【商品力の強化と商品開発の方向性 連載目次】
- 1. 商品ライフサイクルとスクラップ&ビルド
- 2. 商品のライフサイクルと次期商品の開発
- 3. 新商品開発の手順とポイント
- 4. 商品開発の方向性・着眼点
- 5. 顧客満足を得る商品企画
- 6. 品質に関わる事例
1. 新商品を開発することの目的
新商品の開発は、持続する健全な企業の商品開発としての創造活動であり、 その結果、利益を含めた投資を回収して次の新商品開発に取り組む循環サイクルを回すことを前回述べました。 また、永遠のテーマである「顧客の創造」を絶え間なく続ける企業活動であります。新商品開発の流れ新商品開発の流れは、前回の「商品ライフサイクルと次期商品の開発」で解説しました。
2. 開発手順
2.1 商品企画
・アイデアを創出し、製品骨子(概要)をまとめます。
・製品開発計画を立て、商品としての事業化の手順を設計します。
・商品計画としてまとめ、事業責任者の承認を得ます。
・ニーズとシーズを照合した結果の乖離を仕様変更で妥協するのか、要求仕様に設備投資を含め開発をその水準まで引き上げるのかが、技術力、販売開始時期との兼ね合いで決める重要事項です。
・事業化の検討とは、該当する新商品を開発し、販売するか否かの決断です。製品の優位差、投資対効果、社会的責任など総合的に検討し、商品化の可否を決定することが必要です。
2.2 製品・商品開発
・開発体制、スケジュール、開発費用など投資計画を立てます。
・製品開発計画としてまとめ、事業責任者の承認を得ます。
・製品開発は、開発の初期段階から開発部門だけではなく、製造や購買など生産に携わる部門と協業し、製品コスト、生産コスト、商品納期などの低減を図ります。
・製品開発においては、自社技術である固有技術を駆使することは言うまでもありませんが、商品企画の実現のために更に必要な技術や設備が必要になることが多いので、流通ルートを含むコラボ先とのネットワークを活用することが、成功率を高めます。また、補足技術、補足設備の計画も綿密に立てることが必要になります。
・製品開発の手法として、品質面では品質機能展開、QC7つ道具、また、コスト面ではVE、ティアダウンなどの科学的手法を用い推進することをお薦めします。
・限られた経営資源を有効活用するためにも、コンカレントエンジニアリングが推奨されます。しかし、それには各部門の建設的な参画と強力なプロジェクトリーダーの存在が不可欠です。
2.3 市場テスト(テストマーケティング)
・テストサンプルを生産します。
・サンプル生産時に、購買、本生産工程などの生産準備を確認したり、不足事項の有無を 見極めます。ライバル商品との比較分析を厳格に行い、改善すべき点を対策します。
・実施ステージで、商品企画との差異を品質、コスト、納期などの点から評価します。
・商品企画との乖離がある場合は、それを埋めるのか否かを含め、時には販売 中止を含めて検討、対応します。
・商品規模や特性などによりますが、どのレベルのテストサンプルで行うのかも重要な ポイントです。 例えば、性能機能のチェック目的で技術ラボの手作りに近い状態のものなのか、量産品質を チェックするため最終設備で生産したものかなどです。 また、複数回実施することも確実性を実証することができ、有効です。
2.4 生産
・現有工程や設備で生産できない場合、新設、増設または工程設計を見直します。
・生産規模にもよりますが、試作ライン、量産ラインなど、生産ラインの構築し、市場に投入する道のりをあらかじめ設計して安定供給に備えます。
・全材料、部品の購買ルートと購入価格を設定し、必要に応じ個別契約をして入手ルートを確保します。
・工程ライン及び製品の品質、コスト、生産期間などが商品企画に合致していることを検証して、品質保証体制を構築します。
・以上を経て、販売の開始、即ち商品化へ移行します。
・あらかじめ工程能力(品質、負荷)の基準を設定して、商品評価を行い、絶え間なく改善することが重要です。ただし、顧客が求める以上の過度な品質要求はコストアップにつながるので、適正目標の設定が、経営的には重要な判断要素であります。