全体業務フロー 業務改革を実現する問題解決技法 (その4)

更新日

投稿日

【業務改革を実現する問題解決技法 連載目次】

1.仮説設定と実態調査計画

 前回のその3 事業責任者の問題認識に続いて、今回は、全体業務フローです。「事業目標と改革テーマ」の関係が明確になれば、次はどのような問題が実際に起きているのかを調査する段階となります。上層部から現場担当者まで、関係者が想定している問題にはいろいろな思い込みがあります。『問題と思っていることがどの程度悪い状況なのか』『表面的な現象ではなく、問題の真因は何なのか』を明らかにすることがまず重要です。

 このようなことは、机上の議論だけでは明らかにはなりません。実態調査が必要ですが、この時注意が必要です。『とりあえず調べてみよう、とりあえず意見を聞いてみよう』いうような“とりあえず調査”をしてしまいがちですが、これにはムダが多く、大きな手戻りが発生します。それを避けるために「実態調査計画」をきちんと作成してから取組むことが必要になります。その際の大事なポイントは「問題構造(原因→結果)」の“仮説”を設定することです。 

 仮説が単なる“思いつき仮説”とならないように、仮説設定には根拠が必要です。既存の関連資料・関連データ、事業責任者の問題認識などが材料になりますが、それに加えて関係キーパーソンの問題認識も重要な材料となります。それを収集するために実施するのが「キーパーソンインタビュー」です。そしてこれを円滑に進めるために「全体業務フロー」を作成しておくと大変役に立ちます。

 

2.全体業務フロー作成 

 全体業務フローとは、改革対象となる事業領域の全体的な業務の流れを図示したもので、作成時のポイントは以下の通りです。

業務フロー作成のポイント

 業務フロー作成は経験された方も多いと思いますが、時間をかけて作成しても、後で見てみると『枚数が多く細かい情報ばかりで、何を表しているのか理解しにくい』ということが往々にしてあります。この様な状況に陥らないために、重要な点が1つあります。それは全体業務フローについては『1枚で図示する』ということです。業務フローというものは、例え2枚であっても複数枚数になると全体像が掴めなくなります。大きくなっても全く構いませんので、『1枚で図示する』ということが非常に重要です。 

 また業務名称(例えば「部材納期確認」「製造指示」など)と共に、その業務へのインプット...

【業務改革を実現する問題解決技法 連載目次】

1.仮説設定と実態調査計画

 前回のその3 事業責任者の問題認識に続いて、今回は、全体業務フローです。「事業目標と改革テーマ」の関係が明確になれば、次はどのような問題が実際に起きているのかを調査する段階となります。上層部から現場担当者まで、関係者が想定している問題にはいろいろな思い込みがあります。『問題と思っていることがどの程度悪い状況なのか』『表面的な現象ではなく、問題の真因は何なのか』を明らかにすることがまず重要です。

 このようなことは、机上の議論だけでは明らかにはなりません。実態調査が必要ですが、この時注意が必要です。『とりあえず調べてみよう、とりあえず意見を聞いてみよう』いうような“とりあえず調査”をしてしまいがちですが、これにはムダが多く、大きな手戻りが発生します。それを避けるために「実態調査計画」をきちんと作成してから取組むことが必要になります。その際の大事なポイントは「問題構造(原因→結果)」の“仮説”を設定することです。 

 仮説が単なる“思いつき仮説”とならないように、仮説設定には根拠が必要です。既存の関連資料・関連データ、事業責任者の問題認識などが材料になりますが、それに加えて関係キーパーソンの問題認識も重要な材料となります。それを収集するために実施するのが「キーパーソンインタビュー」です。そしてこれを円滑に進めるために「全体業務フロー」を作成しておくと大変役に立ちます。

 

2.全体業務フロー作成 

 全体業務フローとは、改革対象となる事業領域の全体的な業務の流れを図示したもので、作成時のポイントは以下の通りです。

業務フロー作成のポイント

 業務フロー作成は経験された方も多いと思いますが、時間をかけて作成しても、後で見てみると『枚数が多く細かい情報ばかりで、何を表しているのか理解しにくい』ということが往々にしてあります。この様な状況に陥らないために、重要な点が1つあります。それは全体業務フローについては『1枚で図示する』ということです。業務フローというものは、例え2枚であっても複数枚数になると全体像が掴めなくなります。大きくなっても全く構いませんので、『1枚で図示する』ということが非常に重要です。 

 また業務名称(例えば「部材納期確認」「製造指示」など)と共に、その業務へのインプット情報・アウトプット情報、業務で使用しているツール名称などを明記し、使われている帳票などの現物サンプルも揃えると、全体像についての理解がより深まります。 

 この後、実態調査計画を作成する段階に入りますが、その際「業務フローの調査・分析」「三現主義(現場、現物、現実)」「事実データに基づいた定量的調査・分析」という3つのポイントがあります。この1番目のポイント「業務フローの調査・分析」の観点からも「全体業務フロー」は最低限作成すべきものとなります。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

森 史明

「会社力向上」「組織一丸で取組む業務改革」をナビゲートします!

「会社力向上」「組織一丸で取組む業務改革」をナビゲートします!


「全般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
マジックカットの意味は?誰が作った?~誕生と普及から学ぶイノベーションの鍵~

    私たちが日常で使う、カップラーメンのスープ袋やしょうゆの小分けパック。なんとも思わず手に取り、簡単に開けて使うそれらの...

    私たちが日常で使う、カップラーメンのスープ袋やしょうゆの小分けパック。なんとも思わず手に取り、簡単に開けて使うそれらの...


日本の失われた20年の原因は生産性向上の停滞が一因

円高や新興国の成長、TPPのごたごた、震災など、さまざまな要因で国内製造業には逆風が吹いています。 一橋大学林文夫教授が編集した「経済停滞の原因と制度」...

円高や新興国の成長、TPPのごたごた、震災など、さまざまな要因で国内製造業には逆風が吹いています。 一橋大学林文夫教授が編集した「経済停滞の原因と制度」...


3つの目-視点 視野 視座

 問題や課題を考える上で重要な「ものごとを観る目」として次の3つがあります。    1.視点 2.視野 3.視座   1.視点とは  目の付...

 問題や課題を考える上で重要な「ものごとを観る目」として次の3つがあります。    1.視点 2.視野 3.視座   1.視点とは  目の付...


「全般」の活用事例

もっと見る
【ものづくりの現場から】他産業技術を農業へ転用。研究・実証を重ねる中小企業の発想とは(ラジアント)

  ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組みについて取材し、ものづく...

  ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組みについて取材し、ものづく...


商品開発と補助金事例がわかるユニークな展示会を発見!

展示会名:中小企業 新ものづくり・新サービス展(場所:東京ビッグサイト) 写真1,会場入り口の様子(筆者撮影)   ものづくり専門家の大岡...

展示会名:中小企業 新ものづくり・新サービス展(場所:東京ビッグサイト) 写真1,会場入り口の様子(筆者撮影)   ものづくり専門家の大岡...


【SDGs取り組み事例】電気の「見える化」で企業の省エネ活動を支援 日本テクノ株式会社

電気代削減だけでなく、様々な面にメリットも 建物の状況に合わせ、設備機器運用を最適化することで温室効果ガスや光熱水費を抑え、省エネやCO2削減を実現...

電気代削減だけでなく、様々な面にメリットも 建物の状況に合わせ、設備機器運用を最適化することで温室効果ガスや光熱水費を抑え、省エネやCO2削減を実現...