普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その180)妄想とイノベーション創出 

投稿日

普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その180)妄想とイノベーション創出 

・見出しの番号は、前回からの連番です。

【目次】

    妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。引き続き、妄想のすすめについて解説します。妄想をするには、それなりにエネルギーが必要になります。そのようなエネルギーを生み出すためには、それなりの心構えや工夫が必要になります。今回も引き続き、妄想を積極的に促す方法について、考えてみたいと思います。

     

    14. 妄想を積極的に促す方法(その14):妄想を行動に移す 

    妄想したことを一部でも良いので、行動に移してみる。その効果には、以下があるように思えます。

    (1)行動することで、新たな刺激を受ける

    ① 新な想像もしていなかった世界を経験できる

    妄想なので、そこにもとづき行動するとその多くをそれを否定する現実が見えたり、拒絶にあうことになります。しかし、その妄想の100%が否定されることもまたありません。1%ぐらいは潜在的に存在していたもの、受け入れられるものであることも多いのではないでしょうか。まさにその1%の存在を知ることは、大変貴重です。

     

    ② 他人からの新な気づきが得られる

    妄想をぶつける対象が人間(他人)である場合、その妄想によりそれまで存在しなかったような仮説ですから、他人にも刺激があります。その刺激を受けて他人が反応してくれる訳で、それらはまったく想定していなかったものである可能性があります。それら未知の反応も知ることも、大変貴重です。

     

    (2)単に行動するという事実だけからも、前向きなエネルギーが生まれる

    心理学の研究で、行動に移すだけで気持ちが前向きになるというものがあります。面倒だなと思っても、実際に行動に移すと、その面倒を忘れ前向きに取り組む姿勢にかわり、またその結果小さくてもなんらか得るものや前進(たとえば問題の解決、またそこまで行かずとも何か新しいことがわかるなど)がある。皆さんにも、そのような経験があるのではないでしょうか。

     

    15. 妄想を積極的に促す方法(その15):小さな失敗・徒労を数多く重ねることを目的・楽しみとする 

    一方で、頭のなかで妄想するだけではたいした時間やエネルギーは不要ですが、行動に移すことになると、一人一人の人間にはもともと限定されている時間やエネルギーを費やすことになります。そして、多くの場合妄想を行動に移しても、失敗や徒労に終わることになります。それが重なると、妄想を行動に移すモチベーションは雲消霧散してしまいます。

     

    そこで、そもそもイノベーションは多くの失敗や徒労を重ね、その結果やっと生まれるものであるという事実を踏まえ、失敗や徒労を重ねることを目的として、楽しむという姿勢を持つことが大事ではないかと思います。自分で失敗・徒労リストを作り、それが預金通帳の預金額が増えていくのを楽しみにするのと同様に、増えていくことを楽しむというイメージです。トーマス・エジソンの言葉に「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」というものがあります。まさにエジソンは、うまくいかない1万通りの方法を発見することを「楽しんだ」ということと思います。

     

    エジソンのように、失敗や徒労を重ねることを楽しむなど、心理的に可能なのでしょうか。私は可能と思います。

     

    失敗や徒労そのものではありませんが、たとえば旅をするといろいろなトラブルに直面します。その場では、大変な思いをする訳ですが、後から考えてみるとそれは良い経験や思い出として心の中に残るということがあります。私の例で恐縮ですが、旅行中にスリに遭う、自転車旅行中に溝に落ちけがをする、人に騙されるなど(いずれも海外での旅行中の...

    普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その180)妄想とイノベーション創出 

    ・見出しの番号は、前回からの連番です。

    【目次】

      妄想はネガティブに捉えられがちですが、私は妄想はイノベーション創出において、極めて重要な役割を果たすものであると考えています。引き続き、妄想のすすめについて解説します。妄想をするには、それなりにエネルギーが必要になります。そのようなエネルギーを生み出すためには、それなりの心構えや工夫が必要になります。今回も引き続き、妄想を積極的に促す方法について、考えてみたいと思います。

       

