-2 QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略」(その3)

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<QCの基本に立ち返って考える>

  一石三鳥;感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減、経済復興

 以下、QCの基本に立ち返って、なぜ「全員検査大作戦」が重要なのかについて考察します。

 QCの基本は以下に示す12項目(12ヶ条)です。

① 先入感に捉われず、事象を虚心坦懐に観察して事実を知る
② 分けて考える(層別)
③ 工程(プロセス)で考える
④ 見える化
⑤ 目的を正しく認識し適切な目標を設定する
⑥ 源流検査(不良が発生する前に異常を検知し行動する)とポカヨケ
⑦ PDCAを回す(新型コロナの怖さを知り検査・隔離をプラスに感じるインセンティブ)
⑧ 受入で不良を入れない
⑨ 4つのM*ベストな状態にする. *原材料・機械設備・人(作業者)・方法(製造・検査)
⑩ バラツキを減らす
⑪(社会的)損失を減らす
⑫ 自由度を増す

 以下、前回の(その3)-1に続けて項目②から考察します。

② 分けて考える(層別)

 ものづくりでは、商品別・お客さん別・季節別などに分けてクレームをみるとか、製品別・ライン別・機械設備別・日別などに分けて不良率を確認することで問題点がみえてきます。

 感染症については、第一に「感染拡大防止」と「重症化防止」は事象が違い、打つ手が違うので分けて考える必要があります。新型コロナウィルスは飛沫・接触感染なので、職種によって感染の確立が違います。例えばソフトバンクの抗体検査は職種に分けて行った結果、コールセンター0.41%、オフィス0.17%と、1日中話続けるコールセンターが2倍以上という問題が見えました。

 また、ウィルスは容易に変異し異なった作用をすると考えて、常に分けて考える必要があります。

 「感染拡大防止」については、全住民・滞在者を地域・区域別に、また感染状況によって分けて考えることで、事象が見えてくるほか、打つ手も具体的に考えることが出来ます。感染状況については、1次感染して発症し入院隔離されている患者、1次感染者しているが発症せず街中で暮らす住民・滞在者、2次感染してしまった住民・滞在者、(感染していない)市中の住民・滞在者、というように分けて(図表の縦軸)、それぞれについて事象(工程)を考えます(図表の横軸)。

③ 工程(プロセス)で考える

 ものづくりでは、工程は原材料受入→工程①→工程②→・・・→検査→出荷と進みます。

 通常の医療では、患者受入→診断→治療→(入院→)検査→治癒→退院となります。

③-1、感染症;院内感染

 朝日新聞2020年6/30朝刊24面に、国内初の院内感染を起こした和歌山県有田病院の例「院内感染 どう封じ込めたか?」に感染経路(流れ)の分析など有益な情報が載っています。

③-2、感染症;広域感染 

 広域感染では2次感染・感染拡大が大きな問題なので図表のように 感染→(無症状・発症前)→発症→検査→入院・治療→検査→治癒という流れ(工程)で考えることが重要です。次表は、QCの基本である「工程で見る」を簡単なイラストにしたものです。

中国ウイルス

 この表に示すような工程(感染の流れ)で、3月中旬から無症状・発症前の1次感染者から知らず知らずに感染した2次感染者が急増し、医療機関がキャパ不足のためPCR検査制限・入院制限をせざるを得ない中、医療従事者の必死の努力で何とか医療崩壊を免れてきました。日本特有の戦略ナシを現場の努力で、感染拡大は小康状態にはなりましたが依然として感染者は増え続け(特に感染経路不明者が減らず)無症状の感染者が何処にいるか分らない(不安)上、経済活動もなかなか元に戻らない状況が続いています。全住民・滞在者を対象にした無症状感染者を見付けて隔離する工程(プロセス)を考えることが重要です。以下の図表は、目指す姿の簡単なモデルをイラスト化したものです。

中国ウイルス


④ 見える化

 最初に述べた「先入感に捉われず虚心坦懐に観察して事実を知る」で見たように、観察した結果を図表やグラフ等で「見える化」することが「事実を知る」「事実を知ってもらう」上で極めて重要です。また「分けて考える」「工程(プロセス)で考える」についても、前記のようにエクセルを使って「見える化」することで、事象がどのように変化していくかが見えきて、何処でどのような手を打てばいいかがみえてきます。

⑤ 目的を正しく認識し適切な目標を設定する(正しい方針管理の実践)

 TQCで最も重要なのは、“方針”が企業環境の変化に対応した適切なものになっていることです(根本元トヨタ専務)。富士フィルムは、フィルム製造で築き上げてきた他社に真似のできないアナログ技術を新しい分野にオンリーワン戦略として展開し(コダックとは対照的に)事業転換を成功させました。新型コロナウィルスに関して重要なのは「医療目的」と「社会目的」を正しく認識することです。

