問題の顕在化とは 「5S」の目的(その3)

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【目次】

1. きれいな工場は最高のセールスマン! 「5S」の目的(その1)
2. 経営革新のための戦力の確保とは 「5S」の目的(その2)
3. 問題の顕在化とは 「5S」の目的(その3)← 今回の記事

4. 生産性向上への道筋 「5S」の目的(その4)
5. 変化に気づく感性をアップしたい 「5S」の目的(その5)
6. 清潔を維持するには 「5S」の目的(その6)
7. 見直して継続するには 「5S」の目的(その7) 

 ビジネスシーンでよく使われる「目で見る管理」という言葉をご存知でしょうか?誰が見ても、その状態が正常なのか、異常なのか、課題を可視化してひとめで判断できる職場環境づくりを意味する言葉です。「5S」活動とは、まさにこのような職場環境を作るのに絶好の手法です。

 

1.  「5S」の目的

 「5S」活動には、表面化したふたつの目的、使い方があります。ひとつめの目的は、【売上を増やして、コストを下げる】ことです。すなわち、「5S」活動とは経営に直接寄与する活動なのです。よく、「5S」は「改善」のベースであるとか、「5S」と「改善」は別物であるように言われることがありますが、これは誤りです。実際、「改善」時に行う策の多くが実は「5S」のレベルアップであると言えます。例えば、ムダを省くとは不要な作業や動作を無くすこと、すなわち整理のレベルアップを意味しており、そのために遠いものを近くに、より使いやすいようにすることは整頓のレベルアップを意味するのです。これらのことについても、解説します。

 ふたつめの目的は、経営に寄与(=ひとつめの目的)するための継続的活動を通じた、【良い組織文化の醸成】です。目的としてはむしろこちらの方が重要です。会社組織は人の集団であり、会社が変わるとは、その集団に属する人の意識が変わり、行動が変わってこそ初めて結果につながるからです。そして人の意識が変わるからこそ組織文化に変化が生じ、環境の変化に強い組織へと変わっていくのです。

 

2.「5S」定着に向けて重要なのは習慣化

 「5S」とは、上記のふたつの目的を果たすために行う活動です。どのような「あるべき姿」を描くにしろ、その土台として「5S」は必要不可欠な活動なのです。それを考えると、「5S」活動は短期的な活動ではないことがわかります。ただし、短期的に効果が表れない訳でもありません。やればやるほど、短期的にも長期的にも大きな効果が表れます。その代り、継続できなければ意味をなさない活動でもあります。○○週間ではなく、習い慣れる方の習慣化こそがこの活動の要諦となります。

 「5S」活動において往々に陥りやすいのは、手段と目的の混同です。この点を取り違えると、せっかくの活動がかえって仇となり、取組み前よりも悪くなることすらあり得ますので、注意が必要です。

 

3.ふたつの目的に対して「5S」が持つ効果

 では「5S」にはどのような効果が期待できるでしょう?「5S」活動には、そのふたつの目的である【売上を増やして、コストを下げる】と【良い組織文化の醸成】を果たすために、それぞれの目的に合致した効果があります。 

 今回は、経営に寄与する「5S」のひとつめの目的である、【売上を増やして、コストを下げる】事のうち、【コストを下げる】目的に寄与する効果③「問題の顕在化→目で見る管理の導入」について説明します。 

 

4.「5S」活動で変わること

 「5S」活動とは、職場の風景を直接変える活動だと言えます。具体的に、どのように変わるかと言いますと、まずは整理整頓で、モノの置き場・置き方・量などが変わります。それと同時に、正常・異常を判断するための基準も決まってきます。「定位・定品・定量」すなわち三定といわれる状態の確立です。これができてくると必要なモノしか置けないわけですから、在庫のムダと運搬のムダが確実に減ります。不要なものが減るわけですから当然のことです。  

 次に、決まった場所に置かれるわけですから、探す・迷う・仮置きするような動作のムダも減ります。こうして、日常の風景に溶け込んで見えなくなっていたムダが顕在化されてきます。その結果、余裕率が顕在化されて、「5S」活動の進展ともに図1のように生産性が向上してくるわけです。

三定の定義と効果図1.三定とその効果

                

