見積査定、経費把握の留意点 購買業務の要点(その3)

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購買業務の要点(その3)見積査定、経費把握の留意点

 

購買業務の要点(その2)原価積み上げでの価格設定に続けて、解説します。

 

7. 見積査定

サプライヤーから提出された見積価格が妥当なのか否かを検証する見積査定は、購買業務の中でもとりわけ重要とされます。この提出された価格の妥当性を調べる方法ですがいくつかのやり方があります。なず価格が高いかどうかをチェックする必要があります。

  • 【競合他社比較】:これは相見積を行うことで複数社の価格を比較する方法です。これは最も一般的かつ容易に価格の妥当性を見ることができます。
  • 【類似品実績比較】:これは同一または別サプライヤーで以前発注したことのある類似品と比較して価格の妥当性を見る方法です。
  • 【前回発注比較】:これは同じ製品をかつて発注していたのであれば、その時点からの変化を考慮し価格の妥当性を見るやり方です。
  • 【製品機能比較】:これは例えばかつて径15ミリの歯車を調達し、今回径20ミリのものを調達する場合にコアとなる径の大きさの比例分だけ価格が異なるかどうかをチェックするやり方です。
  • 【市場流通品比較】:これはマーケットリサーチや店頭販売価格、Web等で入手した価格と比較し価格の妥当性を見るやり方です。
  • 【コストテーブル比較】:これは材料費、加工費、購入部品、設備・金型・検査具の過去実績と比較して価格の妥当性を見るやり方です。

 

上記のような方法を実施して、提出された価格が高いか否かをチェックします。そしてさらに査定を行います。

 

査定の一つが「コストドライバー分析」と呼ばれるものです。これは価格の決定的な要素(コストドライバー)を見つけてそれと価格との相関から適切な価格を導く分析です。例えば電線を購入する場合を考えてみましょう。1mの電線、2mの電線、3mの電線を調達したことがあれば2.5mの電線の価格を類推できます。このケースでは「長さ」がコストドライバーということになります。これ以外に重量や体積、面積や時間など単一の要素で価格を推定できるものに関してはこのコストドライバー分析が適しているということになるのです。

 

 

8. 材料費と加工費の計算

コストドライバー分析とあわせてコスト構造分析について確認しておきましょう。

 

コスト構造には何が含まれるでしょうか。それは「材料費」「加工費」「経費」「利益」です。「材料費」は金属なのかプラスチックなのか、要はその製品をつくるための材料のコストのことです。「加工費」には工場作業者のコストと設備加工のコストのことです。設備にはプレス機や射出成型機、加工機などが含まれます。

 

材料費を求める際には製品重量プラスアルファの材料の量に基づいて計算します。たとえば100gの製品をつくる際には生産過程でのロス分を上乗せすることになります。たとえばロス分として5gを乗せて105gとするのです。さらにスクラップ分のマイナスを行います。生産過程でロスが出てもそのロス(端材)を業者に買い取ってもらうことが一般的です。このように製品重量に生産過程でのロスを加え、スクラップ分を差し引いた重量に材料重量単価をかけたものが材料費ということになります。

 

次に作業者加工費について見ていきましょう。そのために作業者の賃率を確認する必要があります。作業者の賃率には給与や賞与、社会保険や福利厚生費などさまざまな要素が含まれます。

 

これをフルコストとし、それを1秒あたりに直します。たとえばフルコストを年間800万円、年間労働時間2000時間としたら以下の通りになります。800万円÷2000時間÷60÷60=1.11円/秒 となります。作業者加工費はおおよそ1秒1円と考えればよろしいのではないでしょうか。もしその製品を加工するのに15秒かかるとすれば作業者加工費は15円ということになります。

 

次に設備加工費です。設備加工賃率は設備購入費に修繕費・税・保険を加え、それを耐用年数に稼働時間と稼働率を乗じたもので除して算出します。たとえば5千万円の設備を10年間使うとしたらどうなるでしょうか。5000万円÷(10×2000時間×60×60)=0.69円/秒

 

設備加工費は耐用年数を超えて使うことができれば償却済みとなり利益を生むことになります。

 

9.「経費」把握の留意点

経費はその製品にかかる直接・間接コストのことです。この範囲は広範かつ複雑です。会社によっても異なってきます。今回はこの経費を見ていきましょう。製品にかかる直接・間接コストとしての経費をではどのように積み上げていったらよいのでしょうか。この経費は複雑な積み上げを試みるよりも一般的にやられている方法を踏襲することが賢明です。

 

そのやり方とは「材料費」「加工費」に一定率を乗じるという方法です。たとえば経費率は10%と決め、それを乗じるというやり方です。ただし経費に含まれる要素として「梱包材料費」と「運送費」があります。これについては見積もることはそれほど難しいことではないので、きちんと見積金額を入れてもらうようにしましょう。

 

購買では先々購買原低(購買コストの削減)活動が行われます。その際に材料VAや加工VAだけでは追いつかなくなる可能性があるのです。そうなると当然の行きつく先として「物流原低」に目が行くわけです。その時にどれくらいの改善オポチュニティがあるかどうかはこの「梱包材料費」と「運送費」を見ることによって判断できます。

 

もし将来的に自社で製品をサプライヤーまで引き取りに行くことを考えているのであれば尚更です。この「梱包材料費」と「運送費」が自社引き取りの際の原資になるのですから。単純に運送だけを自社...

