物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

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物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

 

1. それでも無くならない物流

日本では物流に対する学問体系もしっかりし、物流に対する認識がそれほど高くないことは皆さんもお気づきのことでしょう。大学で物流を学びたいという意思のある学生もあまり聞いたことがありません。物流学科を卒業しても物流事業に就く学生はほとんどいないと聞いています。

 

会社の中にあっても物流部門が無いか、あったとしてもその地位は低いと言わざるを得ません。会社によっては他の部門で使えない人を物流に回すという話さえ存在するのです。物流にずっと携わってきた者にとっては忸怩たるものがあると思います。経済を支えている重要な機能である物流の認知度が低い理由は何でしょうか。

 

昔から日本ではサービスはタダだという認識が強すぎる気がします。ものを頼めば自動的に届くと思っている人がたくさんいらっしゃいます。しかもそれに対して対価を支払うという認識も薄い場合があります。これは通信販売での「配送料無料」も影響しているものと思われます。

 

インターネットが大きく社会を変化させました。情報はあっという間に相手に伝えることが可能になりました。欲しい情報も瞬時に調べることができるようにもなりました。しかし「もの」は物理的に運ばなければなりません。それを物理的に保管しておく場所も必要です。時間が経つと「もの」は劣化することが多いので品質管理も必要になります。私たちがいま目にしている「もの」はこのような物流機能があってこそ存在するのです。

 

物流も人知れずに進化しつつあります。たとえばリードタイム短縮が挙げられます。通信販売でものを購入すれば翌日には自宅に届けられます。離れた場所に住む知人に対して何かを送る場合でも2日程度で届けることが可能です。つまり多くの人が物流の進化の恩恵を被っているわけです。

 

このありがたみが今一つピンとこないかもしれません。しかし震災の時のように一度サプライチェーンが途切れると皆さんのもとにものが届かないことになります。こういった状況になって初めて物流のありがたみを実感できるのかもしれません。しかし物流は自分たちのPRが不足しているためかその重要性についてまわりの人たちに伝えきれていないように思われます。

 

物流の地位が向上しなければ良い人財も集まりません。魅力ある仕事だという認識を持ってもらえないからです。では物流の当事者はこの状況について手をこまねいて放置していて良いのでしょうか。

 

 

2. 顧客満足度を知ろう

世間の物流に対する認識が低いことは事実ですが、物流業務に携わっている人にとってみると物流の地位が低いこと自体に非常に悔しい思いを持っているのではないでしょうか。ただし私たち物流に携わる者は今一度冷静になって考えてみる必要があると思います。

 

何を考えてみるのか?それは本当に価値ある物流を顧客に提供できているかどうかについてです。顧客の満足度を得られる仕事をしているのかどうかという観点で見直してみることも必要です。

 

【 顧客の満足度 】 顧客満足度 = 顧客の感じたレベル - 顧客の事前期待値

つまり「顧客の期待値通りの仕事をしたのであれば満足度はゼロ」それ以下であれば満足度はマイナスになるということです。

 

運送を事例にとって考えてみましょう。顧客の指定した時刻に品質を維持して契約価格で運送できたとしたらそれは事前の期待値通りですから満足度は「ゼロ」とうことになります。もし荷主の荷物を扱う際に「荷姿に関する改善アドバイス」をしたとしたらどうでしょうか。この場合は事前期待値を上回るでしょうから満足度はプラスとなります。

 

荷主が荷姿を改善したら荷量が減って売り上げが減少するから改善アドバイスなどしないという会社は自ら物流のレベルを低めていると考えられます。そのような会社は仕事が無くなっても仕方がないと思います。むしろ荷主に喜ばれることで仕事は拡大すると考えられるのではないでしょうか。このように顧客満足度については一度考えてみるか荷主に聞いてみると良いのではないでしょうか。

 

もうひとつ物流の地位向上のために大切なことがあります。それは自分たちの業務領域を狭めないということです。何を言っているかというと、運送や保管だけ言われたことをこなすだけではいつまでたっても認知されないということです。

 

