~第2ステージ:要因水準決定 実験計画法実施マニュアル(その2)

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 今回は実験計画法フローチャート(右下図)の第2ステージの内、要因水準の決定工程です。今回はステージを5つに分割した第1ステップの因子抽出について解説します。

1. 因子抽出:関連因子を50以上数えあげる


 開発テーマを達成するような因子をピックアップすることを「因子の数えあげ」といい、開発テーマ達成のためには、この数えあげられた因子とその水準の組み合わせの中に「解」が存在しなければなりません。ですから数えあげられた因子数が多いほど目的達成の確率は高くなります。

 以下の点に注意しながら、関連因子を50以上数えあげて下さい。

  1. 担当者だけでなく複数(上司・作業者・研究者・製造者他)で討論する
  2. 部内外の専門家・コンサルタント・セールス・企画担当者も討論に参加させる
  3. いつも反対する人・特異的な考えをする人・変人も討論に参加させると良い
  4. 因子を数えあげる過程でメンバーの考えを批判することなく、積極的に種々の因子を考えさせるように誘導するように助言する
  5. 討論が十分できるように、サンプルや他社品、データ、カタログ、部品などを用意する
  6. 特異・予想外・異質で今まで存在しないような因子を多数かぞえあげる
  7. 素人考えを観迎する
  8. 時には固定された考えにとらわれないために、従来の担当者を除外して討論する

2. 関係者のみの討論にある欠点 ~ 第三者の有効活用を

 特に、特異・予想外・異質で今まで存在しないような因子を多数かぞえあげることは新しい現象、画期的な改善が期待できます。因子をいくら多くあげても、実験総数にはおのずと制限があるので無駄だと思われるかもしれません。上司を含めこじんまりやったほうが結論も早く出て混乱することがなく、すぐ実験に取り掛かれるという考えもありますが、関係者のみの討論は多くの場合、次のような欠点があります。

  1. 考え方に片寄りがあるため、行動・決定パターンが同じで、解決の糸口が見出せず最適条件になかなか到達しない
  2. 考え方・見解・認識に欠落が多く、自分自身の行動・結論に正当性がない

 少人数による討論の欠点は理解できますが、開発テーマを達成するようなドラマチックな結果を得るには、予想外の結果を期待しなければなりませんので、偏った考えをしがちな担当者達では上手くいくはずがありません。新製品開発などでは、今までにない新しい考え方が必要となり、この考え方を提案できる人は実験目的にあまり関係がない人、つまり利害関係がない第三者を有効利用することをお勧めします。

 また、因子の数えあげが理論的である必要は全くありません。むしろ直観的であったほうが良いでしょう。理論そのもの自体が常識的で、現象そのものを数式で記述したものです。直観的であることが許容されるならば、関係者外のメンバーが要因の数えあげの議論に参加できます。理論が成立するような場での研究では、目新しい結果は得られません。それは理論自体から限界を推定できるからです。理論の枠外にこそ、予想外の面白い現象が存在すると考えていいでしょう。

 企業内で理論が優先し、新製品開発が行われた例を私は知りません。理論は単純な系にしか適用されず、商品はシステムを複合化したものですから、理論でその出力を説明できないものばかりです。理論で分かるのなら実験をする必要はなく、理論で推定できないからこそ実験が必要となります。理論をヒントにすることは賛成ですが、発想そのものを制限するような形で理論を前面に押し出すべきではないと考えます。

3. なぜ多くの因子を数え上げるのか

 たくさんの因子を数えあげることのメリットを挙げましたが、2つの理由があります。

(1)達成すべき目標を実現する因子が含まれる確率が高い。また異質な因子がたくさん含まれる確率も高い

(2)関係者により因子が数えあげられることで、開発テーマに対する全体的な方向づけ、内容の合意が得られる

(1)は関係者全員で解決(達成)できると確信できるまで因子を数えあげるのですから、見落としもほとんどないはずで、予想以上に改善が期待できる異質な因子も、多人数の討論で多くピックアップできます。

(2)はとても重要なことで、関係者全員による因子の数えあげは3つのメリットがあります。

  1. 関係者全体の動機づけをすることができる
  2. 実験推行上の協力関係をスムーズにする
  3. 個性の強い担当者の独走、暴走を抑制し、偏りのない客観的視野に立った計画が作成できる

 上記(1)、(2)共に実験計画法の手法とは関係のないマネージメントの話にもみえます。実験計画法自体は、手法そのものですが、実験を成功させるように誘導する概念と周囲を動機づけ、協力を得られるようにする行動が必要となり、これ自体はマネージメントに属する活動です。

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 今回は実験計画法フローチャート(右下図)の第2ステージの内、要因水準の決定工程です。今回はステージを5つに分割した第1ステップの因子抽出について解説します。

1. 因子抽出:関連因子を50以上数えあげる


 開発テーマを達成するような因子をピックアップすることを「因子の数えあげ」といい、開発テーマ達成のためには、この数えあげられた因子とその水準の組み合わせの中に「解」が存在しなければなりません。ですから数えあげられた因子数が多いほど目的達成の確率は高くなります。

