レイアウトの考察 物流改善ネタ出し講座 (その9)

更新日

投稿日

 

【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.工場から「運搬のムダ」を撲滅せよ

 
 前回の第8回に続いて解説します。7つのムダの中に「運搬のムダ」があることは皆さんご存知の通りです。工場において運搬はムダに他なりません。このムダを放置したままで工場の生産性向上はあり得ません。一方で運搬を工場から撲滅したいと思ってはいてもなかなか実行できないと悩まれている方も多いかもしれません。そこで少しでも運搬のムダを無くすための活動について考えてみましょう。
 

2.物流工程設計の重要性

 
 運搬はなぜ発生するのでしょうか。それは工程と工程が離れているからです。工程間を直結すれば改善することかもしれませんが、言うは易し行うは難しです。第一に工場のレイアウトを変更できるタイミングが限られていることが挙げられます。新製品を立ち上げるときに新たな生産工程を設置する場合があります。このようなタイミングはレイアウトを変更し運搬を無くす絶好のタイミングです。しかしこの場合であっても運搬を減らせても完全に無くすに至らないことがあり得えます。なぜなら新製品のすべての生産が新設されるとは限らないからです。現行ラインと新設ラインを併用する場合には現行ラインの悪さはそのまま残ってしまうことが考えられます。
 
 第二に工場設計時に工程間運搬を考慮していないことが挙げられます。工場の技術担当者は工程におけるSQDCを念頭に素晴らしい「ものづくり」を実行できる生産ラインを設計する傾向にあります。この思想に基づきAさんはX工程を設計し、BさんはY工程を設計するとしましょう。AさんもBさんも担当工程内の工法、品質、設備、作業者の動きなどについて徹底して検討し、予算内で最良の工程に仕上げることでしょう。しかしAさんとBさんが連携してお互いの工程を連結し運搬を無くそうという動きをすることはあまり無いかもしれません。
 
 運搬が発生するか否かは最初の工程設計にかかっているのです。この機を逃すと延々と運搬を発生させ続けることになります。ということで工程内設計ではなく運搬が発生しない、あるいは運搬が最少で済む真の工程設計を行うことを心がけたいのです。これを物流工程設計と呼ぶとするならば、その範囲は以下の通りです。
 
(1)工場全体レイアウト
 
 工場の敷地全体のレイアウトを検討します。トラック台数に応じて決まる工場の出入口や工場内道路の検討、資材受け入れ場や倉庫の位置、面積などを決定します。このプロセスは主に工場建設時に実施します。
 
(2)工場内レイアウト
 
 工場建屋内のレイアウトを検討します。この検討ポイントは「物流を極力発生させない」です。このキーワードの意味するところは後述します。
 
(3)物流設計
 
 工程間運搬が発生した場合の「ものの運び方」、倉庫エリアの「ものの保管方法」、荷姿などの設計を実施します。倉庫エリアではものの置き方の基本となるロケーション設定までを実施します。
 
(4)物流標準設定
 
 設計された物流を一定のSQDCを保って実施するための標準を設定します。この標準がその工場における物流標準となります。
 

3.レイアウト評価の実施

 
 工場でレイアウト改善を実施したり工程設計で新レイアウト設計を行ったりしたときにはその出来栄えを評価してみましょう。
 
(1)総運搬距離で評価(図1参照)
 
        物流改革
                    図1.総運搬距離の把握
 
 その製品を一台生産する場合にどれくらいの距離を運搬するのかを評価する方法。工程間運搬が発生する場合、製品一台当たりの運搬距離を積算して評価します。総運搬距離が短ければ短いほど良い評価となります。
 
(2)総運搬工数で評価(図2参照)
 
      物流改革
                     図2.運搬工数
 
 上記(1)について距離の代わりに運搬工数で評価する方法です。総運搬工数を当該製品の総加工工数で除して加工工数に対する運搬工数比率を求めて評価を行います。原則としてこの比率が小さければ小さいほど良い評価となります。
 
(3)工程分析で評価
 
 これはとてもシンプルな方法です。いつも工場で実施している工程分析を行い、「運搬の数」で評価する方法です。運搬の数の認識はできるかもしれないが、運搬距離や運搬工数は情報として入れな...
 