顧客の在庫が溢れておりそれが買い方の問題であれば最低でもその旨顧客に知らせてあげる、荷姿が悪くて製品品質に影響を与える恐れがあるのであればそのことについてフィードバックしてあげるなどの「物流作業」から一歩踏み出したバリューを仕事に加えることです。

 
  物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

 

3. 自ら変わること

物流は、自分たちの効率を顧客のメリットよりも優先して実施することが見受けられイメージを悪くしている節もあります。それでよく「運び屋」と揶揄されることがあります。物流の重要機能である運搬や輸送を指してこのように言われるわけですが、この言葉の裏にはものを運搬はできるものの、単に言われたとおりにやるだけ、という意味が含まれているようです。

 

自分たちの効率を追求することは当然あってよいのですが、極論すれば顧客のデメリットの上に効率化することは望ましくありません。たとえばトラック積載率を向上させたいために不要なものまでまとめて運ぶ、運搬効率を上げたいために荷姿を大型化するような例が挙げられます。顧客にとって要らないものまで受け取らなければならず、その点でデメリットが発生しているといえます。

 

物流の地位向上のためには真っ先にこのような身勝手な効率化は避けなければなりません。じゃあどうやって効率化すればよいんだ?という意見も聞こえてきそうです。それに対してはもっと工夫して下さい、もっと勉強して下さい、ということに尽きると思います。他業界の改善を参考にする、他社を見学してみる、社外の勉強会に積極的に参加するなどの「努力」が必要です。

 

常に顧客のために、という...

物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

 

1. それでも無くならない物流

日本では物流に対する学問体系もしっかりし、物流に対する認識がそれほど高くないことは皆さんもお気づきのことでしょう。大学で物流を学びたいという意思のある学生もあまり聞いたことがありません。物流学科を卒業しても物流事業に就く学生はほとんどいないと聞いています。

 

会社の中にあっても物流部門が無いか、あったとしてもその地位は低いと言わざるを得ません。会社によっては他の部門で使えない人を物流に回すという話さえ存在するのです。物流にずっと携わってきた者にとっては忸怩たるものがあると思います。経済を支えている重要な機能である物流の認知度が低い理由は何でしょうか。

 

昔から日本ではサービスはタダだという認識が強すぎる気がします。ものを頼めば自動的に届くと思っている人がたくさんいらっしゃいます。しかもそれに対して対価を支払うという認識も薄い場合があります。これは通信販売での「配送料無料」も影響しているものと思われます。

 

インターネットが大きく社会を変化させました。情報はあっという間に相手に伝えることが可能になりました。欲しい情報も瞬時に調べることができるようにもなりました。しかし「もの」は物理的に運ばなければなりません。それを物理的に保管しておく場所も必要です。時間が経つと「もの」は劣化することが多いので品質管理も必要になります。私たちがいま目にしている「もの」はこのような物流機能があってこそ存在するのです。

 

物流も人知れずに進化しつつあります。たとえばリードタイム短縮が挙げられます。通信販売でものを購入すれば翌日には自宅に届けられます。離れた場所に住む知人に対して何かを送る場合でも2日程度で届けることが可能です。つまり多くの人が物流の進化の恩恵を被っているわけです。

 

このありがたみが今一つピンとこないかもしれません。しかし震災の時のように一度サプライチェーンが途切れると皆さんのもとにものが届かないことになります。こういった状況になって初めて物流のありがたみを実感できるのかもしれません。しかし物流は自分たちのPRが不足しているためかその重要性についてまわりの人たちに伝えきれていないように思われます。

 

物流の地位が向上しなければ良い人財も集まりません。魅力ある仕事だという認識を持ってもらえないからです。では物流の当事者はこの状況について手をこまねいて放置していて良いのでしょうか。

 

 

2. 顧客満足度を知ろう

世間の物流に対する認識が低いことは事実ですが、物流業務に携わっている人にとってみると物流の地位が低いこと自体に非常に悔しい思いを持っているのではないでしょうか。ただし私たち物流に携わる者は今一度冷静になって考えてみる必要があると思います。

