お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法:ヒューマンエラー防止策(その3)

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お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法:ヒューマンエラー防止策(その3)

【目次】

    この連載では、私たちが切っても切れないご縁のあるヒューマンエラーをできるだけなくし、それに伴う事故や災害のない生活を夢に見て一緒に考えていきたいと思います。今回は、ヒューマンエラー防止策、その3「お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法」です。

     

    1.  ハインリッヒの法則を逆手に取って考えて見ましょう

    ヒューマンエラーは、些細なことの積み重ねの上に発生することがほとんどです。それが些細なことなので、普段はその原因も気づかないことが多くあります。また実際には事故にはならなかったヒヤリハットがあります。これは、実際に事故や災害にならなかったりすると、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”の諺の如く、いつの間にか「記憶にございません!」となってしまいます。その繰り返しがいつの間にか積もり積もったある時点で、運悪く事故や災害に遭遇してしまうのです。

     

    この積もり積もったピラミッドの様相が、ハインリッヒの法則です。1929年に米国の保険会社のハインリッヒ氏が発見した法則です。大きな事故が1件あると、その背景には中くらいの事故が29件、さらに小さな事故が300件もあることを突き止めたのです。これは自動車事故だけでなく、労働災害にも同様に適用される比率です。人間がやることの法則化できることがわかれば、逆に利用すればよいと考えます。

     

    この1:29:300の比率のピラミッドの下を考えて見ます。実際に小さな事故が発生する前に、事故にならなくてよかったというヒヤリハットがあります。さらにタイミングがずれてヒヤリハットにはならずに無事に助かったとか、寸前に止めて何事もなかった、ちょっとしたことで免れたことなどと、事故の手前の些細な現象は思いのほかたくさんあるはずです。しかし記憶に残らないのは些細なことや気にも留めることのないことは、小さな事故300件の数倍以上もあると考えられます。筆者は、その領域を「モヤモヤゾーン」と呼んでいます。

     

    ハインリッヒの法則のピラミッドは、底辺が大きいと頂点の高さが高くなります。富士山が高いのは、すそ野が広いと称されるのと同じです。逆にこの底辺が狭ければ、頂点の高さも低くなると考えます。この「モヤモヤゾーン」の現象である、混乱していた、似たようなものがあった、量がたくさんあった、汚れていたのでわからなかった、暗いので見えなかったなどなどです。もうお分かりかと思いますが、5Sと目で見る管理でできる小改善で、廃除できることばかりなのです。しかもそれらは、お金もかからずにすぐにできることだったのです。目の前の空気は見えないのと同じことで、気づくと何でもないことだったのです。でも気づくと次々と発見できます。

     

    この「モヤモヤゾーン」を改善して、分母を小さくしてしまえという作戦です。そうすれば、小さな事故の300件を1/10にすれば、29件だった分子は、2か3になります。そうすれば、頂点にあった分子の「1」は、ゼロになります。 

     

    2.  効果が大きい指差し呼称、恥かしがらずに即実践!

    この「モヤモヤゾーン」をなくする方法と合わせて、お金のかからない方法も紹介します。鉄道各社がやっている指差し呼称です。これは日常の通勤でもその様子は確認できます。指を指して、体もその方向に無理向けて、さらに声も出して確認しています。つまり、見る、指を指す、体を向ける、声を出すといった一連の動作を、体全体を使って確認して喚起しているのです。これをやると何もしない場合のミス防止は、1/6にできるのです。これを2回繰り返せば、1/6×1/6=1/36になります。

     

    多くの工場でTPMをやっている場面で、実際に道路の横断や設備確認などで、指差し呼称を見ることがあります。TPMをやっていても5Sが十分にできていない工場の指差し呼称は、鉄道各社の動作とかなり違うことを感じます。それは、真剣さが足らないことです。やらされ感が見え見えで、指は真っすぐでなくピンとしてなく「何々よし!」も声に出していなく、姿勢もよくありません。これではすぐにミスや災害が発生すると考ええます。現場の上司に確認すると、案の定29件や300件レベルの事故が発生していると小声で話をされます。指差し呼称といった1つの行為ですが、“細部に神々は宿る”...

    お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法:ヒューマンエラー防止策(その3)

    【目次】

      この連載では、私たちが切っても切れないご縁のあるヒューマンエラーをできるだけなくし、それに伴う事故や災害のない生活を夢に見て一緒に考えていきたいと思います。今回は、ヒューマンエラー防止策、その3「お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法」です。

       

      1.  ハインリッヒの法則を逆手に取って考えて見ましょう

      ヒューマンエラーは、些細なことの積み重ねの上に発生することがほとんどです。それが些細なことなので、普段はその原因も気づかないことが多くあります。また実際には事故にはならなかったヒヤリハットがあります。これは、実際に事故や災害にならなかったりすると、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”の諺の如く、いつの間にか「記憶にございません!」となってしまいます。その繰り返しがいつの間にか積もり積もったある時点で、運悪く事故や災害に遭遇してしまうのです。

       

