商品力の強化と商品開発の方向性 (その2)

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【商品力の強化と商品開発の方向性 連載目次】

 

1. 商品のライフサイクルと次期商品の開発

 
 商品力を強化するためには、マーケティングや企業の持つ技術から販売に至るまで、多方面の視点から検討する必要があります。今回は商品力を強化する一角をなす「商品ライフサイクルと商品開発」について解説します。商品には現物が存在するハードウェアと無形のサービスとしてソフトウェアなどがありますが、ここではその両方を「商品」として説明します。
 

1.1 ライフサイクル

 
 ライフサイクルについては、前回(その1)で説明しましたが再述しますと、マーケティングの分野で言うライフサイクルは次の2つに定義があります。
 
 ① 製品を世にだす商品企画から販売中止までの過程。即ち、「商品企画、製品開発、生産、販売、販売中止」という過程となります。この中の「販売、販売中止」の過程を詳述したのが②項になります。
 
 ② 商品が販売開始されてから、販売を中止するまでの過程。即ち、「投入期、成長期、成熟期、衰退期」となります。
 
 一般的にはこれを「ライフサイクル」と言っています。製品を開発し、商品として「販売そして販売中止」となりますが、市場に出た商品を時系列的に見ると現商品が販売され②項のように“投入期”“成長期”“成熟期”“衰退期”と進みます。そして、現商品の衰退期には次期商品が市場に投入され、また投入期を迎える、ということが繰り返し行われていくことになります。本テーマでは上記①に示す「商品企画から販売中止」までの広義のライフサイクルの理解をいただくために次項で説明しますが、上記②の「販売開始~販売中止」までの過程を念頭におきながらご理解してください。
 

1.2 商品開発

ライフサイクル
 ハードウエア、ソフトウエアでも、自社商品、仕入商品でも基本ステップは同じです。最初に、ここで使用する「製品と商品」という用語の区別を説明しておきます。「製品」とは、製品開発を終えて生産されて、まだ工場内に生産物として倉庫に保管されているものを言います。「商品」とは、製品を倉庫から取り出して、パッケージングを行い、売り物の商品として市場に出荷または店頭に陳列できる段階になったものを言います。右図に商品開発の流れを示します。
  
① 商品企画
 アイデア創出、マーケティング、自社技術力、生産力を総合的に評価・検討し、商品化を企画
します。
 
② 製品開発
 商品企画をもとに、製品に要求される品質やコストを割り当て、製品を設計し、生産のための情報をもとに設計図などを準備します。ここで、製品に必要な技術や生産に不足するものがあれば、それらを事前にまたは同時に開発します。
 
③ 市場テスト(テストマーケティング)
 本格的な生産や販売をする前に、試作品にて一部の市場を対象として商品の妥当性や商品企画との照合を行い、必要に応じて製品やパッケージングの修正、販路や市場の見直し等を行います。
 
④ 生産:自社、委託、共同開発(仕入)
  商品企画及び製品開発からの設計仕様に基づき、製品に要求される「品質やコスト」を実現するための生産手段を構築し、生産します。また、コンカレントエンジニアリングと称し、製品開発の段階から生産技術の開発を同時進行させ、製品開発と生産技術開発を効率よく推進する方式を行うことがあります。コンカレントエンジニアリングの活用で、製品開発の期間短縮、開発の質の向上だけではなく、開発段階から製品のトータルコストを低減できる効果があります。その結果、投資金額を引き下げ、価格競争力を強化することが出来ます。
 
⑤ 販売
 商品企画に基づき、販売促進、商流、物流などの販売計画をたて、販売活動を行います。
 
⑥ 販売中止
 商品がライフサイクル上の衰退期を迎え、その商品を引き継ぐ次期商品の販売開始と調整をとり、販売を中止します。但し、次期商品開発に着手して、せっかくつかんだ顧客やマーケットをライバルに奪われないための方策を立てた上で行います。
 

2. ライフサイクルと商品開発

 
 ここまで、広義のライフサイクル、商品開発について別々に説明してきましたが、両者は密接な関係があるので、ここでポイントを整理しておきます。
 

2.1 商品開発のスタート時期と販売開始時期

 
①商品開発、即ち商品企画をいつから始めるのがよいでしょうか。
 
 商品企画や製品開発には多大な工数と期間を必要とすることが通常です。早くから取り組めば、期間的に余裕をもてますが、現製品を市場投入したばかりの時期に、製品開発者の工数を確保することが難しいことが多いのです。かといって、商品の衰退期を迎えてから商品企画を開始していたのでは、次期商品の市場投入が遅延し、機会損失ばかりか、事業そのものを失うことになります。
 
