◆水素エネルギー社会 連載目次
- 1. 燃料電池自動車開発
- 2. 船舶の次世代エネルギー源
- 3. 燃料電池自動車開発競争
- 4. 東レ ~ FCV用CF増産、航空機からシフト
- 5. 炭素繊維の地域ごとにおける消費用途の差
- 6. 水素協議会
- 7. JR東日本、水素燃料車両の開発・試験
- 8. ドイツの燃料電池鉄道車両とは
- 9. 低炭素社会とは
- 10. 水素の安全性 1
- 11. 水素の安全性 2
- 12. 水素社会への潮流
♦ トヨタのFCV技術が鉄道に ~ 開発進む車両関連機器
今回はJR東日本が進めている水素燃料車両の開発についてお話します。水素燃料は搭載設計の自由度を考えた場合、乗用車よりはトラックやバスが有利で、同様に鉄道車両にもメリットがありそうです。
鉄道車両への適用状況が気になってた折、JR東日本の社長会見で燃料電池車両の製造と試験運転が発表されました。プレス発表では、JR東日本・日立製作所・トヨタ自動車の3社共同発表となってます。燃料電池技術はトヨタ、車両製造は日立製作所との分担で、2両編成の「HYBARI」という愛称の車両を開発します。車両は2022年から地元自治体の協力も得て、南武線と鶴見線で試験運転を開始します。
写真「2022年、試験運転を開始する『HYBARI』」(出典:JR東日本プレス発表資料)
2019年6月にもほぼ同様のプレス発表がありました。今回との大きな差は日立製作所が明示された点です。協業関係が具体化したということでしょうか。これにより、3社の分担範囲も明確に示されてます。
JR東日本は既に、非電化区間向けのハイブリッド気動車を実用展開しています。ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動する方式です。日産のe-powerと同じ駆動方法です。ただ、軽油を使うため脱炭素とはなりません。
JR東日本では、2050年に炭酸ガスを排出ゼロにすることをコミットメントしており、今後の非電化区間への切り札は、今回の燃料電池車両の可能性が高いところです。ほかに、洋上発電による自社電源開発などもテーマとなっています。
水素タンクは燃料電池バス同様、頭上に格納されます。5本×4ユニットで計20本搭載するとされています。下図、出典は2019年06月04日に発表されたプレス資料からの車両構成図です。
図.「HYBARI」の車両構成
トヨタの燃料電池バス「SORA」は、開示されているイラストでは10本搭載されています。なお、SORAのタンク内容積は600L搭載ということで1本あたり60Lです。一方、HYBARIは水素貯蔵容量は51L×5本×4ユニ...