物流アウトソースにあたっての留意点 (その1)

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1. 物流アウトソースのメリットとデメリット

SCM
 皆さんの会社では何かしらの物流業務のアウトソース(外注化)を行っているのではないでしょうか。この物流アウトソースにあたり注意すべきポイントについて解説します。何かしらの物流業務をアウトソースしている会社はある統計によると3割強あるそうです。この物流アウトソースの結果としてのメリットを調べてみると、次のような点が浮かび上がってきます。以下経済産業省のアンケート結果から見ていきたいと思います。カッコ内の数値は複数回答を含めた回答率です。
 
・コストの明確化ができた(44.9%)
・コストの削減ができた(38.5%)
・物流改善、効率化が進んだ(22.8%)
・人員の削減ができた(22.5%)
 
 言うなればこういった点が企業が物流アウトソースを実施する狙いにもなってくると考えられます。しかし一方でアウトソースのデメリットが存在することも知っておかなければなりません。その点については主に次のような項目が挙げられます。
 
・従来内部で実施していた業務が外部化されることから、業務内の機密やノウハウが漏えいすること
 への懸念。
・当該業務が外部化されるため、それを理解できるスタッフが社内にいなくなること(業務のブラッ
 クボックス化)への懸念。
・導入部署での人員削減にともなうモラルの低下。
・きめ細い物流サービスが困難になるなどのサービス水準低下への懸念。
 
 アウトソースはメリットもあればデメリットもあるということです。つまりすべてがうまくいくとは限らないのですよね。この点は十分に注意しなければなりません。物流を外部の業者に委託するか、社内で実施するかの判断の背景には物流に対する考え方があると思います。この点についても「経営戦略における物流の位置づけ」としてのデータから確認をしておきましょう。
 
・コストダウン重視の業務(52.6%)
・製品品質と並んで重要業務(22.6%)
・特に重視していない業務(22.2%)
 
 これらのデータからはどちらかというと物流はサプライチェーンにおける重要業務にもかかわらず、コストという認識が強いように見受けられます。そのコストを下げるためにアウトソースを行うという企業が多いようです。
 

2. 物流アウトソース:相手に物流情報を伝える

 再三申し上げていることですが、物流はサプライチェーン全体の効率化のカギを握っています。これを単に物流を「点」としてだけ見ているのであれば、効率的なサプライチェーン運営は難しいと言わざるを得ません。そうは言っても物流コストを下げる活動は重要であることに変わりはありません。物流の工程上にムダがあるのであればそれを極力排除していく取り組みが必要であることは言うまでもありません。しかし注意すべき点は、物流アウトソースを実施することが物流のムダ排除に直接的につながるとは言い切れないことです。経済産業省のアンケート結果にもありますが、アウトソースのメリットはなかったという回答が6.6%もあるのです。なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。アウトソースを失敗に終わらせないためには事前準備が必要であることを知っておきましょう。
 
 言うまでもありませんが、どの業務を外部業者に委託したいのか、その業務の条件はどうなっているのかという物流情報についてアウトソースの際に相手に伝えなければならないのです。意外とこれができていない会社が多いのです。皆さんも一度考えてみて下さい。仕事を受託する側に立って今伝えている情報が十分かどうかを考えてみるのです。物流業務を外注化する場合、やっ...

1. 物流アウトソースのメリットとデメリット

SCM
 皆さんの会社では何かしらの物流業務のアウトソース(外注化)を行っているのではないでしょうか。この物流アウトソースにあたり注意すべきポイントについて解説します。何かしらの物流業務をアウトソースしている会社はある統計によると3割強あるそうです。この物流アウトソースの結果としてのメリットを調べてみると、次のような点が浮かび上がってきます。以下経済産業省のアンケート結果から見ていきたいと思います。カッコ内の数値は複数回答を含めた回答率です。
 
・コストの明確化ができた(44.9%)
・コストの削減ができた(38.5%)
・物流改善、効率化が進んだ(22.8%)
・人員の削減ができた(22.5%)
 
 言うなればこういった点が企業が物流アウトソースを実施する狙いにもなってくると考えられます。しかし一方でアウトソースのデメリットが存在することも知っておかなければなりません。その点については主に次のような項目が挙げられます。
 
・従来内部で実施していた業務が外部化されることから、業務内の機密やノウハウが漏えいすること
 への懸念。
・当該業務が外部化されるため、それを理解できるスタッフが社内にいなくなること(業務のブラッ
 クボックス化)への懸念。
・導入部署での人員削減にともなうモラルの低下。
・きめ細い物流サービスが困難になるなどのサービス水準低下への懸念。
 
 アウトソースはメリットもあればデメリットもあるということです。つまりすべてがうまくいくとは限らないのですよね。この点は十分に注意しなければなりません。物流を外部の業者に委託するか、社内で実施するかの判断の背景には物流に対する考え方があると思います。この点についても「経営戦略における物流の位置づけ」としてのデータから確認をしておきましょう。
 
・コストダウン重視の業務(52.6%)
・製品品質と並んで重要業務(22.6%)
・特に重視していない業務(22.2%)
 
 これらのデータからはどちらかというと物流はサプライチェーンにおける重要業務にもかかわらず、コストという認識が強いように見受けられます。そのコストを下げるためにアウトソースを行うという企業が多いようです。
 

2. 物流アウトソース:相手に物流情報を伝える

 再三申し上げていることですが、物流はサプライチェーン全体の効率化のカギを握っています。これを単に物流を「点」としてだけ見ているのであれば、効率的なサプライチェーン運営は難しいと言わざるを得ません。そうは言っても物流コストを下げる活動は重要であることに変わりはありません。物流の工程上にムダがあるのであればそれを極力排除していく取り組みが必要であることは言うまでもありません。しかし注意すべき点は、物流アウトソースを実施することが物流のムダ排除に直接的につながるとは言い切れないことです。経済産業省のアンケート結果にもありますが、アウトソースのメリットはなかったという回答が6.6%もあるのです。なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。アウトソースを失敗に終わらせないためには事前準備が必要であることを知っておきましょう。
 
 言うまでもありませんが、どの業務を外部業者に委託したいのか、その業務の条件はどうなっているのかという物流情報についてアウトソースの際に相手に伝えなければならないのです。意外とこれができていない会社が多いのです。皆さんも一度考えてみて下さい。仕事を受託する側に立って今伝えている情報が十分かどうかを考えてみるのです。物流業務を外注化する場合、やってはいけないこと、それは「相手はプロだから詳しく説明しなくても大丈夫だろう」と勝手に解釈することです。
 
 社内に物流に詳しい人がいないからアウトソースする、という会社も少なくありません。しかしだからといってアウトソースすれば物流業務がうまくいくとは限りません。むしろ曖昧なまま発注し、お金をムダにしてしまったというようなことになりかねないのです。ではどうしたら良いでしょうか。今の物流業務をしっかりと整理することから始めましょう。それを基にアウトソース先に提示する仕様書を作成するのです。このプロセス抜きにアウトソースすることは危険です。また、物流会社に現場を見せるだけで発注することも避けた方が良いでしょう。繰り返しになりますが、相手に十分な情報を伝えることなしにアウトソースが成功する保証はありません。
 
 次回は、物流契約の締結について、解説します。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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