 次に清掃です。「5S」活動における日常的な清掃は、保全のために最初に取り組むべき内容と重なります。設備を例にとると、                                        

(1)きれいにすることで、油漏れなどの異常が見えやすくなります。=汚れていれば、異常が見えません。         

(2)継続的に直接自らが触ることで、いち早く異常を見つけることが可能になります。=触れることが(触診)、変化を診ることにつながります。

 毎日使う道具や設備だけに、使う人が自ら清掃する=触ることでいち早く変化点に気づくことが可能になると共に、きれいだからこそ他の人でも異常に気が付きやすくなるわけです。モノ(設備や道具)は異常を声に出して訴えかけてはくれません(実は異音や振動などで変化を知らせてくれることはあります。)が、触ることでその声なき声を聴き取ることが可能となります。そして、日々の清掃という訓練が、職場の小さな変化に対する感性を鍛えてくれます。その結果、設備が壊れる前に対応することが可能となり、生産性の低下や予期せぬ怪我を防ぐことにつながっていきます。

 ここでひとつ重要なことがあります。単にきれいにするだけでは足りないということです。なぜ清掃するのか?という目的を共有することが絶対条件です。そのため、清掃の基準づくりには保全部門との連携が必要不可欠です。

 

5.5Sで問題を顕在化する

 整理・整頓・清掃という活動は、正常・異常の基準作りを意味します。このような点が、「5S」が【目で見る管理】の道具のひとつといわれる所以です。更に、正常・異常が目で見えるようになると、潜在的な...

 

【目次】

1. きれいな工場は最高のセールスマン! 「5S」の目的(その1)
2. 経営革新のための戦力の確保とは 「5S」の目的(その2)
3. 問題の顕在化とは 「5S」の目的(その3)← 今回の記事

4. 生産性向上への道筋 「5S」の目的(その4)
5. 変化に気づく感性をアップしたい 「5S」の目的(その5)
6. 清潔を維持するには 「5S」の目的(その6)
7. 見直して継続するには 「5S」の目的(その7) 

 ビジネスシーンでよく使われる「目で見る管理」という言葉をご存知でしょうか?誰が見ても、その状態が正常なのか、異常なのか、課題を可視化してひとめで判断できる職場環境づくりを意味する言葉です。「5S」活動とは、まさにこのような職場環境を作るのに絶好の手法です。

 

1.  「5S」の目的

 「5S」活動には、表面化したふたつの目的、使い方があります。ひとつめの目的は、【売上を増やして、コストを下げる】ことです。すなわち、「5S」活動とは経営に直接寄与する活動なのです。よく、「5S」は「改善」のベースであるとか、「5S」と「改善」は別物であるように言われることがありますが、これは誤りです。実際、「改善」時に行う策の多くが実は「5S」のレベルアップであると言えます。例えば、ムダを省くとは不要な作業や動作を無くすこと、すなわち整理のレベルアップを意味しており、そのために遠いものを近くに、より使いやすいようにすることは整頓のレベルアップを意味するのです。これらのことについても、解説します。

 ふたつめの目的は、経営に寄与(=ひとつめの目的)するための継続的活動を通じた、【良い組織文化の醸成】です。目的としてはむしろこちらの方が重要です。会社組織は人の集団であり、会社が変わるとは、その集団に属する人の意識が変わり、行動が変わってこそ初めて結果につながるからです。そして人の意識が変わるからこそ組織文化に変化が生じ、環境の変化に強い組織へと変わっていくのです。

 

2.「5S」定着に向けて重要なのは習慣化

 「5S」とは、上記のふたつの目的を果たすために行う活動です。どのような「あるべき姿」を描くにしろ、その土台として「5S」は必要不可欠な活動なのです。それを考えると、「5S」活動は短期的な活動ではないことがわかります。ただし、短期的に効果が表れない訳でもありません。やればやるほど、短期的にも長期的にも大きな効果が表れます。その代り、継続できなければ意味をなさない活動でもあります。○○週間ではなく、習い慣れる方の習慣化こそがこの活動の要諦となります。

 「5S」活動において往々に陥りやすいのは、手段と目的の混同です。この点を取り違えると、せっかくの活動がかえって仇となり、取組み前よりも悪くなることすらあり得ますので、注意が必要です。

 

