q&A形式で解説します。

【ものづくり原価低減の進め方 連載目次】

 
Q なぜ、カンバン方式は、うまくいかないのですか。
A 単に多品種少量生産ではなく、変種変量短納期生産を強いられる中小企業にとって、「カンバン方式=後工程引き取り方式」は、うまく機能しません。カンバン方式は、しっかりとした生産計画が基本にあり、その補助システムとして、カンバンによる、工程間の微調整を行う機能を担っています。初回品、単品の注文が多かったり、特急品が流れたり、品質の安定しない製品が流れたり、その時その時での対応を余儀なくされる工程では、整然としたカンバン方式は採用できません。
 
Q 5S活動、段取り時間の短縮など工程の改善を継続していますが、生産性が上がっているとは思えません。このようなことを続けていても本当に効果はあるのでしょうか。
A 5S、段取り時間短縮など現場の改善活動は、それなりに効果は有りますが長く続けているとマンネリ化し、活動もやがて下火になっていきます。活動の目的は、工場の原価低減です。ムダを省くことによって生産性を向上し、リードタイムの短縮を図ることです。この目標を、数値化して、改善による達成度の進捗を全員が目に見えるようにし、進めなければ意味がありません。工場がきれいになった、お客様が感心していたなど、外向けのアピール効果を狙った偽りの改善活動ならすぐにやめるべきです。
 
Q コンサルタントの先生が毎週来て大きな声で怒鳴りながら現場に入って指導していますが、その効果に疑問を持っています。
A 現場の改善は必要です。現場の改善なくして、工場の改善はあり得ません。ただし、現場が全てではないのです。「目に見えるところのカイゼン」が得意な方は沢山いらっしゃいます。ところが、生産計画や生産管理、資材調達管理、外注管理となると、とたんに、改善策の声が小さくなってしまいます。工場は、現場だけでなく、部品材料の購入、在庫、外注管理、顧客管理など一連の流れの中で、どこがネックになっているのかを分析しなければなりません。コンサルタントの肩の得意分野、不得意分野を良く見極めてお願いするようにしましょう。
 
Q 少人化、つまり人減らしは、従業員に受け入れられないのではないでしょうか。
A 生産性を上げるためには、生産量が増えないとすると、機械による加工の効率化、人の作業の効率化を行い、機械を減らす、人を減らすことが必要になってきます。そうすると、製造ラインで減らした作業者はどうすればいいでしょうか、その答えは、付加価値のある仕事についてもらうのです。付加価値のある仕事とは、例えば、作業でミスの起きない治具を考えて製作する、設備のメンテナンスを定期的に行い、故障を未然に防止する、リードタイム短縮のための生産計画、進捗管理を行う、などの仕事に就くことです。さらに、売り上げを伸ばすために、営業技術者として、新たな顧客獲得を行うスタッフとなるなど、より高付加価値作業に従事することです。 それには、教育システム、人事システムなどの整備が必要になってきます。
 
Q 改善活動を途中で挫折しないためにはどうすればいいでしょうか。
A 改善活動を全社活動として位置づけ、社長が先頭に立ち、推進することです。改善活動本部など、プロジェクトを結成し、毎月の目標、年間の目標を定め、計画・実施・進捗を確認し・適当な処置をとるという、PDCAのマネジメントサイクルが回るように仕組みを作ることです。この仕組みがうまく回らないと、活動は途中で必ず挫折します。
 
Q 改善活動は、具体的に何を目標に進めたらいいですか。
A 最初に目標とすべき項目は、リードタイム短縮です。まず、社内の生産開始から完成までの製造リードタイム短縮、次に部品、材料の発注から完成までのリードタイム短縮、次に外注生産も含めたリードタイム短縮に挑戦します。リードタイムを短縮することは、需要の変化に対応して生産計画が立てやすくなる、仕掛在庫や製品在庫を少なくできる、間接人員の削減、キャッシュフロー改善が可能になるというメリットがあり、そのためには、需要予測、生産計画、生産管理の改善、調達管理の改善、在庫削減、不良対策、自働化、段取り時間の短縮などを行っていきます。
 
Q 改善によってどれくらいで効果が出ますか。
A 最初の6か月~1年で、リードタイム短縮 50%、付加価値生産性向上30%を狙います。
 
Q ISO9000との関係はどう整合を図りますか。
A ISO9000は、品質マネジメントシステムですが、経営にも深くかかわっています。特に改善を継続させる、PDCAのマネジメントサイクルの仕組みは、ISO9000の要求事項でもあります。そのほか文書管理、人材の育成、顧客志向、...

