前回は、必要最小限の手間で効率的なメトリクス管理を実現するための3つの技法のうち、2軸管理と基本メトリクスセットについて、進捗管理を中心に事例を紹介しました。進捗管理というと EVM(※1) を利用することが多いかもしれませんが、手間をかけずにわかりやすい進捗管理の仕組みが整備できることをわかっていただけたと思います。(※1)作業の到達度を金銭などの価値に換算したEV(Earned Value:出来高)という概念で把握する方式。
今回は、前回説明できなかった3つの技法の最後となる基準モデルを、事例を交えながら紹介しています。
図101 は不具合ライフタイムとよんでいるグラフで、ある製造装置の開発プロジェクトのデータです。検出された不具合について、発見から修正完了までの期間を不具合が生きている期間(ライフタイム)と考えてその日数を横軸にとり、その日数ごとの不具合件数を縦軸にとっています。
これもどのような組織でも同じような傾向になるのですが、このメーカーの場合は不具合ライフタイムはうまくマネジメントされているプロジェクトの場合には橙色の線であらわしているようなパターンになっています。この橙色の基準モデルとプロジェクトでの実績値とを比較することにより、テストをやり直す必要があるのか、設計から見直す必要があるのかなどを判断することができます。
図101. 不具合ライフタイムの基準モデル
図102 は開発工程別の工数比率であり、ある製品に部品を供給しているベンダーの実績を比較したものです。これらのベンダーの部品開発の中で納期や品質が高かったものをそのベンダーの代表値としています。したがって、基準モデルと比較することにより、各ベンターの実力や強味・弱味を客観的に判断することができます。
図102. 工数比例の基準モデル
4. メトリクス管理の成果
紹介した3つの技法にもとづいたメトリクス管理の仕組みができれば、総合的な開発マネジメント改善につながり、QCD のいずれにも改善効果が期待できます。これまでにメトリクス管理の仕組みを構築することで実現した成果の一例を図103に示しています。開発マネジメントを大きく改善する仕組みであることがわかると思います。
図103. メトリクス管理の成果
さて、メトリクス管理について紹介しましたが、いかがだったでしょう...