1. WMSのカバー領域
物流センターで必要となるマネジメントとは何でしょうか。顧客の製品の入出庫管理は当然として、顧客の在庫管理や預かり品の品質管理などには取り組まれているのではないでしょうか。その一方で、自社の収益管理や労働生産性管理などについてはいかがでしょうか。センター長が自分のセンターが儲かっているのかどうなのかについては当然わかっていなければならないのですが。財務会計の結果が本社の経理から送られてきて初めて「こんな状態だったのか」と驚かれることもあるでしょう。しかし、それでは遅すぎるのではないでしょうか。物流センターの収支はおおよそでもよいので、毎日の結果が翌日にわかるようにはしたいものです。
収益にも影響する一因としての要員管理についても同様です。予定以上に労務コストが伸びてしまっている場合には残業の取りやめや、パートさんの時間短縮などで対応したいものです。そのためにも現時点での物流センターの収支は必要なのです。最悪なのは収支状況に気づかずに、そのまま月末までやり過ごしてしまうことです。月の途中で収支を認識していれば打つ手があったものを、やり過ごすことで傷口を広げてしまうことが実際にあるのではないでしょうか。物流センターをマネジメントするツールとしてWMS(Warehouse management system)があります。ではこのツールでセンターがマネジメントするべき項目のどこまでをカバーしているでしょうか。
大抵のWMSでは「もの」の管理はできたとしても、それ以外の重要要素である「人」や「金」の管理はできないことが一般的です。何故なら物流センターとして「人」や「金」の管理が必要であるというニーズが少ないからでしょう。そのためシステムベンダーがこういった領域を織り込んでいないことが考えられそうです。
2. 物流労働生産性管理
「金」のマネジメントと同じくらい物流業で弱いのが「人」のマネジメントではないでしょうか。どこの物流センターに行っても「人」のマネジメントが十分に行われている状況に遭遇することがありません。たとえば、本日の庫内作業への投入人員です。この人員は何に基づいて算出されているのでしょうか。顧客からもらった月間予定数量に基づいて計算して求めている事例は多くありません。センター長の勘によるものであるケースがほとんどであるという状況には驚きです。センター長も人員が不足して仕事に支障を出すことは避けたいため、大抵多めの人員が投入されています。その結果として、作業充実度が低く、作業スピードも緩慢です。こういったマネジメントの仕方では当然のことながら収益率が低くならざるを得ません。
その日にならなければ何人必要かがわからない、という話を耳にすることがあります。つまり顧客からの確定オーダーが入った後でないと必要人員が決まらないという主張です。これは一理あるように聞こえますが、正しくありません。顧客から月間オーダーを入手する、過去のデータから推測するなどの手を打っていないからです。行き当たりばったりの人員管理ではマネジメントとは呼べません。ということで、データに基づく人の確保や労働時間を何時間にするかなどの人員計画が必要となってくるのです。計画段階の人員管理は仕事量に対して何時間で仕事を仕上げてもらうかをマネジメントします。そして結果が計画時間通りだったかについても常にウオッチすることが求められます。
これに適したツールが『物流標準時間』です。ピースピッキングでは、1ピースで0.2分、ケースピッキングでは、1ケース0.6分といった時間原単位を設定することが必要になってくるのです。
3. 物流作業編成の組み方
いつも申し上げていることですが、物流作業を作業者任せにはしてはなりません。特に仕事のペースを作業者に任せてしまうと作業者は自分の持ち時間を目いっぱい使って仕事をやろうとします。極端な例かもしれませんが、同じ分量の仕事をある時は4時間で行い、別の時には8時間で実施します。なぜなら作業者は仕事をせずに手待ちになっている状態を嫌うからです。仕事が無いときもあたかも仕事をしているように動き回るのが作業者心理というものです。しかしこのような人のマネジメントができていないことに起因する損失は大きいものとなります。
先の事例のように本来なら4時間でできる仕事を8時間かけられてしまうと、実質倍の人員が必要になるからです。物流センターの労務費が本当は今の半分でできるということが分かったとしたら皆さんはどのように感じられ...