②販売開始時期の選択はさらに複雑になります。
 
 市場の要求(ニーズ)、企業の持つ技術(シーズ)を組み合せ立案した商品企画も、市場の動向を見ながら調整をした上で販売開始、即ち商品の市場投入時期を決定しなくてはなりません。トップ企業が切り開いた市場の成長期に新商品を投入する場合、その仕様や特長を変更する必要があろうし、ブームが過ぎた市場に新商品を投入することは論外で、ハイリスクとなります。ランチェスター戦略は、この対応のためのひとつの選択でもあります。
 

2.2 経営資源の投入

 
 上述の時期の選択は、経営資源の投入に大きく影響を受けることは言うまでもありません。企画、技術、生産、購買、販売などの各部門の人財をいつから次期商品の開発に投入するのか、また、生産設備をどのように割り振るのかが課題になります。さらに、複数の商品系列や事業がある場合はその配分の再考も必要になります。
 

2.3 経営戦略としての組込み

 
 商品企画や経営資源を経営戦略として、とらえておかなくてはいけないのです。単なる戦術としてではなく、企業や事業の戦略に組込みトップの意思として推し進めることこそが、商品化を成功に導くことになります。
 
 生産設備や販売店舗などのハードウェアの老朽化に伴う、文字通りのスクラップ&ビルド(S&B)がその1つです。生産設備は生産効率や安全面での改善に直結する課題が中心となるので、投資対効果から判断することになりますが、販売店舗のそれは市場を見据えたマーケティング戦略の一手段となるので、企業戦略に基づく建設的な方針と計画を立てる必要があります。
 
 もう1つは、新商品化にあたり、市場の成熟期前後に開始する商品企画におけるスクラップ&ビルド)です。即ち、商品に訪れる衰退期そして販売中止となる前に、新商品を投入するためのスクラップ...

 

【商品力の強化と商品開発の方向性 連載目次】

 

1. 商品のライフサイクルと次期商品の開発

 
 商品力を強化するためには、マーケティングや企業の持つ技術から販売に至るまで、多方面の視点から検討する必要があります。今回は商品力を強化する一角をなす「商品ライフサイクルと商品開発」について解説します。商品には現物が存在するハードウェアと無形のサービスとしてソフトウェアなどがありますが、ここではその両方を「商品」として説明します。
 

1.1 ライフサイクル

 
 ライフサイクルについては、前回(その1)で説明しましたが再述しますと、マーケティングの分野で言うライフサイクルは次の2つに定義があります。
 
 ① 製品を世にだす商品企画から販売中止までの過程。即ち、「商品企画、製品開発、生産、販売、販売中止」という過程となります。この中の「販売、販売中止」の過程を詳述したのが②項になります。
 
 ② 商品が販売開始されてから、販売を中止するまでの過程。即ち、「投入期、成長期、成熟期、衰退期」となります。
 
 一般的にはこれを「ライフサイクル」と言っています。製品を開発し、商品として「販売そして販売中止」となりますが、市場に出た商品を時系列的に見ると現商品が販売され②項のように“投入期”“成長期”“成熟期”“衰退期”と進みます。そして、現商品の衰退期には次期商品が市場に投入され、また投入期を迎える、ということが繰り返し行われていくことになります。本テーマでは上記①に示す「商品企画から販売中止」までの広義のライフサイクルの理解をいただくために次項で説明しますが、上記②の「販売開始~販売中止」までの過程を念頭におきながらご理解してください。
 

1.2 商品開発

ライフサイクル
 ハードウエア、ソフトウエアでも、自社商品、仕入商品でも基本ステップは同じです。最初に、ここで使用する「製品と商品」という用語の区別を説明しておきます。「製品」とは、製品開発を終えて生産されて、まだ工場内に生産物として倉庫に保管されているものを言います。「商品」とは、製品を倉庫から取り出して、パッケージングを行い、売り物の商品として市場に出荷または店頭に陳列できる段階になったものを言います。右図に商品開発の流れを示します。
  
① 商品企画
 アイデア創出、マーケティング、自社技術力、生産力を総合的に評価・検討し、商品化を企画
します。
 
② 製品開発
 商品企画をもとに、製品に要求される品質やコストを割り当て、製品を設計し、生産のための情報をもとに設計図などを準備します。ここで、製品に必要な技術や生産に不足するものがあれば、それらを事前にまたは同時に開発します。
 
③ 市場テスト(テストマーケティング)
 本格的な生産や販売をする前に、試作品にて一部の市場を対象として商品の妥当性や商品企画との照合を行い、必要に応じて製品やパッケージングの修正、販路や市場の見直し等を行います。
 