 

何を考えてみるのか?それは本当に価値ある物流を顧客に提供できているかどうかについてです。顧客の満足度を得られる仕事をしているのかどうかという観点で見直してみることも必要です。

 

【 顧客の満足度 】 顧客満足度 = 顧客の感じたレベル - 顧客の事前期待値

つまり「顧客の期待値通りの仕事をしたのであれば満足度はゼロ」それ以下であれば満足度はマイナスになるということです。

 

運送を事例にとって考えてみましょう。顧客の指定した時刻に品質を維持して契約価格で運送できたとしたらそれは事前の期待値通りですから満足度は「ゼロ」とうことになります。もし荷主の荷物を扱う際に「荷姿に関する改善アドバイス」をしたとしたらどうでしょうか。この場合は事前期待値を上回るでしょうから満足度はプラスとなります。

 

荷主が荷姿を改善したら荷量が減って売り上げが減少するから改善アドバイスなどしないという会社は自ら物流のレベルを低めていると考えられます。そのような会社は仕事が無くなっても仕方がないと思います。むしろ荷主に喜ばれることで仕事は拡大すると考えられるのではないでしょうか。このように顧客満足度については一度考えてみるか荷主に聞いてみると良いのではないでしょうか。

 

もうひとつ物流の地位向上のために大切なことがあります。それは自分たちの業務領域を狭めないということです。何を言っているかというと、運送や保管だけ言われたことをこなすだけではいつまでたっても認知されないということです。

 

顧客の在庫が溢れておりそれが買い方の問題であれば最低でもその旨顧客に知らせてあげる、荷姿が悪くて製品品質に影響を与える恐れがあるのであればそのことについてフィードバックしてあげるなどの「物流作業」から一歩踏み出したバリューを仕事に加えることです。

 
  物流の地位向上のために、顧客満足度を知り自ら変わる

 

3. 自ら変わること

物流は、自分たちの効率を顧客のメリットよりも優先して実施することが見受けられイメージを悪くしている節もあります。それでよく「運び屋」と揶揄されることがあります。物流の重要機能である運搬や輸送を指してこのように言われるわけですが、この言葉の裏にはものを運搬はできるものの、単に言われたとおりにやるだけ、という意味が含まれているようです。

 

自分たちの効率を追求することは当然あってよいのですが、極論すれば顧客のデメリットの上に効率化することは望ましくありません。たとえばトラック積載率を向上させたいために不要なものまでまとめて運ぶ、運搬効率を上げたいために荷姿を大型化するような例が挙げられます。顧客にとって要らないものまで受け取らなければならず、その点でデメリットが発生しているといえます。

 

物流の地位向上のためには真っ先にこのような身勝手な効率化は避けなければなりません。じゃあどうやって効率化すればよいんだ?という意見も聞こえてきそうです。それに対してはもっと工夫して下さい、もっと勉強して下さい、ということに尽きると思います。他業界の改善を参考にする、他社を見学してみる、社外の勉強会に積極的に参加するなどの「努力」が必要です。

 

常に顧客のために、ということを最優先すれば物流の地位は徐々に向上します。この数年における通販物流が良い例です。我儘な顧客の要望に応えることで物流の質を上げてきました。すぐに欲しい顧客には超短リードタイムで届けます。顧客の家以外で受け取れるように宅配ボックスやコンビニでの受け取りを可能にしました。いずれアメリカで行われているようなドライブスルー方式やタクシーでの宅配なども実現するかもしれません。

 

顧客の方を向いていればどのようなニーズがあるのかがわかります。それにいち早く対応していければ物流も見直されることに違いありません。そして運送や倉庫業務といった狭い領域から早く脱し、それ以上の付加価値業務に進出していきましょう。物流が加工組立や小売りを行ってもよいのですから。併せて人財育成を進めていきましょう。社内でどんどん勉強させていきましょう。社員に対する要求水準も上げていきましょう。

 

人から認められるためには自ら変わることが重要です。すべては自己責任だということを肝に銘じていきましょう。

 

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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