難易度の高い開発テーマに品質工学を活用して事業化まで成功するには

投稿日

難易度の高い開発テーマに品質工学を活用して事業化まで成功するには

◆ 急がば回れ

品質工学のパラメータ設計は失敗したときこそ価値があるというように言われることがありますが,その意味を理解し,さらには納得するのは難しいと思います.

 

加法性の悪い評価特性を使っているために強い交互作用の影響を受けてしまい開発が混乱しているケースや開発目標を達成できる可能性があるとは思えないシステムを対象に一因子実験を継続しているケースをたくさん見てきました.このような状況にある開発テーマの担当者やマネジャーの方々に対して,評価特性の見直しやシステムの再選択の必要性を判断をすることを目的にパラメータ設計の実施を提案しても快く受け入れてくれるケースは少ないかと思います.

 

難易度の高い開発テーマに品質工学を活用し,事業化まで成功したテーマを振り返ると,そこにはいくつかの共通点があります.その一つが”急がば回れ”のアプローチを受け入れることです.

 

多くの開発テーマでは,顕在化している複数の問題の中から一つの問題を取り上げて,その対策実験を実施し,その問題の対策の目途がついたら今度は別の問題対策に移るというやり方です.これは一見すると着実に一歩一歩前進しているように感じますが,前述したような交互作用が強いシステムや加法性のない評価特性をものさしにした開発では以前に対策したはずの問題が再発してしまい,開発現場が一種の混乱状態になり,方向感のない試行錯誤が繰り返されることになってしまうのです.

 

複数の目的特性の間にトレードオフ関係が潜んでいる場合も同様な混乱状態に陥る危険性が高くなります.このような状況にある開発テーマに対して顕在化した問題を早期に対策するためのパラメータ設計を実施することも可能です.そのような部分最適化のアプローチでも実験の効率化は達成できますが,開発をゴールに導く原動力にはなりません.今のシステムや評価特性を見直す必要性を判断するためのパラメータ設計を実施することで開発全体が大きく前進するのですが,それを失敗するためのパラメータ設計とは呼ばずに,急がば回れのパラメータ設計と呼ぶのはいかがでしょうか.さらに,今のシステムには解がない,あるいは機能定義が不適切という結論を得るだけではなく,新たなシステム構造や機能を考案するための技術情報を得るためにCS-T法を活用することを推奨します.

 

【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾に...

難易度の高い開発テーマに品質工学を活用して事業化まで成功するには

◆ 急がば回れ

品質工学のパラメータ設計は失敗したときこそ価値があるというように言われることがありますが,その意味を理解し,さらには納得するのは難しいと思います.

 

加法性の悪い評価特性を使っているために強い交互作用の影響を受けてしまい開発が混乱しているケースや開発目標を達成できる可能性があるとは思えないシステムを対象に一因子実験を継続しているケースをたくさん見てきました.このような状況にある開発テーマの担当者やマネジャーの方々に対して,評価特性の見直しやシステムの再選択の必要性を判断をすることを目的にパラメータ設計の実施を提案しても快く受け入れてくれるケースは少ないかと思います.

 

難易度の高い開発テーマに品質工学を活用し,事業化まで成功したテーマを振り返ると,そこにはいくつかの共通点があります.その一つが”急がば回れ”のアプローチを受け入れることです.

 

多くの開発テーマでは,顕在化している複数の問題の中から一つの問題を取り上げて,その対策実験を実施し,その問題の対策の目途がついたら今度は別の問題対策に移るというやり方です.これは一見すると着実に一歩一歩前進しているように感じますが,前述したような交互作用が強いシステムや加法性のない評価特性をものさしにした開発では以前に対策したはずの問題が再発してしまい,開発現場が一種の混乱状態になり,方向感のない試行錯誤が繰り返されることになってしまうのです.

 

複数の目的特性の間にトレードオフ関係が潜んでいる場合も同様な混乱状態に陥る危険性が高くなります.このような状況にある開発テーマに対して顕在化した問題を早期に対策するためのパラメータ設計を実施することも可能です.そのような部分最適化のアプローチでも実験の効率化は達成できますが,開発をゴールに導く原動力にはなりません.今のシステムや評価特性を見直す必要性を判断するためのパラメータ設計を実施することで開発全体が大きく前進するのですが,それを失敗するためのパラメータ設計とは呼ばずに,急がば回れのパラメータ設計と呼ぶのはいかがでしょうか.さらに,今のシステムには解がない,あるいは機能定義が不適切という結論を得るだけではなく,新たなシステム構造や機能を考案するための技術情報を得るためにCS-T法を活用することを推奨します.

 

【出典】QECompass HPより、筆者のご承諾により編集して掲載

◆[エキスパート会員インタビュー記事] 品質工学の魅力とその創造性への影響(細川 哲夫 氏

 

◆関連解説記事:品質工学による技術開発 【連載記事紹介】

◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!
 【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

細川 哲夫

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。

お客様の期待を超える感動品質を備えた製品を継続して提供するために、創造性と効率性を両立した新しい品質工学を一緒に活用しましょう。


「品質工学(タグチメソッド)総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
機能性評価のための工夫の例 品質工学による技術開発(その14)

  ◆機能性評価のための工夫の例 1.はじめに 本連載の(その9)から光ディスクの光学ヘッドの部品の固定に使われる接着剤の技術開発の事...

  ◆機能性評価のための工夫の例 1.はじめに 本連載の(その9)から光ディスクの光学ヘッドの部品の固定に使われる接着剤の技術開発の事...


信号の大きさによる影響 エネルギー比型SN比とは (その5)

4. エネルギー比型SN比の検証 4.1. 従来のSN比の課題(1) ~信号の大きさによる影響~  エネルギー比型SN比は、式の形から分かりますように...

4. エネルギー比型SN比の検証 4.1. 従来のSN比の課題(1) ~信号の大きさによる影響~  エネルギー比型SN比は、式の形から分かりますように...


SN比と感度の総括 品質工学の動特性における安定性評価について(その3)

 品質工学の動特性における安定性評価について【 目 次 】    【その1】     1. 動特性とは    2. 繰り返しデータの事例でのSN比と感...

 品質工学の動特性における安定性評価について【 目 次 】    【その1】     1. 動特性とは    2. 繰り返しデータの事例でのSN比と感...


「品質工学(タグチメソッド)総合」の活用事例

もっと見る
品質問題を未然防止するタグチメソッドの適用事例 

  1.  タグチメソッド ~ 仕組み以前にコンセプトが理解しにくい  以前3回にわたって「考え方」「機能性評価」「直交表」につい...

  1.  タグチメソッド ~ 仕組み以前にコンセプトが理解しにくい  以前3回にわたって「考え方」「機能性評価」「直交表」につい...


狩野モデルで説明する品質工学(その2)

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 品質工学会の技術向上委員会で品質工学とその関連分野の用語を...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 品質工学会の技術向上委員会で品質工学とその関連分野の用語を...


基本機能の定義と狙い、品質工学の骨格に位置づけられる概念とは

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 基本機能は品質工学の骨格に位置づけられる概念といっても過言...

【目次】 ▼さらに深く学ぶなら!「品質工学」に関するセミナーはこちら! 基本機能は品質工学の骨格に位置づけられる概念といっても過言...