④ 生産:自社、委託、共同開発(仕入)
  商品企画及び製品開発からの設計仕様に基づき、製品に要求される「品質やコスト」を実現するための生産手段を構築し、生産します。また、コンカレントエンジニアリングと称し、製品開発の段階から生産技術の開発を同時進行させ、製品開発と生産技術開発を効率よく推進する方式を行うことがあります。コンカレントエンジニアリングの活用で、製品開発の期間短縮、開発の質の向上だけではなく、開発段階から製品のトータルコストを低減できる効果があります。その結果、投資金額を引き下げ、価格競争力を強化することが出来ます。
 
⑤ 販売
 商品企画に基づき、販売促進、商流、物流などの販売計画をたて、販売活動を行います。
 
⑥ 販売中止
 商品がライフサイクル上の衰退期を迎え、その商品を引き継ぐ次期商品の販売開始と調整をとり、販売を中止します。但し、次期商品開発に着手して、せっかくつかんだ顧客やマーケットをライバルに奪われないための方策を立てた上で行います。
 

2. ライフサイクルと商品開発

 
 ここまで、広義のライフサイクル、商品開発について別々に説明してきましたが、両者は密接な関係があるので、ここでポイントを整理しておきます。
 

2.1 商品開発のスタート時期と販売開始時期

 
①商品開発、即ち商品企画をいつから始めるのがよいでしょうか。
 
 商品企画や製品開発には多大な工数と期間を必要とすることが通常です。早くから取り組めば、期間的に余裕をもてますが、現製品を市場投入したばかりの時期に、製品開発者の工数を確保することが難しいことが多いのです。かといって、商品の衰退期を迎えてから商品企画を開始していたのでは、次期商品の市場投入が遅延し、機会損失ばかりか、事業そのものを失うことになります。
 
②販売開始時期の選択はさらに複雑になります。
 
 市場の要求(ニーズ)、企業の持つ技術(シーズ)を組み合せ立案した商品企画も、市場の動向を見ながら調整をした上で販売開始、即ち商品の市場投入時期を決定しなくてはなりません。トップ企業が切り開いた市場の成長期に新商品を投入する場合、その仕様や特長を変更する必要があろうし、ブームが過ぎた市場に新商品を投入することは論外で、ハイリスクとなります。ランチェスター戦略は、この対応のためのひとつの選択でもあります。
 

2.2 経営資源の投入

 
 上述の時期の選択は、経営資源の投入に大きく影響を受けることは言うまでもありません。企画、技術、生産、購買、販売などの各部門の人財をいつから次期商品の開発に投入するのか、また、生産設備をどのように割り振るのかが課題になります。さらに、複数の商品系列や事業がある場合はその配分の再考も必要になります。
 

2.3 経営戦略としての組込み

 
 商品企画や経営資源を経営戦略として、とらえておかなくてはいけないのです。単なる戦術としてではなく、企業や事業の戦略に組込みトップの意思として推し進めることこそが、商品化を成功に導くことになります。
 
 生産設備や販売店舗などのハードウェアの老朽化に伴う、文字通りのスクラップ&ビルド(S&B)がその1つです。生産設備は生産効率や安全面での改善に直結する課題が中心となるので、投資対効果から判断することになりますが、販売店舗のそれは市場を見据えたマーケティング戦略の一手段となるので、企業戦略に基づく建設的な方針と計画を立てる必要があります。
 
 もう1つは、新商品化にあたり、市場の成熟期前後に開始する商品企画におけるスクラップ&ビルド)です。即ち、商品に訪れる衰退期そして販売中止となる前に、新商品を投入するためのスクラップ&ビルドですが、このスクラップ&ビルドの“スクラップ”が既存の完全な廃棄となってはいけないことは前回に説明しました。
 
 たとえ新商品であっても、商品の品質やブランドは継承されるべきであり、機能は現商品との互換性を皆無にするわけにはいきません。( 例:マイクロソフト社のワードソフトはバージョンアップをしても旧バージョンのデータの読み取り、変更ができます)また、生産については対象が変わり、手順や装置の一部が変わっても、生産ノウハウを再利用することはいうまでもなく、ユーザー情報や市場ノウハウを新商品の“ビルド”に大いに利用してください。
 

3. 商品企画・製品開発や市場開拓、成功のポイント

 
 中小企業がこの商品企画・製品開発や市場開拓を一社のみで行い、経営資源(人、モノ、金、情報)を必要な時に、必要な量を揃えるのは、ハードルが高いので、ビジネスパートナーとのコラボ(プロジェクト等)で取り組むことをお勧めします。具体的なプロジェクトの手順等は、ご遠慮なくご相談ください。
 
  次回は「新商品開発の手順とポイント」を解説します。
 
 

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この記事の著者

石川  昌平

(株)I&C・HosBizセンターの連絡窓口です

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