未然防止のための過去トラ集 品質問題の未然防止(その2)

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  FMEA
 

【品質問題の未然防止 連載目次】

 世の中で起こる人命にかかわる重要品質問題としては、自動車のリコール、電化製品の市場回収、食中毒、医療ミスなどがあり、ほとんどは、未然防止できたものばかりです。それを、製造業の製品設計の事例で証明し、どうしたら良いか説明します。これらの内容をまとめ、『過去トラ集~』として2019年5月に出版しました。本連載はこれらの概要を紹介するものです。
 
  •  「未然防止のための過去トラ集の作り方・使い方」
 ---品質問題をゼロにするFMEA・DR実施方法--- 日科技連出版社 本田陽広 
 
 詳細は本を参照していただき、品質の良い日本メーカーを増やすために、良い処を真似していただきたいと思います。今回は、その2です。
 

2. 品質問題の流出原因

 
 この関門について、設計手順に従って、順番に説明します。
 
(ⅰ) 設計者はまず、試作図面を作ります。
 ここで、品質問題が起きないように、過去トラ集などでチェックします。
 
(ⅱ) 設計者はFMEAを作成します。(前述)
 不具合を予測して、試作図面を変更し、事前に手を打ちます。
 
(ⅲ) FMEAのチーム活動を実施します。(前述)
 皆で、設計者の予測に抜け漏れがないか、検討します。
 
(ⅳ) 上記をすべて反映した試作品の性能試験、耐久試験を実施後精査します。
 試験品に問題がないか、皆で良く観て精査します。
 
(ⅴ) デザインレビューを実施します。
 設計、製造、検査、運用などの各分野の専門家が出席して、品質のみでなく、性能、機能、信頼性などを価格、納期などを考慮しながら、設計のすべてについて問題ないか、皆で検討します。
 
(ⅵ) 経営者による次ステップ移行承認会議を実施します。
 品質のみでなく、Q(品質),C(コスト),D(納期)、すべてについて問題ないか再度検討します。
 
(ⅶ) 図面を製造部に渡します。
 出図チェックシートでチェックをしてから、製造部に渡します。その後、生産用設備を作って、市場に出すという手順になります。
 
 品質問題が市場で発生したということは、上記の7つの関門をすべてすり抜けてしまったということです。
 

(1) なぜ、7つの関門をすり抜けたのでしょうか。

 
(ⅰ) 試作図面のチェック
 普通、チェックの道具は、自部署あるいは、社内で過去に起こしたトラブル集しかありませんので、それでチェックして終わりです。これでは今後起こりうる既知の故障メカニズムで品質問題を起こす可能性があります。自部署で起こしたことのない不具合は、気づかずにすり抜けてしまいます。
 
(ⅱ)と(ⅲ)は前述してありますので省略
 
(ⅳ) 性能、耐久試験品の精査
 
 物を良く観て、不具合の兆候を発見することが大切ですが、分解せずに、性能だけ計測してOK判断をして、すり抜けるというケースがあります。
 
(ⅴ) デザインレビュー
 1回のデザインレビューで、品質、性能、機能、信頼性、価格、納期などのすべてを議論しようとするため、意見が四方八方に分散し、すべてが消化不良に終わってしまうため、ここもすり抜けてしまうのです。
 
(ⅵ) 次、ステップ移行承認会議
 経営トップなどが出席するため、長い時間が取れず、概要説明と重点課題の審議に絞られるケースが多く、ここもすり抜けます。
 
(ⅶ) 図面出図チェック
 これも、自部署で起こした過去トラ集のチェックに限られる場合が多いため、すり抜けます。
 
 

(2) 以上から、改善すべき点を整理すると

 
① 試作図面のチェックで不具合要因に気づく
 自部署で起こした過去のトラブル集以外に、今後起こりうる故障メカニズム集、製品設計ノウハウを知らずに問題を起こす場合があるので設計ノウハウ集などが入った、不具合事例集でチェックさせることです。
 
② 性能、耐久試験品の精査で不具合の兆候に気づく
 精査するための専用の会議室を作り、顕微鏡、虫眼鏡など物を観るための必要設備を完備し、実験課、設計、生産技術、品質保証が集まって、耐久後分解品を観て不具合の兆候を発見する活動が必要です。
 
③ デザインレビューは何回も実施して、審議者が気づく
 1回のデザインレビューで、Q,C,Dすべてを議論するのではなく、ある回はコストだけ議論するなど、ポイントを分けて実施する必要があります。開催時間を1~2時間にとどめることで、専門家も出やすくなります。時間が足らなければ、続きを、日を変えて何度も実施すればよいので...
 
