技術系ビジネスリーダーの養成 (その1)

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技術系ビジネスリーダーの養成 (その1)

【目次】

    【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

     製造業は技術ベースのビジネスを行っており、その技術を深く理解する技術者が製品開発・事業開発において中心的な役割を担う場面は多い。既存事業の技術開発課題への対応や特許出願は当然として、技術をベースにした新製品開発・新事業開発・新市場創出、自社技術の標準化の働きかけ、アライアンス・M&Aにおける技術のデューデリジェンスまである。特に技術ベースの新事業開発・新市場創出は技術者ならではの、技術者がリードすべき重要なミッションであろう。

     

     いま国内市場は低迷し、中国・アジア市場などの新興国の経済成長が著しい。日本製造業は従来は販売や生産という特定の機能組織レベルの海外進出であったが、国内事業環境の「六重苦」も背景に、今後は事業レベルでの海外展開が加速していくものと予想される。そこでは開発部門も含まれ、技術者も中国・アジアに出向い...

    技術系ビジネスリーダーの養成 (その1)

    【目次】

      【技術系ビジネスリーダー養成 連載目次】

       製造業は技術ベースのビジネスを行っており、その技術を深く理解する技術者が製品開発・事業開発において中心的な役割を担う場面は多い。既存事業の技術開発課題への対応や特許出願は当然として、技術をベースにした新製品開発・新事業開発・新市場創出、自社技術の標準化の働きかけ、アライアンス・M&Aにおける技術のデューデリジェンスまである。特に技術ベースの新事業開発・新市場創出は技術者ならではの、技術者がリードすべき重要なミッションであろう。

       

       いま国内市場は低迷し、中国・アジア市場などの新興国の経済成長が著しい。日本製造業は従来は販売や生産という特定の機能組織レベルの海外進出であったが、国内事業環境の「六重苦」も背景に、今後は事業レベルでの海外展開が加速していくものと予想される。そこでは開発部門も含まれ、技術者も中国・アジアに出向いて、新事業・新市場創出につながる活動をリードしていくことが求められる。 

       

      1.技術者の2つのキャリアパス ~スペシャリストかビジネスリーダーか~

      企業における技術者には、基本的に2つのキャリアパスがある。1つは、特定技術分野におけるプロフェッショナルとしてのパスである。もう1つは、技術系の管理職のパスである。

       

      まず前者のプロフェッショナルとしてのパスであるが、特定技術の知識・経験が「そこそこ」あるだけではグローバル競争の中で生き残るのは厳しい。新興国における技術者育成は盛んであり、多くの技術者が育成されている。米国のトップクラスの大学・大学院への留学数も多く、多くのPh.Dホルダーを輩出している。また彼らは生活水準や所得の向上のために学びチャレンジすることに非常に貪欲である。中国やインドになると人口も日本よりも一桁大きく、輩出される技術者人口も桁が違う。

       

      一方、日本はどうだろうか。人口も1億人程度で、中国・インドなどに比べれば技術者の絶対数は相対的に少ない。質の面をみると、9時出社・5時帰社の『サラリーマン型』の技術者も多いなどという話も聞く。サラリーマン型の技術者では、大した技術イノベーションはでないだろう。イノベーションとはオペレーショナルな業務からは生まれない。昼夜関係なく集中的に取り組んでようやく生まれるしろもののはずである。海外の技術者にこれからどんどん追い越される時代がすぐそこまできている。

       

      しかも、日本人の場合は、基本的には人件費が高い。また技術開発においては、技術は自然科学という「プロトコル」があり、言葉を超えてある程度の意思疎通もできる。特定技術の専門性の高さだけなら、企業が日本人よりも海外の人材を雇用していくことは容易に想像できる。グローバルレベルでトップクラスの技術者として、会社などの組織を超えて、通用するだけのレベルまで極められればよいが、そこまでいけるのはほんの一握りの技術者だけではないか。

       

      そのような背景もあり、日本の技術者としては、もう一つの選択も平行してもっていてもらいたい。技術系の管理職のパスである。しかし、ただ管理するだけでは付加価値が低い。技術について知見があることを活かし、いろんな技術を目利きして、技術を組み合わせて、製品や事業、新市場創出につなげるリーダーになることが望ましい。このような人材をニューチャーネットワークスでは『技術系ビジネスリーダー(TBL:Technological Business Leader)』と呼んでいる。

      (つづく)

       

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      この記事の著者

      福島 彰一郎

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