【物流改善ネタ出し講座 連載目次】

1. なぜ物流は宝の山なのか

2. 宝の山の見つけ方

3. フォークリフトを考える

4. 荷姿の考察

5. 物流効率化の決め手、荷姿モジュール

6. 供給を考える

7. 回収作業について

8. 保管作業を考える

9. レイアウトの考察

10. 輸送は大きな宝の山

11. 物流業務の出来栄え評価

12. 物流のプロを育成しよう

1.工場から「運搬のムダ」を撲滅せよ

 
 前回の第8回に続いて解説します。7つのムダの中に「運搬のムダ」があることは皆さんご存知の通りです。工場において運搬はムダに他なりません。このムダを放置したままで工場の生産性向上はあり得ません。一方で運搬を工場から撲滅したいと思ってはいてもなかなか実行できないと悩まれている方も多いかもしれません。そこで少しでも運搬のムダを無くすための活動について考えてみましょう。
 

2.物流工程設計の重要性

 
 運搬はなぜ発生するのでしょうか。それは工程と工程が離れているからです。工程間を直結すれば改善することかもしれませんが、言うは易し行うは難しです。第一に工場のレイアウトを変更できるタイミングが限られていることが挙げられます。新製品を立ち上げるときに新たな生産工程を設置する場合があります。このようなタイミングはレイアウトを変更し運搬を無くす絶好のタイミングです。しかしこの場合であっても運搬を減らせても完全に無くすに至らないことがあり得えます。なぜなら新製品のすべての生産が新設されるとは限らないからです。現行ラインと新設ラインを併用する場合には現行ラインの悪さはそのまま残ってしまうことが考えられます。
 
 第二に工場設計時に工程間運搬を考慮していないことが挙げられます。工場の技術担当者は工程におけるSQDCを念頭に素晴らしい「ものづくり」を実行できる生産ラインを設計する傾向にあります。この思想に基づきAさんはX工程を設計し、BさんはY工程を設計するとしましょう。AさんもBさんも担当工程内の工法、品質、設備、作業者の動きなどについて徹底して検討し、予算内で最良の工程に仕上げることでしょう。しかしAさんとBさんが連携してお互いの工程を連結し運搬を無くそうという動きをすることはあまり無いかもしれません。
 
 運搬が発生するか否かは最初の工程設計にかかっているのです。この機を逃すと延々と運搬を発生させ続けることになります。ということで工程内設計ではなく運搬が発生しない、あるいは運搬が最少で済む真の工程設計を行うことを心がけたいのです。これを物流工程設計と呼ぶとするならば、その範囲は以下の通りです。
 
(1)工場全体レイアウト
 
 工場の敷地全体のレイアウトを検討します。トラック台数に応じて決まる工場の出入口や工場内道路の検討、資材受け入れ場や倉庫の位置、面積などを決定します。このプロセスは主に工場建設時に実施します。
 
(2)工場内レイアウト
 
 工場建屋内のレイアウトを検討します。この検討ポイントは「物流を極力発生させない」です。このキーワードの意味するところは後述します。
 
(3)物流設計
 
 工程間運搬が発生した場合の「ものの運び方」、倉庫エリアの「ものの保管方法」、荷姿などの設計を実施します。倉庫エリアではものの置き方の基本となるロケーション設定までを実施します。
 
(4)物流標準設定
 
 設計された物流を一定のSQDCを保って実施するための標準を設定します。この標準がその工場における物流標準となります。
 

3.レイアウト評価の実施

 
 工場でレイアウト改善を実施したり工程設計で新レイアウト設計を行ったりしたときにはその出来栄えを評価してみましょう。
 
(1)総運搬距離で評価(図1参照)
 
