物流現場での現場発信型改善は、考えさせ、変えさせる!  

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SCM

 

1. 物流現場の不便をすくい上げよう

物流現場を良くしていくためには作業者の方が普段感じていることをすくい上げることから始めるべきではないでしょうか。物流現場で働く方たちは毎日の作業の中で問題だと感じていることがいろいろとあるものと思われます。

 

ある物流センターでのピッキング作業を見ていて気づいたことがあります。この物流センターではピッキングカートにタブレット端末を付けてオーダーを見やすく表示しています。オーダーを紙で出しているところもあればハンディーターミナルで発信しているところもあります。このセンターではさらに上を行きタブレットを使っていました。

 

ここまででしたらよくある改善ですが、驚いたのは複数顧客向けを同時にピッキングしていることでした。複数の折り畳みコンテナをカートに設置しピッキングした商品をそれぞれ投入していくのです。ピッキング作業は一般的に顧客単位に行うパターンと、同じ商品をいったん集中ピッキングし顧客単位に仕分けをするパターンがあります。

 

この会社ではこの中間を行っているのです。複数の顧客が同じ商品を買うことはよくあることです。この物流センターでは同じ商品をピッキングする時にはその複数の顧客の分をピッキングし直接その顧客向けの折り畳みコンテナにその場で入れていくのです。

 

こういった発想はまさに現場から出てくるものです。一日に何度も同じ商品をピッキングするためにカートを押しながら歩行しなければならないものを何とかしたい、という要求から出てきた改善案だと推測します。同様に普段作業者の方が仕事をしている中で「やりにくい」「不便だ」と感じているところが改善の狙い目となります。

 

やっている会社は多いと思いますが「改善提案制度」でこのような不便さを抽出することも一つの手ではないでしょうか。

 

ピッキング時に何度も棚表示を確認している様子を見かけます。文字が小さくて見にくいので間違ったら大変ということで作業者は何度も確認を行っているのです。このようなケースでも文字サイズを大きくする、棚に色を付ける、通路に色を付けるといった改善方策が浮かんでくるものと思います。まずは毎日のミーティングでヒアリングしてみてはいかがでしょうか。結構作業者の皆さんから意見が出てくるかもしれません。

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2. 固定観念を取り払え

製造現場では歩行一歩の改善を、ものを取る距離を10cm短縮する改善を、愚直に積み上げて実行してきています。だからこそ日本の製造業は世界でもナンバーワンになることができたのでしょう。

 

『ちいさいことを重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道』これはイチロー選手の有名な言葉です。大きなことを達成した人の言葉ですから、ずっしりと心の中に響いてきます。私たちが物流改善を行う時もまさにこの言葉の通り小さなことを積み上げていくことが必要になります。

 

製造現場での改善は「物流改善」だとも解釈できます。部品を持って3歩歩くことも、ものを取って20cm手前に引き寄せるのも「運搬作業」だからです。私たち物流もこの考え方に学ぶ必要があります。その極意は「固定観念を捨てる」ということでしょう。

 

前述のピッキング作業、カートを押しながら歩行するという前提に立って設計されている現場がほとんどです。この物流センターでもピッキングする際には片道5歩も歩いていました。ピッキングカートが大きいために必然的に通路幅が広くなってしまっているからです。

 

大抵の物流センターではカートが2台すれ違えるように通路幅を設定しています。まずカートありきで現場設計がなされているのです。一方で製造会社のピッキングエリアは違った発想で設計されています。それは人が一人通れる広さという基準で決まってくるということです。

 

後者はそもそも歩行はムダだという発想に立っています。ですから同じピッキングエリアでも物流系と製造系でまったく違ったものができてくるということになるのです。もし製造会社にいたことのある人が物流センターで仕事をすることになったとしたらさまざまな現場発信型の改善案が出てくることでしょう。

 

もしかしたらそのセンターでまったく仕事をしたことのないアルバイトの人の方が先入観なく良い改善アイデアを発信することができるかもしれません。大切なことは「人のアイデアを否定しない」ということです。現場ではこのルールに基づき大いにディスカッションすべきだと思います。

 

昔大手調味料メーカーの女子社員が考えたある改善案で大いに売り上げを伸ばしたという話があります。誰もが思いつかないけれど納得してしまう素晴らしいアイデアでした。

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3. 作業者が現場を変える 

前述の固定観念を取り払えから、続けます。昔大手調味料メーカーの女子社員が考えたある改善案、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんがそれは「中蓋の穴径を大きくする」というものでした。そうすることで消費量が増え売り上げ増につながるというアイデアだったわけです。穴径を若干広げることで気づかぬうちに消費が増えてしまうということです。これは「なるほど!」と思ってしまう良いアイデアです。

 

このように社員からさまざまなアイデアを集めることで会社収益向上に貢献ができるわけです。ここで重要なことは大きな改善案を求めるというよりも小さくてもよいので数を集めるということではないでしょうか。

 

そこで「提案制度」が生きてくるわけです。この制度を始める際にはとにかく壁を下げることです。どんな小さなことでもよい、ただし必ず月に何件かは提出させるというルールにすることです。

 

さらに望ましいのは報奨を伴う制度にすることです。報奨はその提案の効果の大...

