【必要最小限の手間で行う開発の見える化 連載目次】
1.タスク・メトリクス
前回のその3に続いて解説します。プロジェクトをはじめるときにはスケジュール表を作成すると思います。スケジュール表の書き方は、作業を矢印であらわした線表だったり、ガントチャートだったりといろいろなかもしれませんが、どれも、実施すべき作業の一つひとつがいつ始まりいつ終わるのかがわかるようになっているはずです。この始まりと終わりが明確になっている一つひとつの作業を「タスク」といいますが、このタスクを見える化したものが基本メトリクスセットのひとつである「タスク・メトリクス」です。「作業要素メトリクス」といってもよいでしょう。
2. 遅れのはじまりと今後の影響
タスク(作業)の開始予定日を過ぎても着手していなかったり、完了予定日を過ぎてもその作業が継続しているような場合は、そのタスク(作業)は遅れているということになります。したがって、「今」の時点でどのタスクが遅れているのかを把握することができます。同じように、「今」の時点ですでに完了しているタスク、「今」まさに予定通りに作業をしているタスク、今後実施されるタスクがわかります。
図1のグラフは、時間軸を横軸に(週番と月を表示)にとり、その週に作業が発生するタスク数を縦軸にとったものです。棒グラフの高さはその週の作業負荷を示しており、高い棒グラフになっている週は多くの作業(タスク)をこなさなければならないことを意味します。
図1.発生するタスク数
棒グラフの色分けは、赤色のものはその週には完了している予定なのにまだ終わっていない、つまり、遅れているタスクです。青色は予定通りその週で完了したタスク、緑色は予定通り作業を進めているタスク、黄色はこれから着手するタスクです。
図1のグラフでは予定通り(オンスケジュール)の緑色が 45週(11月上旬)にあるので、ここが現在です。45週時点では棒グラフは減少傾向となっており、ほとんど作業が終わって収束に向かう計画だということがわかります。
しかし、赤色の遅れているタスクが 36週から現在まで存在していて、現時点に近づくほどその数が増えています。つまり、36週(9月上旬)に完了予定の作業が終わっておらず、その後遅れている作業は増えており、先週の44週(10月下旬)では半分以上の作業に遅れが発生しています。
さらに、赤色の遅れているタスクは 48週(11月下旬)まであらわれています。これは、今(45週時点)遅れている作業は 48週まで直接影響するものだということです。今の遅れが今後どこまで影響するのかが直感的にわかると思います。
3. 残作業メトリクス
今紹介したタスクの属性と同じものを使ったタスク・メトリクスの別の形を紹介しましょう。「残作業メトリクス」とよんでいるもので、週ごとに、その週で取り組むタスク数の合計から完了したタスク数を引いた数をプロットしたものです。
残作業作業メトリクスは、現在、いくつのタスクが未完了で残っているのかを知るとともに、これまでのその時点での残作業の推移がわかるので、その傾向からすべてのタスクが完了するのがいつになるのかを予測することができます。
図2のグラフはある製品に組み込まれるユニットの事例で、緑色の折れ線グラフはその週時点で作業が終わっていないタスクの個数実績、青色は当初の計画、ピンク色は更新した計画をあらわしています。緑色のグラフは9月下旬までなので、そこが現時点(今)です。
図2.ユニットの事例
緑色の残作業の実績を見ると、現時点(9月下旬)までのタスクの減り方から考えると、すべての作業が終わるのは 12 月下旬になりそうです。しかし、当初の計画(青色)では7月下...