 「医療目的」は発症者を正しく診断・治療して重症化を避け、治癒させることで、日本は高いレベルにあるといえます。日本が第1波の手際の悪さから学ぶ必要があるのは「社会目的」すなわち「感染拡大を防止し経済活動を復活させる」ことです。そして、無症状も含めた感染者を早期に見付けて隔離することで、陽性者は(最大でも1%未満か)はホテル等で休息、陰性者(99%)は“安心”して通常通り社会・経済活動に励む「新しい社会」創りを目標にして「全員検査大作戦」を展開することです。

 この究極の目的は、他国のような追跡システムに頼らない高い検査技術をベースにした「源流検査」で早期に感染者を見付けて隔離(ホテル等で休養)する「真の日本モデル」として確立し、街中に感染者は居ない「安心街づくり」を行い、新型コロナを終息し経済を復活させて、東京2020を奇跡の成功に導くことです。

【全員検査大作戦の内容】

1、2段階検査で検査能力向上・精度向上

 1次検査;医療従事者にもやさしい唾液検体を使って、従来のPCR検査や千葉県企業開発のPCR全自動検査装置、神奈川モデルのPCR検査機器で、20人1ロットの混合検体による検査*を実施し、可及的速やかに全員検査を行い陽性者を分離する。2次検査;1次検査で陽性となったロットの20人を一人ずつ全自動PCR検査装置や神奈川モデルのPCR検査機器、抗原検査などを行い、感染者を隔離する。 
注)最善の検査方法については専門家の指導が必要です

 *例えば1...

<QCの基本に立ち返って考える>

  一石三鳥;感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減、経済復興

 以下、QCの基本に立ち返って、なぜ「全員検査大作戦」が重要なのかについて考察します。

 QCの基本は以下に示す12項目(12ヶ条)です。

① 先入感に捉われず、事象を虚心坦懐に観察して事実を知る
② 分けて考える(層別)
③ 工程(プロセス)で考える
④ 見える化
⑤ 目的を正しく認識し適切な目標を設定する
⑥ 源流検査(不良が発生する前に異常を検知し行動する)とポカヨケ
⑦ PDCAを回す(新型コロナの怖さを知り検査・隔離をプラスに感じるインセンティブ)
⑧ 受入で不良を入れない
⑨ 4つのM*ベストな状態にする. *原材料・機械設備・人(作業者)・方法(製造・検査)
⑩ バラツキを減らす
⑪(社会的)損失を減らす
⑫ 自由度を増す

 以下、前回の(その3)-1に続けて項目②から考察します。

② 分けて考える(層別)

 ものづくりでは、商品別・お客さん別・季節別などに分けてクレームをみるとか、製品別・ライン別・機械設備別・日別などに分けて不良率を確認することで問題点がみえてきます。

 感染症については、第一に「感染拡大防止」と「重症化防止」は事象が違い、打つ手が違うので分けて考える必要があります。新型コロナウィルスは飛沫・接触感染なので、職種によって感染の確立が違います。例えばソフトバンクの抗体検査は職種に分けて行った結果、コールセンター0.41%、オフィス0.17%と、1日中話続けるコールセンターが2倍以上という問題が見えました。

 また、ウィルスは容易に変異し異なった作用をすると考えて、常に分けて考える必要があります。

 「感染拡大防止」については、全住民・滞在者を地域・区域別に、また感染状況によって分けて考えることで、事象が見えてくるほか、打つ手も具体的に考えることが出来ます。感染状況については、1次感染して発症し入院隔離されている患者、1次感染者しているが発症せず街中で暮らす住民・滞在者、2次感染してしまった住民・滞在者、(感染していない)市中の住民・滞在者、というように分けて(図表の縦軸)、それぞれについて事象(工程)を考えます(図表の横軸)。

③ 工程(プロセス)で考える

 ものづくりでは、工程は原材料受入→工程①→工程②→・・・→検査→出荷と進みます。

 通常の医療では、患者受入→診断→治療→(入院→)検査→治癒→退院となります。

③-1、感染症;院内感染

 朝日新聞2020年6/30朝刊24面に、国内初の院内感染を起こした和歌山県有田病院の例「院内感染 どう封じ込めたか?」に感染経路(流れ)の分析など有益な情報が載っています。

③-2、感染症;広域感染 

 広域感染では2次感染・感染拡大が大きな問題なので図表のように 感染→(無症状・発症前)→発症→検査→入院・治療→検査→治癒という流れ(工程)で考えることが重要です。次表は、QCの基本である「工程で見る」を簡単なイラストにしたものです。

