普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その19)

更新日

投稿日

1. 人間は合理性と非合理性を合わせ持つ生き物

 
 人間に他の動物とは異なり、今ある高い文明を実現させたのは、合理的に思考するという人間の能力ゆえです。しかし一方で、例えば企業経営の場においては、内外メディアが報道する企業の不祥事は尽きることがなく、不合理な思考と活動は世界中の企業に常に存在していると言っても過言ではありません。
 
 人間という生き物は、そもそも合理性と非合理性を合わせ持つ生きものであるということが言えるかと思います。しかし、イノベーションの実現の視点からは、合理性の追求は極めて重要です。今回から数回にわたり、イノベーション実現の視点から合理性を議論したいと思います。
 

2. 合理性はイノベーションを阻害するか

 
 合理性にとらわれることは、イノベーションにとっては制約であるという議論があります。実際に、そのような題名の書籍も出版されています。合理性をどう捉えるかによって、それはある意味正しくはありますが(この点については次回議論します)、基本・根本の部分においては、むしろ合理的に思考することは、イノベーション実現の必須の要件です。
 

3. 合理的な思考は知識の本質を提示してくれる

 
 なぜかと言うと、ノベーションにおいては本質を押さえることが重要であり、合理性は本質に行き着くための唯一の道であるからです。本質はそこに汎用性があるがゆえに、様々なイノベーションの発想の原点になるからです。つまり本質を押させた上で、そこから自由に発想を広げることにより、より多くのイノベーションが創出されるということです。
 
 イノベーションの研究で有名なシュンペーターの世の中に広く受け入れられている「イノベーションとは既存知識の新結合」や、良く引用されるニュートンの「私が遠くを見ることができたとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ。」というものがありますが、ここで既存知識や巨人の肩で得られていることとは物事の本質です。
 
 イノベーション
 

4. 知識の本質からイノベーションを起こすには合理的思考の姿勢が必須

 
 一方で、本質的知識だけでは、イノベーションを起こすことはできません。イノベーションを起こすような思考や行動をとらなければなりません。例えば、不確実性を是として捉えることや、他社と異なる活動や思考をするということです。これら2つは、イノベーション実現の大前提で、この前提を欠いた活動では、イノベーションを継続的に生み出すことは不可能です。
 ...

1. 人間は合理性と非合理性を合わせ持つ生き物

 
 人間に他の動物とは異なり、今ある高い文明を実現させたのは、合理的に思考するという人間の能力ゆえです。しかし一方で、例えば企業経営の場においては、内外メディアが報道する企業の不祥事は尽きることがなく、不合理な思考と活動は世界中の企業に常に存在していると言っても過言ではありません。
 
 人間という生き物は、そもそも合理性と非合理性を合わせ持つ生きものであるということが言えるかと思います。しかし、イノベーションの実現の視点からは、合理性の追求は極めて重要です。今回から数回にわたり、イノベーション実現の視点から合理性を議論したいと思います。
 

2. 合理性はイノベーションを阻害するか

 
 合理性にとらわれることは、イノベーションにとっては制約であるという議論があります。実際に、そのような題名の書籍も出版されています。合理性をどう捉えるかによって、それはある意味正しくはありますが(この点については次回議論します)、基本・根本の部分においては、むしろ合理的に思考することは、イノベーション実現の必須の要件です。
 

3. 合理的な思考は知識の本質を提示してくれる

 
 なぜかと言うと、ノベーションにおいては本質を押さえることが重要であり、合理性は本質に行き着くための唯一の道であるからです。本質はそこに汎用性があるがゆえに、様々なイノベーションの発想の原点になるからです。つまり本質を押させた上で、そこから自由に発想を広げることにより、より多くのイノベーションが創出されるということです。
 
 イノベーションの研究で有名なシュンペーターの世の中に広く受け入れられている「イノベーションとは既存知識の新結合」や、良く引用されるニュートンの「私が遠くを見ることができたとしたら、それは巨人の肩の上に立っているからだ。」というものがありますが、ここで既存知識や巨人の肩で得られていることとは物事の本質です。
 
 イノベーション
 

4. 知識の本質からイノベーションを起こすには合理的思考の姿勢が必須

 
 一方で、本質的知識だけでは、イノベーションを起こすことはできません。イノベーションを起こすような思考や行動をとらなければなりません。例えば、不確実性を是として捉えることや、他社と異なる活動や思考をするということです。これら2つは、イノベーション実現の大前提で、この前提を欠いた活動では、イノベーションを継続的に生み出すことは不可能です。
 

5. 合理性追求をイノベーション実現の出発点として位置付ける

 
 人間は放っておけば、ついつい非合理な思考や活動をしてしまうものです。なぜなら、人間は感情の生きものでもあるからです。しかし、イノベーションを継続して起こす組織を企業の中に実現しようと思えば、人間のこの本質的な欠点を常に念頭に置き、それを矯正する活動や思考を維持しなければなりません。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術戦略  研究テーマの多様な情報源(その35)

    前回は、個人、組織単位で共通的にスパークの頻度を上げる方法について、解説しました。今回は、革新的テーマ創出・実現のため...

    前回は、個人、組織単位で共通的にスパークの頻度を上げる方法について、解説しました。今回は、革新的テーマ創出・実現のため...


すり合わせ技術は、ものづくり企業の強みか

1.下町ロケットの見せ場  池井戸潤原作の「下町ロケット」がテレビドラマ化され、ドラマの中で、中小企業の典型的な「すり合わせ技術」が紹介されている見...

1.下町ロケットの見せ場  池井戸潤原作の「下町ロケット」がテレビドラマ化され、ドラマの中で、中小企業の典型的な「すり合わせ技術」が紹介されている見...


Gainは見えにくい 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その87)

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素である「自律性」と「有能感」の内、後者の実現手段として...

   今回も引き続き、エドワード・デシが内発的動機付けに必要と主張している2つの要素である「自律性」と「有能感」の内、後者の実現手段として...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
開発生産性とは プロジェクト管理の仕組み (その17)

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...

 前回のその16に続いて解説します。作業成果物メトリクスは、作業成果物を測定することにより作業量から見た進捗を把握するためのものですが、その活用方法につい...


作業要素の進捗分析2 プロジェクト管理の仕組み (その19)

  前回のその18:作業要素の進捗分析1に続いて解説します。    図50は製品構造の観点から管理単位にブレークダウンした例です。製品がどの...

  前回のその18:作業要素の進捗分析1に続いて解説します。    図50は製品構造の観点から管理単位にブレークダウンした例です。製品がどの...


進捗管理の精度を上げる:第3回 プロジェクト管理の仕組み (その15)

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...

 回路図や実装図からは、端子数以外にも標準部品、後付部品、自動実装機部品などをカウントすることも可能です。図45 は、これらについて見積もり(計画)を作成...