普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その11)

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イノベーション

 
 前回は、イノベーション実現には、「リスクは必然と理解し、積極的に対峙する姿勢」が求められるという解説をしました。今回は、それをどう実現するかを解説します。
 

1. リスクに対処する強固なシステムを持つ

 
 「リスクは必然と理解し積極的に対峙する姿勢」は、単なる精神論だけでは、実現できないことは明らかです。どうやったらその「姿勢」を持つことができるのでしょうか。それは、社内にリスクに対処するための強固なシステムを持ち、それを運用し、その運用の成功の実績から、リスクへの対処の自信を経営陣および社員が共有できるようにすることだと考えます。社内にリスクに対処する強固なシステムを持てば、安心して積極的にリスクに対処することができます。
 

2. リスクに対処する=他社に先んじて不確実性に対処する

 
 リスクは、いくつかの定義がありますが、経済学においては、リスクは「ある事象の変動に関する不確実性」と定義されています。つまり、リスクに対処する強固なシステムとは、すなわち不確実性に対処するためのシステムと言い換えることができます。更に、企業におけるイノベーション追求においては、追加して考慮すべきこととして競争があります。イノベーションは、世の中で初めて実現して初めてイノベーションになります。従って、企業は、競合他社よりより強固な不確実性に対処するシステムを持ち、他社に先んじて積極的に対処することが求められます。
 

3. 「不確実性に対処する強固なシステム」の5つの要件

 
 「他社に先んじて不確実性に対処する」には、以下の5つの要件があると思います。
 

(1) 早く取り組む

 
 不確実性の高い早期の段階から、明確な活動を開始し、取り組むことです。不確実性が高いからといって取組に逡巡し、先延ばしをし、環境が明確になった時点で取り組んでも、その結果は、競合他社と同じことをする結果になります。それはイノベーションとは言えません。「機が熟す」前に、取組を開始しましょう。
 

(2) 初期には大きな投資をしない

 
 不確実性の高い段階で、大きな人的・金銭的投資を行うことは賢明ではありません。なぜなら、不確実性が高いが故に、その活動やその結果が誤っている可能性は少なくないからです。不確実性の高い段階で大きな投資をすることは、博打と同じです。初期には少額の投資で実際に活動をしてみることで、内在するリスクを明らかにし、初期には意思決定に必要な重要な情報を収集することを主眼とします。
 

(3) 仮説を持つ

 
 初期には不確実性が高いので、手元には情報は少ないものの、その限られた情報から仮説を創出する努力を行い、その仮説に基づき活動をする、すなわち仮説検証の活動をするということです。そうすることで、活動の方向性が絞られ、不確実性の高い段階でも効率的な活動をすることができます。
 

(4) 速くやる

 
 不確実な環境下ですので、仮説を実行に移しても、間違っていてやり直しという結論になることは必ずあります。また、競合他社に先んじて活動を開始したとしても、他社が追いつき、追い越されてしまう可能性もあります。したがって、速く活動しなければなりません。英語にquick and dirtyという言葉があります。完璧ではなくとも、とにかく速くや...
 

イノベーション

 
 前回は、イノベーション実現には、「リスクは必然と理解し、積極的に対峙する姿勢」が求められるという解説をしました。今回は、それをどう実現するかを解説します。
 

1. リスクに対処する強固なシステムを持つ

 
 「リスクは必然と理解し積極的に対峙する姿勢」は、単なる精神論だけでは、実現できないことは明らかです。どうやったらその「姿勢」を持つことができるのでしょうか。それは、社内にリスクに対処するための強固なシステムを持ち、それを運用し、その運用の成功の実績から、リスクへの対処の自信を経営陣および社員が共有できるようにすることだと考えます。社内にリスクに対処する強固なシステムを持てば、安心して積極的にリスクに対処することができます。
 

2. リスクに対処する=他社に先んじて不確実性に対処する

 
 リスクは、いくつかの定義がありますが、経済学においては、リスクは「ある事象の変動に関する不確実性」と定義されています。つまり、リスクに対処する強固なシステムとは、すなわち不確実性に対処するためのシステムと言い換えることができます。更に、企業におけるイノベーション追求においては、追加して考慮すべきこととして競争があります。イノベーションは、世の中で初めて実現して初めてイノベーションになります。従って、企業は、競合他社よりより強固な不確実性に対処するシステムを持ち、他社に先んじて積極的に対処することが求められます。
 

3. 「不確実性に対処する強固なシステム」の5つの要件

 
 「他社に先んじて不確実性に対処する」には、以下の5つの要件があると思います。
 

(1) 早く取り組む

 
 不確実性の高い早期の段階から、明確な活動を開始し、取り組むことです。不確実性が高いからといって取組に逡巡し、先延ばしをし、環境が明確になった時点で取り組んでも、その結果は、競合他社と同じことをする結果になります。それはイノベーションとは言えません。「機が熟す」前に、取組を開始しましょう。
 

(2) 初期には大きな投資をしない

 
 不確実性の高い段階で、大きな人的・金銭的投資を行うことは賢明ではありません。なぜなら、不確実性が高いが故に、その活動やその結果が誤っている可能性は少なくないからです。不確実性の高い段階で大きな投資をすることは、博打と同じです。初期には少額の投資で実際に活動をしてみることで、内在するリスクを明らかにし、初期には意思決定に必要な重要な情報を収集することを主眼とします。
 

(3) 仮説を持つ

 
 初期には不確実性が高いので、手元には情報は少ないものの、その限られた情報から仮説を創出する努力を行い、その仮説に基づき活動をする、すなわち仮説検証の活動をするということです。そうすることで、活動の方向性が絞られ、不確実性の高い段階でも効率的な活動をすることができます。
 

(4) 速くやる

 
 不確実な環境下ですので、仮説を実行に移しても、間違っていてやり直しという結論になることは必ずあります。また、競合他社に先んじて活動を開始したとしても、他社が追いつき、追い越されてしまう可能性もあります。したがって、速く活動しなければなりません。英語にquick and dirtyという言葉があります。完璧ではなくとも、とにかく速くやることを意味することです。初期には、quick and dirtyで進めることが必要です。
 

(5) 節目々々で明確な評価と意思決定をする

 
 一方で、「速くやる」という姿勢だけでは、とにかく先を急ぐことになりがちです。それは、それで危険です。節目々々で立ち止まって、それまでの活動から得られた情報から今後の読みを総合的に評価し、今見えてきた新しいリスクは何か、今すべき重要な活動はなにか、そのプロジェクトを先に進めるべきか、等 を客観的、俯瞰的な視点から考え直すということが求められます。
 
  

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

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