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1. 物流現場の不便をすくい上げよう

物流現場を良くしていくためには作業者の方が普段感じていることをすくい上げることから始めるべきではないでしょうか。物流現場で働く方たちは毎日の作業の中で問題だと感じていることがいろいろとあるものと思われます。

 

ある物流センターでのピッキング作業を見ていて気づいたことがあります。この物流センターではピッキングカートにタブレット端末を付けてオーダーを見やすく表示しています。オーダーを紙で出しているところもあればハンディーターミナルで発信しているところもあります。このセンターではさらに上を行きタブレットを使っていました。

 

ここまででしたらよくある改善ですが、驚いたのは複数顧客向けを同時にピッキングしていることでした。複数の折り畳みコンテナをカートに設置しピッキングした商品をそれぞれ投入していくのです。ピッキング作業は一般的に顧客単位に行うパターンと、同じ商品をいったん集中ピッキングし顧客単位に仕分けをするパターンがあります。

 

この会社ではこの中間を行っているのです。複数の顧客が同じ商品を買うことはよくあることです。この物流センターでは同じ商品をピッキングする時にはその複数の顧客の分をピッキングし直接その顧客向けの折り畳みコンテナにその場で入れていくのです。

 

こういった発想はまさに現場から出てくるものです。一日に何度も同じ商品をピッキングするためにカートを押しながら歩行しなければならないものを何とかしたい、という要求から出てきた改善案だと推測します。同様に普段作業者の方が仕事をしている中で「やりにくい」「不便だ」と感じているところが改善の狙い目となります。

 

やっている会社は多いと思いますが「改善提案制度」でこのような不便さを抽出することも一つの手ではないでしょうか。

 

ピッキング時に何度も棚表示を確認している様子を見かけます。文字が小さくて見にくいので間違ったら大変ということで作業者は何度も確認を行っているのです。このようなケースでも文字サイズを大きくする、棚に色を付ける、通路に色を付けるといった改善方策が浮かんでくるものと思います。まずは毎日のミーティングでヒアリングしてみてはいかがでしょうか。結構作業者の皆さんから意見が出てくるかもしれません。

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

 

2. 固定観念を取り払え

製造現場では歩行一歩の改善を、ものを取る距離を10cm短縮する改善を、愚直に積み上げて実行してきています。だからこそ日本の製造業は世界でもナンバーワンになることができたのでしょう。

 

『ちいさいことを重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道』これはイチロー選手の有名な言葉です。大きなことを達成した人の言葉ですから、ずっしりと心の中に響いてきます。私たちが物流改善を行う時もまさにこの言葉の通り小さなことを積み上げていくことが必要になります。

 

製造現場での改善は「物流改善」だとも解釈できます。部品を持って3歩歩くことも、ものを取って20cm手前に引き寄せるのも「運搬作業」だからです。私たち物流もこの考え方に学ぶ必要があります。その極意は「固定観念を捨てる」ということでしょう。

 

前述のピッキング作業、カートを押しながら歩行するという前提に立って設計されている現場がほとんどです。この物流センターでもピッキングする際には片道5歩も歩いていました。ピッキングカートが大きいために必然的に通路幅が広くなってしまっているからです。

 

大抵の物流センターではカートが2台すれ違えるように通路幅を設定しています。まずカートありきで現場設計がなされているのです。一方で製造会社のピッキングエリアは違った発想で設計されています。それは人が一人通れる広さという基準で決まってくるということです。

 

後者はそもそも歩行はムダだという発想に立っています。ですから同じピッキングエリアでも物流系と製造系でまったく違ったものができてくるということになるのです。もし製造会社にいたことのある人が物流センターで仕事をすることになったとしたらさまざまな現場発信型の改善案が出てくることでしょう。

 

もしかしたらそのセンターでまったく仕事をしたことのないアルバイトの人の方が先入観なく良い改善アイデアを発信することができるかもしれません。大切なことは「人のアイデアを否定しない」ということです。現場ではこのルールに基づき大いにディスカッションすべきだと思います。

 

昔大手調味料メーカーの女子社員が考えたある改善案で大いに売り上げを伸ばしたという話があります。誰もが思いつかないけれど納得してしまう素晴らしいアイデアでした。

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3. 作業者が現場を変える 

前述の固定観念を取り払えから、続けます。昔大手調味料メーカーの女子社員が考えたある改善案、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんがそれは「中蓋の穴径を大きくする」というものでした。そうすることで消費量が増え売り上げ増につながるというアイデアだったわけです。穴径を若干広げることで気づかぬうちに消費が増えてしまうということです。これは「なるほど!」と思ってしまう良いアイデアです。

 

このように社員からさまざまなアイデアを集めることで会社収益向上に貢献ができるわけです。ここで重要なことは大きな改善案を求めるというよりも小さくてもよいので数を集めるということではないでしょうか。

 

そこで「提案制度」が生きてくるわけです。この制度を始める際にはとにかく壁を下げることです。どんな小さなことでもよい、ただし必ず月に何件かは提出させるというルールにすることです。

 

さらに望ましいのは報奨を伴う制度にすることです。報奨はその提案の効果の大きさによって決めればよいでしょう。ただし参加賞としてわずかな金額でもよいのでどの提案に対しても与えるようにします。

 

特に優れた提案に対しては社長賞を与え、皆の前で褒めることがモチベーションアップにつながるのです。提案に対してはポイントを定め一定のポイントに達したら初段、さらに進むと2段といったように提案有段制度にするのも面白いかもしれません。

 

社員は仕事にやりがいを求めています。給与で報いることも重要です。しかしその職場で自身が貢献しているということを承認するためにはその社員発信のアイデアを採用していくことかもしれません。その現場を一番よく知っているのはそこで実際に働いている作業者の方たちです。ある程度裁量を与え、自分たちで現場を変えることができるようにすることも必要です。

 

単に日々の作業を淡々と流すだけではなく、考えさせ、変えさせる、これこそがその人たちのモチベーションを向上させる最良のしかけだと思います。皆さんの会社でも作業者の方が参加できる仕組みを導入し、どんどん現場から良いアイデアを吸い上げていきましょう。きっと会社が活性化して行くことは間違いないでしょう。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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