購買業務の要点(その3)見積査定、経費把握の留意点

 

購買業務の要点(その2)原価積み上げでの価格設定に続けて、解説します。

 

7. 見積査定

サプライヤーから提出された見積価格が妥当なのか否かを検証する見積査定は、購買業務の中でもとりわけ重要とされます。この提出された価格の妥当性を調べる方法ですがいくつかのやり方があります。なず価格が高いかどうかをチェックする必要があります。

  • 【競合他社比較】:これは相見積を行うことで複数社の価格を比較する方法です。これは最も一般的かつ容易に価格の妥当性を見ることができます。
  • 【類似品実績比較】:これは同一または別サプライヤーで以前発注したことのある類似品と比較して価格の妥当性を見る方法です。
  • 【前回発注比較】:これは同じ製品をかつて発注していたのであれば、その時点からの変化を考慮し価格の妥当性を見るやり方です。
  • 【製品機能比較】:これは例えばかつて径15ミリの歯車を調達し、今回径20ミリのものを調達する場合にコアとなる径の大きさの比例分だけ価格が異なるかどうかをチェックするやり方です。
  • 【市場流通品比較】:これはマーケットリサーチや店頭販売価格、Web等で入手した価格と比較し価格の妥当性を見るやり方です。
  • 【コストテーブル比較】:これは材料費、加工費、購入部品、設備・金型・検査具の過去実績と比較して価格の妥当性を見るやり方です。

 

上記のような方法を実施して、提出された価格が高いか否かをチェックします。そしてさらに査定を行います。

 

査定の一つが「コストドライバー分析」と呼ばれるものです。これは価格の決定的な要素(コストドライバー)を見つけてそれと価格との相関から適切な価格を導く分析です。例えば電線を購入する場合を考えてみましょう。1mの電線、2mの電線、3mの電線を調達したことがあれば2.5mの電線の価格を類推できます。このケースでは「長さ」がコストドライバーということになります。これ以外に重量や体積、面積や時間など単一の要素で価格を推定できるものに関してはこのコストドライバー分析が適しているということになるのです。

 

 

8. 材料費と加工費の計算

コストドライバー分析とあわせてコスト構造分析について確認しておきましょう。

 

コスト構造には何が含まれるでしょうか。それは「材料費」「加工費」「経費」「利益」です。「材料費」は金属なのかプラスチックなのか、要はその製品をつくるための材料のコストのことです。「加工費」には工場作業者のコストと設備加工のコストのことです。設備にはプレス機や射出成型機、加工機などが含まれます。

 

材料費を求める際には製品重量プラスアルファの材料の量に基づいて計算します。たとえば100gの製品をつくる際には生産過程でのロス分を上乗せすることになります。たとえばロス分として5gを乗せて105gとするのです。さらにスクラップ分のマイナスを行います。生産過程でロスが出てもそのロス(端材)を業者に買い取ってもらうことが一般的です。このように製品重量に生産過程でのロスを加え、スクラップ分を差し引いた重量に材料重量単価をかけたものが材料費ということになります。

 

次に作業者加工費について見ていきましょう。そのために作業者の賃率を確認する必要があります。作業者の賃率には給与や賞与、社会保険や福利厚生費などさまざまな要素が含まれます。

 

これをフルコストとし、それを1秒あたりに直します。たとえばフルコストを年間800万円、年間労働時間2000時間としたら以下の通りになります。800万円÷2000時間÷60÷60=1.11円/秒 となります。作業者加工費はおおよそ1秒1円と考えればよろしいのではないでしょうか。もしその製品を加工するのに15秒かかるとすれば作業者加工費は15円ということになります。

 

次に設備加工費です。設備加工賃率は設備購入費に修繕費・税・保険を加え、それを耐用年数に稼働時間と稼働率を乗じたもので除して算出します。たとえば5千万円の設備を10年間使うとしたらどうなるでしょうか。5000万円÷(10×2000時間×60×60)=0.69円/秒

 

設備加工費は耐用年数を超えて使うことができれば償却済みとなり利益を生むことになります。

 

9.「経費」把握の留意点

経費はその製品にかかる直接・間接コストのことです。この範囲は広範かつ複雑です。会社によっても異なってきます。今回はこの経費を見ていきましょう。製品にかかる直接・間接コストとしての経費をではどのように積み上げていったらよいのでしょうか。この経費は複雑な積み上げを試みるよりも一般的にやられている方法を踏襲することが賢明です。

 

そのやり方とは「材料費」「加工費」に一定率を乗じるという方法です。たとえば経費率は10%と決め、それを乗じるというやり方です。ただし経費に含まれる要素として「梱包材料費」と「運送費」があります。これについては見積もることはそれほど難しいことではないので、きちんと見積金額を入れてもらうようにしましょう。

 

購買では先々購買原低(購買コストの削減)活動が行われます。その際に材料VAや加工VAだけでは追いつかなくなる可能性があるのです。そうなると当然の行きつく先として「物流原低」に目が行くわけです。その時にどれくらいの改善オポチュニティがあるかどうかはこの「梱包材料費」と「運送費」を見ることによって判断できます。

 

もし将来的に自社で製品をサプライヤーまで引き取りに行くことを考えているのであれば尚更です。この「梱包材料費」と「運送費」が自社引き取りの際の原資になるのですから。単純に運送だけを自社で行うのであれば「運送費」が原資になります。見積もり時にあらかじめ把握しておくことによって自社で引き取り物流を行うメリットも判断できます。

 

現在引き取り物流を行おうとして失敗しているあるいは着手できずにいる会社の多くは「運送費」を認識していないことにあります。ですからサプライヤーからは現実よりも低い運送費を提示されてしまい、実際には儲からない引き取り物流にならざるを得ないのです。

 

購買担当者であればサプライヤーの損益計算書を見ておく必要があります。「材料費」と「加工費」は損益計算書の中の「売上原価」に入っています。したがってその会社の経費、利益を見たければ「売上総利益」、つまり粗利益をチェックすればよいことになります。

 

購買担当者は査定を行うに当たってはこういった周辺の数字についてもチェックしておくようにしたいものです。

 

次回に続きます。

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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