      この積もり積もったピラミッドの様相が、ハインリッヒの法則です。1929年に米国の保険会社のハインリッヒ氏が発見した法則です。大きな事故が1件あると、その背景には中くらいの事故が29件、さらに小さな事故が300件もあることを突き止めたのです。これは自動車事故だけでなく、労働災害にも同様に適用される比率です。人間がやることの法則化できることがわかれば、逆に利用すればよいと考えます。

       

      この1:29:300の比率のピラミッドの下を考えて見ます。実際に小さな事故が発生する前に、事故にならなくてよかったというヒヤリハットがあります。さらにタイミングがずれてヒヤリハットにはならずに無事に助かったとか、寸前に止めて何事もなかった、ちょっとしたことで免れたことなどと、事故の手前の些細な現象は思いのほかたくさんあるはずです。しかし記憶に残らないのは些細なことや気にも留めることのないことは、小さな事故300件の数倍以上もあると考えられます。筆者は、その領域を「モヤモヤゾーン」と呼んでいます。

       

      ハインリッヒの法則のピラミッドは、底辺が大きいと頂点の高さが高くなります。富士山が高いのは、すそ野が広いと称されるのと同じです。逆にこの底辺が狭ければ、頂点の高さも低くなると考えます。この「モヤモヤゾーン」の現象である、混乱していた、似たようなものがあった、量がたくさんあった、汚れていたのでわからなかった、暗いので見えなかったなどなどです。もうお分かりかと思いますが、5Sと目で見る管理でできる小改善で、廃除できることばかりなのです。しかもそれらは、お金もかからずにすぐにできることだったのです。目の前の空気は見えないのと同じことで、気づくと何でもないことだったのです。でも気づくと次々と発見できます。

       

      この「モヤモヤゾーン」を改善して、分母を小さくしてしまえという作戦です。そうすれば、小さな事故の300件を1/10にすれば、29件だった分子は、2か3になります。そうすれば、頂点にあった分子の「1」は、ゼロになります。 

       

      2.  効果が大きい指差し呼称、恥かしがらずに即実践!

      この「モヤモヤゾーン」をなくする方法と合わせて、お金のかからない方法も紹介します。鉄道各社がやっている指差し呼称です。これは日常の通勤でもその様子は確認できます。指を指して、体もその方向に無理向けて、さらに声も出して確認しています。つまり、見る、指を指す、体を向ける、声を出すといった一連の動作を、体全体を使って確認して喚起しているのです。これをやると何もしない場合のミス防止は、1/6にできるのです。これを2回繰り返せば、1/6×1/6=1/36になります。

       

      多くの工場でTPMをやっている場面で、実際に道路の横断や設備確認などで、指差し呼称を見ることがあります。TPMをやっていても5Sが十分にできていない工場の指差し呼称は、鉄道各社の動作とかなり違うことを感じます。それは、真剣さが足らないことです。やらされ感が見え見えで、指は真っすぐでなくピンとしてなく「何々よし!」も声に出していなく、姿勢もよくありません。これではすぐにミスや災害が発生すると考ええます。現場の上司に確認すると、案の定29件や300件レベルの事故が発生していると小声で話をされます。指差し呼称といった1つの行為ですが、“細部に神々は宿る”という例えが見事に当てはまります。

       

      鉄道各社の指差し呼称が、凛とした感じに見えるのは、常に一般市民に四方八方から見られているからです。工場内は、外部の人はいません。いわゆる緊張感が薄らいでしまっているのです。自分の命は自ら守ることを、上司は恥かしがらずにもっと部下に訴えるべきだと思います。部下の人生、そしてその家族の人生も握っていると考えて行動して欲しいのです。その職場の規律は、その長にあると考えています。職場の鑑は、まさに上司の規律そのものだと考えます。 

       

      3.  ダブルチェックよりも同時チェックでさらに確実に

      ダブルチェックは、効果的な手法です。しかし、思わぬ落とし穴があります。これは筆者の体験ですが、部下にもチェックをさせたものの結構見落としがありました。なぜか一緒に考えましたら、部下は安心してチェックをして、まさかミスや抜けはないだろうと最初からそう見てチェックをしていたようです。さらに時間のズレもありました。その時にしないで、期限ぎりぎりになって慌ててチェックすることも要因でした。逆に時間的余裕、つまりゆとり必要なこともわかりました。

       

      そこで、同時チェック方式にしました。一人でなく二人に同時に時間差なしで、しかも一方が読み上げて、他方が聞きながらチェックする方法です。時々読み手と聞き手を替えて、一方的にならない工夫もします。これならある説によると、ダブルチェックのさらに1/100以下になるそうです。話半分としても効果的なやり方です。実際に色々な職場で実施してもらっていますが、ダブルチェックよりも効果があります。これに指差し呼称を2回繰り返すことで、現状よりも格段にミスを防ぐことができます。

       

      次回に続きます。

       

      【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載 

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      この記事の著者

      松田 龍太郎

      見えないコトを見えるようにする現場改善コンサルタント。ユーモアと笑顔をセットにして、元氣一杯に現地現物での指導を心がける。難しいことはわかりやすく、例え話や事例を用いながら解説し、納得してもらえるように楽しく動機付けを行います。

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