クリーン化の目的のなかから、今回はCS向上(Audit対応)→ES向上 について説明します。
ものづくり企業の場合は、自社製品を開発、販売するだけでなく、他企業からの受注により製品を作っています。すると、納入先から、2~3年位の間隔で定期的に監査があります。この監査を客先監査とかAuditなどと言い、大別すると机上監査と現場監査があります。
机上監査は基準、標準、帳票等の品質システムが中心ですが、現場監査は該当製品が製造されている工場、ラインに入り、不具合が無いかどうかをチェックします。確認内容は多岐にわたりますが、クリーン化に関わる部分も多いです。机上の説明だけでは理解できないことが多いので、国内、海外どの客先であっても現場は良く見ます。三現主義(現場で現物、現実を見る)ですね。
監査の事例で、こんな話を聞いたことがあります。机上の監査に時間がかかり過ぎ、現場を見る時間が少なくなったが、現場確認を省略せず短時間でも工場に入り、床だけ見て帰ったと言うことです。この理由を聞くと、ものを作っているのは現場だから短時間でも現場は必ず見る。品質問題はゴミ起因も多いので、清掃状況だけでも確認したい。清掃の基本は上から下へ、奥から手前へと言う順に行われ、最後に着手するところが床である。この床が綺麗なら、それ以外もきちんと清掃されているはずだと言う理由でした。
こういう監査は予告されているので、現場でも良く3Sされているはずです。でもその日、その時に限って不具合が発見されてしまうことがあります。現場とは、その場に現れると書きますが、まさにその通りです。普段やっていないことであっても、その時だけ指示したり取り繕っていると、こういう時にボロが出やすく、日々の継続が大切だとつくづく思います。
現場監査では、設備や環境をもっと綺麗にして欲しいと言われることが多く、指摘よりもむしろお叱りをいただくことの方が多いです。
私が赴任していたある工場ではこんなことがありました。予定の監査が終了し、会議室でクロージングミーティングがありました。纏めの報告会、指導会です。その場で監査者の一人が「○○職場の△△設備の前に髪の毛が1本落ちていた」と言う指摘をしました。そこに集まった管理監督者の多くは、「そういうことは、その場で指摘すれば良いのではないか」とか「髪の毛たった1本のことまで指摘するのか」と思ったようです。
ところがその場にいたある課長は、現場に戻って、こんな風に課員に話したそうです。「監査の方は、髪の毛一本のことを言ったのではなく、髪の毛もクリーンルームの中では大きなゴミです。それを見つけられる、見つけたら清掃する文化、風土はありますか?と言うことを言っているんです」と。その課長は、多くの管理監督者が思ったようなことを現場で話してしまうと、被害者意識を持ってしまうだろうことを危惧したとのこと。
本当は、自分でも被害者意識を持って口に出したくなるところでしょうし、その方が気持ちも楽になると思います。でも、これも育成の機会と捉えていたんですね。こんなことを意識して人を育て、クリーン化活動を継続し、お客様に収める製品の製造現場はこんなに綺麗にしていますと表現したい、つまりお客様に満足していただける工場にしたいというのが、クリーン化の目的の一つ、CS(顧客満足度)向上に貢献することです。これによって、その後の商売の繋がりも太くなります。
もう一つの例を紹介します。ある工場は、日頃からクリーン化活動継続的に取り組み、現場は非常に良い環境でした。その現場に入った監査者から「綺麗に管理されている、非常に良い工場ですね」と誉められたそうです。その対応に当たった現場の監督者が、監査終了後に私のところに飛んで来て「今日は現場監査でお客様から誉められました」と嬉しそうに報告してくれたのです。
もちろんその監督者だけではなく、その場にいた他のメンバーの気持ちも高揚したようです。後から上司を通じて聞くよりも、その場で...