人的資源マネジメント:効率的で実践的な進捗管理とは(その5)

更新日

投稿日

 前回は、必要最小限の手間で効率的なメトリクス管理を実現するための3つの技法のうち、2軸管理と基本メトリクスセットについて、進捗管理を中心に事例を紹介しました。進捗管理というと EVM(※1) を利用することが多いかもしれませんが、手間をかけずにわかりやすい進捗管理の仕組みが整備できることをわかっていただけたと思います。(※1)作業の到達度を金銭などの価値に換算したEV(Earned Value:出来高)という概念で把握する方式。
 
 今回は、前回説明できなかった3つの技法の最後となる基準モデルを、事例を交えながら紹介しています。
 
 図101 は不具合ライフタイムとよんでいるグラフで、ある製造装置の開発プロジェクトのデータです。検出された不具合について、発見から修正完了までの期間を不具合が生きている期間(ライフタイム)と考えてその日数を横軸にとり、その日数ごとの不具合件数を縦軸にとっています。
 
 これもどのような組織でも同じような傾向になるのですが、このメーカーの場合は不具合ライフタイムはうまくマネジメントされているプロジェクトの場合には橙色の線であらわしているようなパターンになっています。この橙色の基準モデルとプロジェクトでの実績値とを比較することにより、テストをやり直す必要があるのか、設計から見直す必要があるのかなどを判断することができます。
 
 人的資源マネジメント:ポジティブ感情図101. 不具合ライフタイムの基準モデル
 
 図102 は開発工程別の工数比率であり、ある製品に部品を供給しているベンダーの実績を比較したものです。これらのベンダーの部品開発の中で納期や品質が高かったものをそのベンダーの代表値としています。したがって、基準モデルと比較することにより、各ベンターの実力や強味・弱味を客観的に判断することができます。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図102. 工数比例の基準モデル
 

4. メトリクス管理の成果

 
 紹介した3つの技法にもとづいたメトリクス管理の仕組みができれば、総合的な開発マネジメント改善につながり、QCD のいずれにも改善効果が期待できます。これまでにメトリクス管理の仕組みを構築することで実現した成果の一例を図103に示しています。開発マネジメントを大きく改善する仕組みであることがわかると思います。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図103. メトリクス管理の成果
 
 さて、メトリクス管理について紹介しましたが、いかがだったでしょう...
 前回は、必要最小限の手間で効率的なメトリクス管理を実現するための3つの技法のうち、2軸管理と基本メトリクスセットについて、進捗管理を中心に事例を紹介しました。進捗管理というと EVM(※1) を利用することが多いかもしれませんが、手間をかけずにわかりやすい進捗管理の仕組みが整備できることをわかっていただけたと思います。(※1)作業の到達度を金銭などの価値に換算したEV(Earned Value:出来高)という概念で把握する方式。
 
 今回は、前回説明できなかった3つの技法の最後となる基準モデルを、事例を交えながら紹介しています。
 
 図101 は不具合ライフタイムとよんでいるグラフで、ある製造装置の開発プロジェクトのデータです。検出された不具合について、発見から修正完了までの期間を不具合が生きている期間(ライフタイム)と考えてその日数を横軸にとり、その日数ごとの不具合件数を縦軸にとっています。
 
 これもどのような組織でも同じような傾向になるのですが、このメーカーの場合は不具合ライフタイムはうまくマネジメントされているプロジェクトの場合には橙色の線であらわしているようなパターンになっています。この橙色の基準モデルとプロジェクトでの実績値とを比較することにより、テストをやり直す必要があるのか、設計から見直す必要があるのかなどを判断することができます。
 
 人的資源マネジメント:ポジティブ感情図101. 不具合ライフタイムの基準モデル
 
 図102 は開発工程別の工数比率であり、ある製品に部品を供給しているベンダーの実績を比較したものです。これらのベンダーの部品開発の中で納期や品質が高かったものをそのベンダーの代表値としています。したがって、基準モデルと比較することにより、各ベンターの実力や強味・弱味を客観的に判断することができます。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図102. 工数比例の基準モデル
 

4. メトリクス管理の成果

 
 紹介した3つの技法にもとづいたメトリクス管理の仕組みができれば、総合的な開発マネジメント改善につながり、QCD のいずれにも改善効果が期待できます。これまでにメトリクス管理の仕組みを構築することで実現した成果の一例を図103に示しています。開発マネジメントを大きく改善する仕組みであることがわかると思います。
 
人的資源マネジメント:ポジティブ感情図103. メトリクス管理の成果
 
 さて、メトリクス管理について紹介しましたが、いかがだったでしょうか。メトリクス管理の仕組みで大切なのは1日でも早くデータを収集し蓄積することです。メトリクス管理の仕組みは地道にPDCAサイクルを回すことが大切で、それにはまずデータを収集・蓄積することからです。まだ、取り組んでいなかったり、手間ばかりかかって大変だというところはぜひ、今回の3つの技法によるメトリクス管理を検討してみてください。
 
  

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術士第二次試験対策:論文を時間内に書くための時間管理方法(その1)

  「解答がわかっていたが、それを時間内で書くことができなかった」という受験生の声を何度が聞いたことがあります。頭の中に60点以上の解答が...

  「解答がわかっていたが、それを時間内で書くことができなかった」という受験生の声を何度が聞いたことがあります。頭の中に60点以上の解答が...


中国工場の実状を知る、管理者について 中国工場の品質改善(その10)

  【第2章 中国工場の実状を知る】  前回のその9に続いて解説します。   【管理者】  ここで言う管理者とは、呼び方...

  【第2章 中国工場の実状を知る】  前回のその9に続いて解説します。   【管理者】  ここで言う管理者とは、呼び方...


教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成(その4)

【教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成 連載目次】 1. 教育の目的・対象 2. 信賞必罰でメリハリをつけるための信賞必罰制度を運用する仕...

【教育システムの設計:多能工・技能工人材の育成 連載目次】 1. 教育の目的・対象 2. 信賞必罰でメリハリをつけるための信賞必罰制度を運用する仕...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:技術者育成のパフォーマンス(その5)

  ◆ 個人と組織とのエンゲージメント    前回は、よい製品やよいサービスを作る仕組みづくりにばかりに注力した結果、技術者やリ...

  ◆ 個人と組織とのエンゲージメント    前回は、よい製品やよいサービスを作る仕組みづくりにばかりに注力した結果、技術者やリ...


『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その28)

 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる...

 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる...


人的資源マネジメント:目的(その3)

【内発的動機づけの要素である「目的」連載目次】 1. 内発的動機づけの要素である「目的」と「目標」の違いを考える 2. 本源的な質問に答えてわかる...

【内発的動機づけの要素である「目的」連載目次】 1. 内発的動機づけの要素である「目的」と「目標」の違いを考える 2. 本源的な質問に答えてわかる...