1. 海外からの調達
製造原価高騰により、海外で部品を調達し、原価コストを下げるということがどんな部品も検討されています。理論上は正しい動きだとは思うのですが、部品の質が悪くトラブルが絶えず海外調達はリスクが大きく、メリットが無いと結論づけられてしまうこともあります。
ただ、やはり安く仕入れることができる部品もあるのも現実で、企業の海外調達の動きは無くなることはありません。そこで調達担当者は先入観を排し、血眼になって、安くても高品質の部品を短納期で調達しようと努力します。
確かに一般的に、品質や工場の管理力には日本と新興国では差があることは事実で、しかも安い労働力に頼った工場の製品は、継続的に安定した品質を確保することは望めません。つまり生産工程で不良を作らない仕組みを確立させるか、日本人スタッフを現地に派遣して出荷前検査で不良を出荷しないようにするか、どちらを取るかと言うと、生産工程で不良を作らない仕組みを確立している工場であり、必然的に高賃金のスタッフで管理されていることになります。
しかし、逆に賃金水準の高さが技術,品質の優位へ,さらにコスト競争力の優位へと繋がる面もあると考えられます。そこで、改めて海外に調達先を求める理由を考えてみます。
(1) ただ低コストだけを求めて海外から調達する
(2) 望む価格、望む品質のものをグローバルで調達する
もし(2)であるなら、調達担当者にとって、調達先の選定は、そのように面倒くさくて効率の悪い仕事が待っています。優れた調達先は、探す努力をしないと見つかりません。小規模で知名度は無いがしっかりした優れたサプライヤーを探し出すのは調達担当者の仕事です。
多くの企業がグローバル調達に立ち向かうのは、それを持ってしても有り余るほどのメリットがあると、前向きに考えているからなのではないでしょうか。
2. 原価低減ものづくり改革
中小企業では、社長の正しい考え方、リーダーシップののもとで、改善活動を行うかどうかで、成果があがり定着するかどうかが決まります。
利益の出る「原価低減ものづくり改革」の基本は、ムダを徹底的に省き、生産性を向上させるトヨタの「ジャストインタイム生産方式」です。中小企業の工場の改革を進めるにはどうしたらいいか?考えてみます。
(1) 導入の心構え
トヨタ生産方式を進めていく中で、「7つのムダ」という言葉があります。
① 在庫のムダ
② 作り過ぎのムダ
③ 運搬のムダ
④ 手待ちのムダ
⑤ 不良を作るムダ
⑥ 動作のムダ
⑦ 加工方法のムダ
「トヨタ生産方式」では、この7つのムダを排除しなければならない!としています。ただ、「ムダ取り」や「5S」だけを推進しようと思っても、おそらく1年以内に挫折してしまうでしょう。最初の掛け声が大きいうちは、それでも、みんなやる気になってムダ取りを始めるのですが、これを継続して、効果を上げていくには、目的を理解し、目標を定めて取り組まなくてはなりません。
「カンバン方式」「セル生産方式」などについてもおなじです。目的を理解せず、ただ個別に「手法」だけをつまみ食いして導入しても全く効果は上がりません。
「原価低減ものづくり改革」を導入する目的は、作業のムダや在庫のムダをなくして費用を節約し利益を上げる事です。導入計画の中に、数値目標を具体的に掲げ、目標に達するまでのプロセスを確実に踏んでいかなければならないのです。
(2) 「原価低減ものづくり改革」の準備ステップ
中小企業で、「原価低減ものづくり改革」を導入する場合のステップについて考えてみましょう。中小企業は日常の業務に追われ、中々改善が進まないと言った悩みがあります。そんな中、「原価低減ものづくり改革」の導入を進めるに当たって、何が大切なのか?整理してみました。
【経営者のリーダーシップ】
社長をはじめとする経営陣が、この方式の考え方について、正しく、しっかり理解しなければなりません。早急に結果を求めたり、「カンバン方式」「ジャストインタイム」などの手法を導入することが目的のすべてではないことを理解すべきです。
その上で、正式に導入を進める前に、コンサルタントなどの専門家を講師に招き講習会を開いて、導入するかどうか、社内検討を行います。参加者は社長以下、係長や主任まで、役職者全員とします。一方的に話を聞くだけでなく、自社の実情と、それに合わせた導入方法などについて討論を重ね、どのような内容で、どの部分から導入していくのか?を全員で意志合わせを行います。
ここまでは、社長が先頭に立って、強いリーダーシップにより社員をリードして方向性を決定します。最も重要なことは、まず「原価低減ものづくり改革」および、その基本である「トヨタ生産方式」の考え方を正しく理解することです。
【社内組織の立ち上げ】
方向性が決まったら、実際に実行するための社内組織(プロジェクトチーム)を立ち上げます。「**改善運動」などの名称を決めて社長が推進リーダー、以下各部門からメンバーを選定して役割を決め、社内の残作業員まで周知します。また全体計画とスケジュールを決めて優先順位をつけます。
実際には、工場全体の無駄を排除し、リードタイム短縮、生産性向上のための様々な改善を主体的に推進します。改善テーマとしては、次の7件などです。
・ライン化
・ロット数量の削減
・段取りがえ時間の短縮
・生産の平準化
・セル生産方式の導入
・自働化の推進
・多能工化の推進
社長は社内キックオフ大会を開催して、全員の前で運動のスタートを宣言します。これから会社全体で改革行うのだという意気込みを全員に周知徹底させます。
【社内各制度の充実】
「**改善運動」の運用をスムースに行うため、以下のような社内制度(仕組み)を定めます。主なものから、徐々に仕組み化します。
・【全体会議】
各委員会の活動内容の報告、全体の進捗確認を月に1回程度開催します。
報告は、報告フォーマットを決め、各委員会が記入し、配付します。
フォーマットには、計画、今月までの進捗内容、問題点、対策を記入します。
社長は必ず出席します。
議事録を作成し、全員に配付します。
次回までの検討項目、担当者を明確にします。
スケジュールの遅れは、必ず取り戻すよう調整を図ります。
・【見える管理の導入】
活動の見える化
各指標の達成度、推移の見える化
情報の見える化
ものの見える化
日常管理の見える化
・【一日改革道場】
週に一回開催、段取り時間の短縮、ネック工程の改善、仕掛在庫などのテーマを決める。
現場で実際の工程、作業を見ながら改善案を出し合い、その場で改善する。
そのテーマは、目標を達成するまで徹夜してでもその日に解決させる。
・【表彰制度】
改善提案活動制度を運用。
一般作業員から「5S」「ムダ取り」「作業改善」などのアイデアおよび実施内容を募集します。
月に1回、全社朝礼で対象者を表彰し...