1. 技術提案書を添削してわかったこと
先日、「技術提案書を書くときに重要なこと」をテーマに社員研修で講師を務めてきました。
国土交通省が発注する業務を受注する場合、技術提案書を提出させることがあります。このような業務は、プロポーザル方式や総合評価落札方式と呼ばれています。
社員研修では、「技術提案書を書くときに重要なこと」の解説と技術提案書の添削結果の解説も行いました。
添削結果の解説では、その会社の方が書いた4編の技術提案書の添削を行い、「Before & After」の形式で技術提案書の修正点のアドバイスを行いました。主に、「わかりやすい技術提案書(発注者に提案内容が明確に伝わる技術提案書)」を書くためのアドバイスを行いました。提案内容に関する技術的なアドバイスも一部行いました。
アドバイスの内容(修正点)を一言で言えば・・・
“内容が明確に伝わるように書く”です。
逆を言えば、4編の技術提案書には「内容が明確に伝わらない箇所があった」ということです。
例えば、「提案内容の着目点が不明確である」、「具体的な内容の文章や文を書いていない」、「意味がわかりにくい文を書いている(必要な語句が欠けている文を書いている)」などです。
2. 書くべきことが自分の頭の中でぼやけている
このように“内容が不明確な技術提案書”を書く理由の1つが、「書くべきことが自分の頭の中でぼやけている」ということです。
例えば、「必要に応じて・・・」、「状況に応じて・・・」という語句があります。このような語句は、自分の頭の中がぼやけていても使えます。
具体的なことが頭の中になくても、「必要に応じて◯◯を行う・・・、状況に応じて△△を行う・・・」というような、ある意味、ごまかしで文を書くことができるからです。
例えば、技術提案書に、「必要に応じて住民への説明会を開催する」と書いたとき、「必要に応じて」という言葉の具体的な意味(「必要に応じて」が何を意味するのか、「必要」とはどのような状態なのか)が自分の頭の中になくてもこのような文を書くことができます。
これまでの記事の中で何度も書いていることですが、「書き手=知っている人、読み手=知らない人」です。しかし、この場合は「書き手=知らない人、読み手=知らない人」です。これでは、読み手に内容が明確に伝わりません。
「必要に応じて・・・」、「状況に応じて・・・...
」のように自分の頭の中がはっきりしていなくても(具体的な内容が頭の中になくても)書ける語句(単語)は他にもあります。これについては後日記事として書く予定です。
「書くべきことを自分の頭の中ではっきりさせること」が重要なのは、わかりやすい技術提案書を書くときだけが対象ではありません。技術者の方が書く文書のすべてが対象です。
「書くべきことが自分の頭の中でぼやけていないか?」と自問しながら文書を書いてください。
【参考文献】
森谷仁著、「技術者のためのわかりやすい文書の書き方」、オーム社、平成27年3月20日