  FMEA
 

【品質問題の未然防止 連載目次】

 世の中で起こる人命にかかわる重要品質問題としては、自動車のリコール、電化製品の市場回収、食中毒、医療ミスなどがあり、ほとんどは、未然防止できたものばかりです。それを、製造業の製品設計の事例で証明し、どうしたら良いか説明します。これらの内容をまとめ、『過去トラ集~』として2019年5月に出版しました。本連載はこれらの概要を紹介するものです。
 
  •  「未然防止のための過去トラ集の作り方・使い方」
 ---品質問題をゼロにするFMEA・DR実施方法--- 日科技連出版社 本田陽広 
 
 詳細は本を参照していただき、品質の良い日本メーカーを増やすために、良い処を真似していただきたいと思います。今回は、その2です。
 

2. 品質問題の流出原因

 
 この関門について、設計手順に従って、順番に説明します。
 
(ⅰ) 設計者はまず、試作図面を作ります。
 ここで、品質問題が起きないように、過去トラ集などでチェックします。
 
(ⅱ) 設計者はFMEAを作成します。(前述)
 不具合を予測して、試作図面を変更し、事前に手を打ちます。
 
(ⅲ) FMEAのチーム活動を実施します。(前述)
 皆で、設計者の予測に抜け漏れがないか、検討します。
 
(ⅳ) 上記をすべて反映した試作品の性能試験、耐久試験を実施後精査します。
 試験品に問題がないか、皆で良く観て精査します。
 
(ⅴ) デザインレビューを実施します。
 設計、製造、検査、運用などの各分野の専門家が出席して、品質のみでなく、性能、機能、信頼性などを価格、納期などを考慮しながら、設計のすべてについて問題ないか、皆で検討します。
 
(ⅵ) 経営者による次ステップ移行承認会議を実施します。
 品質のみでなく、Q(品質),C(コスト),D(納期)、すべてについて問題ないか再度検討します。
 
(ⅶ) 図面を製造部に渡します。
 出図チェックシートでチェックをしてから、製造部に渡します。その後、生産用設備を作って、市場に出すという手順になります。
 
 品質問題が市場で発生したということは、上記の7つの関門をすべてすり抜けてしまったということです。
 

(1) なぜ、7つの関門をすり抜けたのでしょうか。

 
(ⅰ) 試作図面のチェック
 普通、チェックの道具は、自部署あるいは、社内で過去に起こしたトラブル集しかありませんので、それでチェックして終わりです。これでは今後起こりうる既知の故障メカニズムで品質問題を起こす可能性があります。自部署で起こしたことのない不具合は、気づかずにすり抜けてしまいます。
 
(ⅱ)と(ⅲ)は前述してありますので省略
 
(ⅳ) 性能、耐久試験品の精査
 
 物を良く観て、不具合の兆候を発見することが大切ですが、分解せずに、性能だけ計測してOK判断をして、すり抜けるというケースがあります。
 
(ⅴ) デザインレビュー
 1回のデザインレビューで、品質、性能、機能、信頼性、価格、納期などのすべてを議論しようとするため、意見が四方八方に分散し、すべてが消化不良に終わってしまうため、ここもすり抜けてしまうのです。
 
(ⅵ) 次、ステップ移行承認会議
 経営トップなどが出席するため、長い時間が取れず、概要説明と重点課題の審議に絞られるケースが多く、ここもすり抜けます。
 
(ⅶ) 図面出図チェック
 これも、自部署で起こした過去トラ集のチェックに限られる場合が多いため、すり抜けます。
 
 

(2) 以上から、改善すべき点を整理すると

 
① 試作図面のチェックで不具合要因に気づく
 自部署で起こした過去のトラブル集以外に、今後起こりうる故障メカニズム集、製品設計ノウハウを知らずに問題を起こす場合があるので設計ノウハウ集などが入った、不具合事例集でチェックさせることです。
 
② 性能、耐久試験品の精査で不具合の兆候に気づく
 精査するための専用の会議室を作り、顕微鏡、虫眼鏡など物を観るための必要設備を完備し、実験課、設計、生産技術、品質保証が集まって、耐久後分解品を観て不具合の兆候を発見する活動が必要です。
 
③ デザインレビューは何回も実施して、審議者が気づく
 1回のデザインレビューで、Q,C,Dすべてを議論するのではなく、ある回はコストだけ議論するなど、ポイントを分けて実施する必要があります。開催時間を1~2時間にとどめることで、専門家も出やすくなります。時間が足らなければ、続きを、日を変えて何度も実施すればよいのです。時間切れで終わることを防げます。
 
④ 次、ステップ移行承認会議
 これは、手の打ちようがないので、省略。
 
⑤ 図面出図チェックで不具合要因に気づく
 この時点で、品質チェックをしても、時期的に遅いので、図面を見て設計意図が製造部に伝わるかどうかのチェックをメインにした方が良いです。製造部の誤解で品質問題を起こすことがあります。
 
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 
 以上、品質問題の原因分析より、どうしたら良いかが分かりましたので、この後、設計者全員、チーム活動の審議者全員に快く受け入れてもらえる方法について説明します。無理やりやらせる手法は長続きしません。
 
 次回は、3. 人間心理、癖などを考慮した対策方法から続けます。
 

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この記事の著者

本田 陽広

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