将来に向かっての強みを設定する要件 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その47)

更新日

投稿日

 
  技術マネジメント
 
 前回はKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」の中の「強みは未来志向で設定する」について解説しましたが、今回からは、「どう強みを未来志向で設定するのか」を考えます。
 
 前回は強みはいつかは陳腐化するため、常に新たな強みを作るべく、自社が現状では弱い、もしくはない強み候補を設定し、その強み候補を名実ともに今後の戦略的な展開の中で強みに育てることが重要であるというお話をしました。以下は、自社にはその強み候補は保有していない、もしくは保有していてもその水準は低いことを前提に、解説していきます。
 

1. 将来に向かっての強みを設定する4つの要件

 
 私は、将来に向かっての強みを設定するには、以下の4つの要件を満たす強み候補を選択するのが良いと考えています。
 
  • 第1要件:事業ビジョン・事業ミッションへの貢献が大きい
  • 第2要件:創出顧客価値が大きい
  • 第3要件:顧客価値創出領域が広い
  • 第4要件:いずれの企業にも達成が難しい
 

(1) 第1要件:事業ビジョン・事業ミッションへの貢献が大きい

 
 「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。」これは有名なグーグルの事業ミッションです。(ここでは、事業ビジョンと事業ミッションは、同義のものと考え、いずれも自社の将来の目指すべき方向を示すものと考え、両者を区別はしていません。)
 
 グーグルでは、このような事業ミッションから様々な世界を変えるような新しい技術や事業を生んできています。グーグルの設立は1998年ですので、まだ設立されてから20年しかたっていませんが、グーグルグループの持株会社であるアルファベットの2018年の売上は、1,368億ドル(15兆円)に達します。
 
 これだけの売上高を、このような短期間に実現したことを考えると、このような売上を達成するための強みは揃っていなかったと考えるのが自然です。
 
 グーグルでは、上の事業ミッションを実現するための、様々な新しいサービス、事業そして技術を日々考え、それを実現すべく活動をしてきた結果がこの売上高という事ができます。逆に言うと、これまで社内になかった、もしくはあっても水準が低かった能力を強み候補として設定するには、事業ミッション・事業ビジョンが必要であるといことです。
 
 事業ミッションに貢献するような新たな強みは、簡単に獲得・実現することはできません。そこには、経営者・社員の大きなエネルギーと資金を継続的に注いでいかなければなりません。
 
 そのようなエネルギーや資金に値する強み候補は、自社の事業の強い方向性に基づいている必要があります。しかしな...
 
  技術マネジメント
 
 前回はKETICモデルのK(Knowledge)の知識の3つの要素の内、「自社の強み」の中の「強みは未来志向で設定する」について解説しましたが、今回からは、「どう強みを未来志向で設定するのか」を考えます。
 
 前回は強みはいつかは陳腐化するため、常に新たな強みを作るべく、自社が現状では弱い、もしくはない強み候補を設定し、その強み候補を名実ともに今後の戦略的な展開の中で強みに育てることが重要であるというお話をしました。以下は、自社にはその強み候補は保有していない、もしくは保有していてもその水準は低いことを前提に、解説していきます。
 

1. 将来に向かっての強みを設定する4つの要件

 
 私は、将来に向かっての強みを設定するには、以下の4つの要件を満たす強み候補を選択するのが良いと考えています。
 
  • 第1要件:事業ビジョン・事業ミッションへの貢献が大きい
  • 第2要件:創出顧客価値が大きい
  • 第3要件:顧客価値創出領域が広い
  • 第4要件:いずれの企業にも達成が難しい
 

(1) 第1要件:事業ビジョン・事業ミッションへの貢献が大きい

 
 「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。」これは有名なグーグルの事業ミッションです。(ここでは、事業ビジョンと事業ミッションは、同義のものと考え、いずれも自社の将来の目指すべき方向を示すものと考え、両者を区別はしていません。)
 
 グーグルでは、このような事業ミッションから様々な世界を変えるような新しい技術や事業を生んできています。グーグルの設立は1998年ですので、まだ設立されてから20年しかたっていませんが、グーグルグループの持株会社であるアルファベットの2018年の売上は、1,368億ドル(15兆円)に達します。
 
 これだけの売上高を、このような短期間に実現したことを考えると、このような売上を達成するための強みは揃っていなかったと考えるのが自然です。
 
 グーグルでは、上の事業ミッションを実現するための、様々な新しいサービス、事業そして技術を日々考え、それを実現すべく活動をしてきた結果がこの売上高という事ができます。逆に言うと、これまで社内になかった、もしくはあっても水準が低かった能力を強み候補として設定するには、事業ミッション・事業ビジョンが必要であるといことです。
 
 事業ミッションに貢献するような新たな強みは、簡単に獲得・実現することはできません。そこには、経営者・社員の大きなエネルギーと資金を継続的に注いでいかなければなりません。
 
 そのようなエネルギーや資金に値する強み候補は、自社の事業の強い方向性に基づいている必要があります。しかしながら、日本企業においてはこの事業ミッションが軽視されているように
思えます。
 
 もともとミッションという言葉が、キリスト教から生まれ、布教活動の中で頻繁に使われてきたように、西洋においては重視される概念ですが、どうも日本においては、そうではありません。しかし、今世界が大きく変化するなか、自社の変革に向けて日本の企業に最も求められているものの一つのが、この事業ミッションではないかと思います。
 
 次回に続きます。
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
用途の探索 技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その3)

     今回は、次世代の成長のタネを作る上で必要な研究開発テーマの創出方法の一つである用途探索についてお話いたします。  用途...

     今回は、次世代の成長のタネを作る上で必要な研究開発テーマの創出方法の一つである用途探索についてお話いたします。  用途...


イノベーション 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その141)

  イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。 &n...

  イノベーションの活動を行うことを妨げる「失敗のコストのマネジメント」の解説をしていますが、今回もこの解説を続けたいと思います。 &n...


設計部門の仕組み改革 【連載記事紹介】おすすめセミナーのご紹介  

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...

  設計部門の仕組み改革の連載記事が無料でお読みいただけます!   ◆設計部門と製造部門 製造部門における設備投資は、設備...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
技術系リーダーとして身に付けておくべきスキルとは

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...

        企業の成長のためには、従来の事業の延長線上に留まることなく、積極的に新製品や新規事業の創出、...


プロジェクトの計画策定 プロジェクト管理の仕組み (その3)

 前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...

 前回のその2:CMMIの要件管理に続いて、プロジェクトの計画策定について解説します。CMMIでは次のことができている必要があります。   ...


金型メーカー設計部門の業務診断事例

 今回は、金型メーカーの設計部門を業務診断した事例を箇条書きで紹介しますので、診断項目とそのポイントを参考にご覧下さい。 1. 複数設計者で強度や品...

 今回は、金型メーカーの設計部門を業務診断した事例を箇条書きで紹介しますので、診断項目とそのポイントを参考にご覧下さい。 1. 複数設計者で強度や品...