        物流改革
                    図1.総運搬距離の把握
 
 その製品を一台生産する場合にどれくらいの距離を運搬するのかを評価する方法。工程間運搬が発生する場合、製品一台当たりの運搬距離を積算して評価します。総運搬距離が短ければ短いほど良い評価となります。
 
(2)総運搬工数で評価(図2参照)
 
      物流改革
                     図2.運搬工数
 
 上記(1)について距離の代わりに運搬工数で評価する方法です。総運搬工数を当該製品の総加工工数で除して加工工数に対する運搬工数比率を求めて評価を行います。原則としてこの比率が小さければ小さいほど良い評価となります。
 
(3)工程分析で評価
 
 これはとてもシンプルな方法です。いつも工場で実施している工程分析を行い、「運搬の数」で評価する方法です。運搬の数の認識はできるかもしれないが、運搬距離や運搬工数は情報として入れないと認識されないので注意が必要です。
 

4.物流の発生を抑える

 
 工場ではものづくりの結果として物流が発生します。たとえばまとめづくりを行うことで在庫が発生し、その結果として在庫エリアや容器、管理などが発生します。工程設計で工程内の効率化しか考慮されていない場合、その結果として容器や運搬、物流工数などが発生します。つまり工場レイアウトやものづくりの方法などは物流の発生要因となるという認識が重要であり物流を極力発生させないための方策を考えるべきです。これらを考慮することで物流効率化につながることは間違いありません。是非、レイアウトとものづくりを工夫することで物流を効率化しましょう。
 
  この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
SCM効率を評価するKPIの新提案:最終回 SCM最前線 (その16)

   前回のその15に続いて解説します。   5. 面積原価によるSCM改革・改善の方針    これまで、面積原価...

   前回のその15に続いて解説します。   5. 面積原価によるSCM改革・改善の方針    これまで、面積原価...


競争社会の中のサプライチェーンマネジメント

 グローバルな経済圏の中で大きなビジネス環境変化が起こっており、昨日の成功企業が苦戦しています。今日の成功企業でも明日は分かりません。規制緩和が新規参入を...

 グローバルな経済圏の中で大きなビジネス環境変化が起こっており、昨日の成功企業が苦戦しています。今日の成功企業でも明日は分かりません。規制緩和が新規参入を...


サプライチェーンマネジメントは連携の技術

 1980年代から90年代始めにかけて、ドル高による海外製品の流入、大手デスカウントストアによる価格破壊で、米国の伝統的なスーパーマーケットは大きな打撃を...

 1980年代から90年代始めにかけて、ドル高による海外製品の流入、大手デスカウントストアによる価格破壊で、米国の伝統的なスーパーマーケットは大きな打撃を...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
新たな視点でチャレンジ:物流環境変化への対応(その3)

  ◆新たな視点でチャレンジ 従来の流れは圧倒的に物流をアウトソースすることでした。この背景には物流は自分たちの本業ではないという考え方があります...

  ◆新たな視点でチャレンジ 従来の流れは圧倒的に物流をアウトソースすることでした。この背景には物流は自分たちの本業ではないという考え方があります...


物流商品開発とは:顧客の仕事を変える物流の提供を(その3)

  ◆顧客の立場で物流商品開発 ヒット商品を生み出すためには顧客になり切る必要があります。自分だったらどのような商品があったらうれしいか。こんな商...

  ◆顧客の立場で物流商品開発 ヒット商品を生み出すためには顧客になり切る必要があります。自分だったらどのような商品があったらうれしいか。こんな商...


物流は他部門の結果が表れる 物流収益管理の大切さ(その3)

◆ 物流各部門の役割とは  同じ入出庫業務と配送業務を請け負ったとしても、ある得意先は数パーセントの利益が出るのに別の得意先は赤字ということがよくあ...

◆ 物流各部門の役割とは  同じ入出庫業務と配送業務を請け負ったとしても、ある得意先は数パーセントの利益が出るのに別の得意先は赤字ということがよくあ...