 以下の点に注意しながら、関連因子を50以上数えあげて下さい。

  1. 担当者だけでなく複数(上司・作業者・研究者・製造者他)で討論する
  2. 部内外の専門家・コンサルタント・セールス・企画担当者も討論に参加させる
  3. いつも反対する人・特異的な考えをする人・変人も討論に参加させると良い
  4. 因子を数えあげる過程でメンバーの考えを批判することなく、積極的に種々の因子を考えさせるように誘導するように助言する
  5. 討論が十分できるように、サンプルや他社品、データ、カタログ、部品などを用意する
  6. 特異・予想外・異質で今まで存在しないような因子を多数かぞえあげる
  7. 素人考えを観迎する
  8. 時には固定された考えにとらわれないために、従来の担当者を除外して討論する

2. 関係者のみの討論にある欠点 ~ 第三者の有効活用を

 特に、特異・予想外・異質で今まで存在しないような因子を多数かぞえあげることは新しい現象、画期的な改善が期待できます。因子をいくら多くあげても、実験総数にはおのずと制限があるので無駄だと思われるかもしれません。上司を含めこじんまりやったほうが結論も早く出て混乱することがなく、すぐ実験に取り掛かれるという考えもありますが、関係者のみの討論は多くの場合、次のような欠点があります。

  1. 考え方に片寄りがあるため、行動・決定パターンが同じで、解決の糸口が見出せず最適条件になかなか到達しない
  2. 考え方・見解・認識に欠落が多く、自分自身の行動・結論に正当性がない

 少人数による討論の欠点は理解できますが、開発テーマを達成するようなドラマチックな結果を得るには、予想外の結果を期待しなければなりませんので、偏った考えをしがちな担当者達では上手くいくはずがありません。新製品開発などでは、今までにない新しい考え方が必要となり、この考え方を提案できる人は実験目的にあまり関係がない人、つまり利害関係がない第三者を有効利用することをお勧めします。

 また、因子の数えあげが理論的である必要は全くありません。むしろ直観的であったほうが良いでしょう。理論そのもの自体が常識的で、現象そのものを数式で記述したものです。直観的であることが許容されるならば、関係者外のメンバーが要因の数えあげの議論に参加できます。理論が成立するような場での研究では、目新しい結果は得られません。それは理論自体から限界を推定できるからです。理論の枠外にこそ、予想外の面白い現象が存在すると考えていいでしょう。

 企業内で理論が優先し、新製品開発が行われた例を私は知りません。理論は単純な系にしか適用されず、商品はシステムを複合化したものですから、理論でその出力を説明できないものばかりです。理論で分かるのなら実験をする必要はなく、理論で推定できないからこそ実験が必要となります。理論をヒントにすることは賛成ですが、発想そのものを制限するような形で理論を前面に押し出すべきではないと考えます。

3. なぜ多くの因子を数え上げるのか

 たくさんの因子を数えあげることのメリットを挙げましたが、2つの理由があります。

(1)達成すべき目標を実現する因子が含まれる確率が高い。また異質な因子がたくさん含まれる確率も高い

(2)関係者により因子が数えあげられることで、開発テーマに対する全体的な方向づけ、内容の合意が得られる

(1)は関係者全員で解決(達成)できると確信できるまで因子を数えあげるのですから、見落としもほとんどないはずで、予想以上に改善が期待できる異質な因子も、多人数の討論で多くピックアップできます。

(2)はとても重要なことで、関係者全員による因子の数えあげは3つのメリットがあります。

  1. 関係者全体の動機づけをすることができる
  2. 実験推行上の協力関係をスムーズにする
  3. 個性の強い担当者の独走、暴走を抑制し、偏りのない客観的視野に立った計画が作成できる

 上記(1)、(2)共に実験計画法の手法とは関係のないマネージメントの話にもみえます。実験計画法自体は、手法そのものですが、実験を成功させるように誘導する概念と周囲を動機づけ、協力を得られるようにする行動が必要となり、これ自体はマネージメントに属する活動です。

 実験計画法の解析手法を知っているだけでは役に立ちません。目標の達成は、前提条件を整備する能力を有している技術者であるかどうかで決まります。実験で取り上げた因子とその水準組み合わせ内に「解」が存在しないと不幸な結果になります。

 担当者自身が考えて実験を行う個人活動は、自由度が大きく居心地も良いでしょう。しかし研究課題は個人に属していても、その得失は企業に及びます。担当者の考えを無視するわけではありませんが、担当者が持っている技術のみで解決するのではなく、担当者自身が関係者全体に対して、動機づけの周知と知恵を結集して目標達成の推進者になることが重要です。

 時には実験の失敗もあるかと思います。実験結果が好都合であるか否かは、目標に対しての成功失敗に関連し、見落しがあったりして再実験するようなことでは実験失敗です。不都合な実験結果によって開発方針を変更するようなケースの実験そのものは大成功といえるでしょう。

 因子の数えあげを十分に行えば、成功への第一関門を突破したようなものです。

 

次回は「第2ステージ:要因水準決定『因子の分類』」について解説します。

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この記事の著者

森 輝雄

タグチメソッドをつかった最適化工学をやさしく伝えます

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