中国ウイルス

 この表に示すような工程(感染の流れ)で、3月中旬から無症状・発症前の1次感染者から知らず知らずに感染した2次感染者が急増し、医療機関がキャパ不足のためPCR検査制限・入院制限をせざるを得ない中、医療従事者の必死の努力で何とか医療崩壊を免れてきました。日本特有の戦略ナシを現場の努力で、感染拡大は小康状態にはなりましたが依然として感染者は増え続け(特に感染経路不明者が減らず)無症状の感染者が何処にいるか分らない(不安)上、経済活動もなかなか元に戻らない状況が続いています。全住民・滞在者を対象にした無症状感染者を見付けて隔離する工程(プロセス)を考えることが重要です。以下の図表は、目指す姿の簡単なモデルをイラスト化したものです。

中国ウイルス


④ 見える化

 最初に述べた「先入感に捉われず虚心坦懐に観察して事実を知る」で見たように、観察した結果を図表やグラフ等で「見える化」することが「事実を知る」「事実を知ってもらう」上で極めて重要です。また「分けて考える」「工程(プロセス)で考える」についても、前記のようにエクセルを使って「見える化」することで、事象がどのように変化していくかが見えきて、何処でどのような手を打てばいいかがみえてきます。

⑤ 目的を正しく認識し適切な目標を設定する(正しい方針管理の実践)

 TQCで最も重要なのは、“方針”が企業環境の変化に対応した適切なものになっていることです(根本元トヨタ専務)。富士フィルムは、フィルム製造で築き上げてきた他社に真似のできないアナログ技術を新しい分野にオンリーワン戦略として展開し(コダックとは対照的に)事業転換を成功させました。新型コロナウィルスに関して重要なのは「医療目的」と「社会目的」を正しく認識することです。

 「医療目的」は発症者を正しく診断・治療して重症化を避け、治癒させることで、日本は高いレベルにあるといえます。日本が第1波の手際の悪さから学ぶ必要があるのは「社会目的」すなわち「感染拡大を防止し経済活動を復活させる」ことです。そして、無症状も含めた感染者を早期に見付けて隔離することで、陽性者は(最大でも1%未満か)はホテル等で休息、陰性者(99%)は“安心”して通常通り社会・経済活動に励む「新しい社会」創りを目標にして「全員検査大作戦」を展開することです。

 この究極の目的は、他国のような追跡システムに頼らない高い検査技術をベースにした「源流検査」で早期に感染者を見付けて隔離(ホテル等で休養)する「真の日本モデル」として確立し、街中に感染者は居ない「安心街づくり」を行い、新型コロナを終息し経済を復活させて、東京2020を奇跡の成功に導くことです。

【全員検査大作戦の内容】

1、2段階検査で検査能力向上・精度向上

 1次検査;医療従事者にもやさしい唾液検体を使って、従来のPCR検査や千葉県企業開発のPCR全自動検査装置、神奈川モデルのPCR検査機器で、20人1ロットの混合検体による検査*を実施し、可及的速やかに全員検査を行い陽性者を分離する。2次検査;1次検査で陽性となったロットの20人を一人ずつ全自動PCR検査装置や神奈川モデルのPCR検査機器、抗原検査などを行い、感染者を隔離する。 
注)最善の検査方法については専門家の指導が必要です

 *例えば100人の被験者を一人ずつ検査すると100回の検査が必要になりますが、20人の検体を混合し1個の検体(ロット)を作って検査すれば5回、精度を上げるため2個の検体を作って2回検査すれば10回、一人ずつ検査する場合の1/10の回数で済み、検査能力は10倍になります。PCR検査の精度は70%(陽性見逃し30%=0.3)といわれていますが2回検査すれば見逃しは0.3×0.3=0.09≒10%と1/3に下がり精度が3倍になります。
 

2、ロードマップ(特定地区から全体へ)

(1) 特定地区の選択

  東京ではまず感染者の多い新宿区、人口34万人なので1次検査は(340,000/20=) 17,000回、最初は全ホストクラブから始め、病院、老人ホーム、学校と進めます。ここで重要なことは出入り業者など(+α)を含めた関係者全員を対象にすることで、次に豊島区・・・と広げていきます。

(2) 資源の集中投入

 1次検査は可及的速やかに。あちこち分散している検査機器を「選択した特定地区に集中投入する」ことが肝要です。

3、一石三鳥;感染拡大防止と医療従事者の負荷軽減、そして経済復興

 次回、QCによる「新型コロナ危機への対応・・第2波入口戦略」(その3)-3へ解説を続けます。

 

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この記事の著者

鈴木 甫

「生き残る」のは “強いもの” でも “賢いもの”でもなく「変化に対応できるもの」!「ポストコロナ『DX』の激変する環境に対応する企業支援」に真剣に取り組んでいます!            E-mail: h.suzuki@dr-practice.com

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