◆中小企業の原価低減ものづくり改革Q&A

 
 利益の出る「原価低減ものづくり改革」は、トヨタ生産方式でおなじみの、ムダを徹底的に省いて、生産性向上、リードタイム短縮により、ものづくり工場の原価低減、在庫削減により利益を向上させる改革です。しかしながら、トヨタ生産方式の考え方を理解した上で、自社に適したやり方を模索しながら改革を進めなければなりません。導入する上で最も基本となる項目について、Q&A形式で解説します。

【ものづくり原価低減の進め方 連載目次】

 
Q なぜ、カンバン方式は、うまくいかないのですか。
A 単に多品種少量生産ではなく、変種変量短納期生産を強いられる中小企業にとって、「カンバン方式=後工程引き取り方式」は、うまく機能しません。カンバン方式は、しっかりとした生産計画が基本にあり、その補助システムとして、カンバンによる、工程間の微調整を行う機能を担っています。初回品、単品の注文が多かったり、特急品が流れたり、品質の安定しない製品が流れたり、その時その時での対応を余儀なくされる工程では、整然としたカンバン方式は採用できません。
 
Q 5S活動、段取り時間の短縮など工程の改善を継続していますが、生産性が上がっているとは思えません。このようなことを続けていても本当に効果はあるのでしょうか。
A 5S、段取り時間短縮など現場の改善活動は、それなりに効果は有りますが長く続けているとマンネリ化し、活動もやがて下火になっていきます。活動の目的は、工場の原価低減です。ムダを省くことによって生産性を向上し、リードタイムの短縮を図ることです。この目標を、数値化して、改善による達成度の進捗を全員が目に見えるようにし、進めなければ意味がありません。工場がきれいになった、お客様が感心していたなど、外向けのアピール効果を狙った偽りの改善活動ならすぐにやめるべきです。
 
Q コンサルタントの先生が毎週来て大きな声で怒鳴りながら現場に入って指導していますが、その効果に疑問を持っています。
A 現場の改善は必要です。現場の改善なくして、工場の改善はあり得ません。ただし、現場が全てではないのです。「目に見えるところのカイゼン」が得意な方は沢山いらっしゃいます。ところが、生産計画や生産管理、資材調達管理、外注管理となると、とたんに、改善策の声が小さくなってしまいます。工場は、現場だけでなく、部品材料の購入、在庫、外注管理、顧客管理など一連の流れの中で、どこがネックになっているのかを分析しなければなりません。コンサルタントの肩の得意分野、不得意分野を良く見極めてお願いするようにしましょう。
 
Q 少人化、つまり人減らしは、従業員に受け入れられないのではないでしょうか。
A 生産性を上げるためには、生産量が増えないとすると、機械による加工の効率化、人の作業の効率化を行い、機械を減らす、人を減らすことが必要になってきます。そうすると、製造ラインで減らした作業者はどうすればいいでしょうか、その答えは、付加価値のある仕事についてもらうのです。付加価値のある仕事とは、例えば、作業でミスの起きない治具を考えて製作する、設備のメンテナンスを定期的に行い、故障を未然に防止する、リードタイム短縮のための生産計画、進捗管理を行う、などの仕事に就くことです。さらに、売り上げを伸ばすために、営業技術者として、新たな顧客獲得を行うスタッフとなるなど、より高付加価値作業に従事することです。 それには、教育システム、人事システムなどの整備が必要になってきます。
 
Q 改善活動を途中で挫折しないためにはどうすればいいでしょうか。
A 改善活動を全社活動として位置づけ、社長が先頭に立ち、推進することです。改善活動本部など、プロジェクトを結成し、毎月の目標、年間の目標を定め、計画・実施・進捗を確認し・適当な処置をとるという、PDCAのマネジメントサイクルが回るように仕組みを作ることです。この仕組みがうまく回らないと、活動は途中で必ず挫折します。
 
Q 改善活動は、具体的に何を目標に進めたらいいですか。
A 最初に目標とすべき項目は、リードタイム短縮です。まず、社内の生産開始から完成までの製造リードタイム短縮、次に部品、材料の発注から完成までのリードタイム短縮、次に外注生産も含めたリードタイム短縮に挑戦します。リードタイムを短縮することは、需要の変化に対応して生産計画が立てやすくなる、仕掛在庫や製品在庫を少なくできる、間接人員の削減、キャッシュフロー改善が可能になるというメリットがあり、そのためには、需要予測、生産計画、生産管理の改善、調達管理の改善、在庫削減、不良対策、自働化、段取り時間の短縮などを行っていきます。
 
Q 改善によってどれくらいで効果が出ますか。
A 最初の6か月~1年で、リードタイム短縮 50%、付加価値生産性向上30%を狙います。
 
Q ISO9000との関係はどう整合を図りますか。
A ISO9000は、品質マネジメントシステムですが、経営にも深くかかわっています。特に改善を継続させる、PDCAのマネジメントサイクルの仕組みは、ISO9000の要求事項でもあります。そのほか文書管理、人材の育成、顧客志向、従業員志向など、企業活動の基本について、システム化を要求しています。
ただし、経営を成り立たせるには、利益の確保が必要であり、工場としては、モノづくりの費用を極力抑えることが必要になります。ともすると、品質を確保するために、検査項目を増やしたり、検査員を増員するなど対策しますが、これは工場を間違った方向へ導くことになります。ISO9000は、場合によっては、大量生産時代の工場管理に逆戻りしてしまうので、注意が必要です。
 
Q 管理者の役割はなんですか。
A 現場の管理者をはじめ、第一線の管理者の役割は非常に大きくなっています。管理職とは名ばかりで一般従業員と同じ仕事をしている工場もあると思いますが、これでは現場の改善はできません。管理者とは、今の現状に問題意識を持って、半年後、一年後には、職場をこう変えたいという目標を持っていなければなりません。また、自分の後継者の育成も大切な役目です。仕事をいかに楽にするか、いかに楽して生産性を上げるか、いかに自分の仕事を楽にするのかを常に考え、改善策を講じていくことが求められます。何事もネックになっている部分から一つ一つ確実に対策していかなければなりません。
 
 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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