3.ふたつの目的に対して「5S」が持つ効果

 では「5S」にはどのような効果が期待できるでしょう?「5S」活動には、そのふたつの目的である【売上を増やして、コストを下げる】と【良い組織文化の醸成】を果たすために、それぞれの目的に合致した効果があります。 

 今回は、経営に寄与する「5S」のひとつめの目的である、【売上を増やして、コストを下げる】事のうち、【コストを下げる】目的に寄与する効果③「問題の顕在化→目で見る管理の導入」について説明します。 

 

4.「5S」活動で変わること

 「5S」活動とは、職場の風景を直接変える活動だと言えます。具体的に、どのように変わるかと言いますと、まずは整理整頓で、モノの置き場・置き方・量などが変わります。それと同時に、正常・異常を判断するための基準も決まってきます。「定位・定品・定量」すなわち三定といわれる状態の確立です。これができてくると必要なモノしか置けないわけですから、在庫のムダと運搬のムダが確実に減ります。不要なものが減るわけですから当然のことです。  

 次に、決まった場所に置かれるわけですから、探す・迷う・仮置きするような動作のムダも減ります。こうして、日常の風景に溶け込んで見えなくなっていたムダが顕在化されてきます。その結果、余裕率が顕在化されて、「5S」活動の進展ともに図1のように生産性が向上してくるわけです。

三定の定義と効果図1.三定とその効果

                

 次に清掃です。「5S」活動における日常的な清掃は、保全のために最初に取り組むべき内容と重なります。設備を例にとると、                                        

(1)きれいにすることで、油漏れなどの異常が見えやすくなります。=汚れていれば、異常が見えません。         

(2)継続的に直接自らが触ることで、いち早く異常を見つけることが可能になります。=触れることが(触診)、変化を診ることにつながります。

 毎日使う道具や設備だけに、使う人が自ら清掃する=触ることでいち早く変化点に気づくことが可能になると共に、きれいだからこそ他の人でも異常に気が付きやすくなるわけです。モノ(設備や道具)は異常を声に出して訴えかけてはくれません(実は異音や振動などで変化を知らせてくれることはあります。)が、触ることでその声なき声を聴き取ることが可能となります。そして、日々の清掃という訓練が、職場の小さな変化に対する感性を鍛えてくれます。その結果、設備が壊れる前に対応することが可能となり、生産性の低下や予期せぬ怪我を防ぐことにつながっていきます。

 ここでひとつ重要なことがあります。単にきれいにするだけでは足りないということです。なぜ清掃するのか?という目的を共有することが絶対条件です。そのため、清掃の基準づくりには保全部門との連携が必要不可欠です。

 

5.5Sで問題を顕在化する

 整理・整頓・清掃という活動は、正常・異常の基準作りを意味します。このような点が、「5S」が【目で見る管理】の道具のひとつといわれる所以です。更に、正常・異常が目で見えるようになると、潜在的なリスクが可視化されて管理範囲を広げることが可能となります。正常値を外れ、異常が発生した時だけ対処すれば良いわけです。本来、管理とは異常を正常に戻すこと(復帰)と、再発防止にあります。重要なことは、誰が見ても正常・異常が判る環境をいかに作っていくかということです。そのためも、「5S」活動は最適な手段のひとつというわけです。

 自動車関連メーカーを中心に発展し、今やグローバルスタンダードになりつつある「5S」は、改善活動だけでなく、ものづくりにおける土台とも言える重要な活動ですが、うまくいっている工場は実は多くないのが実情です。「現在の5Sプロジェクトは言い換えればマンネリ化していて、今の時代に適してない」「新たな工場活動を開始して、グローバルにも展開、チェックをしたいが、どのようにすればよいか分からない」「5S活動が定着していない、後戻りしているニュアンスである、言い換えるとコスト削減に直結していない」5Sは大切でやらなくてはならないという自覚、社内の意識はありつつも、このような悩みが顕在化している工場も少なくありません。働き方改革が進む場面、製造メーカーにおいても仕事のやり方を改善していく必要があり、今こそ仕事の原点ともいうべき「5S」を実践していくことが重要です。

 

 次回は、4. 生産性向上への道筋 「5S」の目的(その4)を解説します。

 

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この記事の著者

大串 隆史

成功のカギは「現地・現物・現実」です!三つの「現」を極めて、企業の利益と競争力を増強します。

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