      14. 妄想を積極的に促す方法(その14):妄想を行動に移す 

      妄想したことを一部でも良いので、行動に移してみる。その効果には、以下があるように思えます。

      (1)行動することで、新たな刺激を受ける

      ① 新な想像もしていなかった世界を経験できる

      妄想なので、そこにもとづき行動するとその多くをそれを否定する現実が見えたり、拒絶にあうことになります。しかし、その妄想の100%が否定されることもまたありません。1%ぐらいは潜在的に存在していたもの、受け入れられるものであることも多いのではないでしょうか。まさにその1%の存在を知ることは、大変貴重です。

       

      ② 他人からの新な気づきが得られる

      妄想をぶつける対象が人間(他人)である場合、その妄想によりそれまで存在しなかったような仮説ですから、他人にも刺激があります。その刺激を受けて他人が反応してくれる訳で、それらはまったく想定していなかったものである可能性があります。それら未知の反応も知ることも、大変貴重です。

       

      (2)単に行動するという事実だけからも、前向きなエネルギーが生まれる

      心理学の研究で、行動に移すだけで気持ちが前向きになるというものがあります。面倒だなと思っても、実際に行動に移すと、その面倒を忘れ前向きに取り組む姿勢にかわり、またその結果小さくてもなんらか得るものや前進(たとえば問題の解決、またそこまで行かずとも何か新しいことがわかるなど)がある。皆さんにも、そのような経験があるのではないでしょうか。

       

      15. 妄想を積極的に促す方法(その15):小さな失敗・徒労を数多く重ねることを目的・楽しみとする 

      一方で、頭のなかで妄想するだけではたいした時間やエネルギーは不要ですが、行動に移すことになると、一人一人の人間にはもともと限定されている時間やエネルギーを費やすことになります。そして、多くの場合妄想を行動に移しても、失敗や徒労に終わることになります。それが重なると、妄想を行動に移すモチベーションは雲消霧散してしまいます。

       

      そこで、そもそもイノベーションは多くの失敗や徒労を重ね、その結果やっと生まれるものであるという事実を踏まえ、失敗や徒労を重ねることを目的として、楽しむという姿勢を持つことが大事ではないかと思います。自分で失敗・徒労リストを作り、それが預金通帳の預金額が増えていくのを楽しみにするのと同様に、増えていくことを楽しむというイメージです。トーマス・エジソンの言葉に「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」というものがあります。まさにエジソンは、うまくいかない1万通りの方法を発見することを「楽しんだ」ということと思います。

       

      エジソンのように、失敗や徒労を重ねることを楽しむなど、心理的に可能なのでしょうか。私は可能と思います。

       

      失敗や徒労そのものではありませんが、たとえば旅をするといろいろなトラブルに直面します。その場では、大変な思いをする訳ですが、後から考えてみるとそれは良い経験や思い出として心の中に残るということがあります。私の例で恐縮ですが、旅行中にスリに遭う、自転車旅行中に溝に落ちけがをする、人に騙されるなど(いずれも海外での旅行中の経験です)。今思うと良い思い出で、指折り数えたり、他人に自慢(笑)したりするものです。

       

      とは言いながらも、大きな失敗や挫折では、モチベーションを大きく損なうことは多いと思います。妄想を行動に移す時には、失敗や徒労はできるだけ小さなものとするような工夫は、同時に必要です。  

       

      次回に続きます。

       

      【 この記事をお読みの方へ、セミナーの紹介 】

      セミナーテーマは「創造性とイノベーション」です。イノベーションを促進し、新しいアイデアを生み出すための考え方やアプローチについて学びたい方に各社のセミナーから、お選びいただけます。

      【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      浪江 一公

      プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

      プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


      「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      環状構造で整理する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋(その91)

      ◆関連解説記事『技術マネジメントとは』    今回は、KETICモデルの「思考」の中の、「知識・経験を関係性で整理する」の下記(4)「環...

      ◆関連解説記事『技術マネジメントとは』    今回は、KETICモデルの「思考」の中の、「知識・経験を関係性で整理する」の下記(4)「環...


      原因、複数の結果 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その73)

       前々回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考え整理・拡大することについて解説をしています。今回は「原因と結果」の2つ目の類型の「...

       前々回から時系列や物理量で整理した知識を、更にそれらの関係性を考え整理・拡大することについて解説をしています。今回は「原因と結果」の2つ目の類型の「...


      位置関係-4 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その107)

         現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回まで三度にわたり、KETICモデルの思考の中の「位...

         現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回まで三度にわたり、KETICモデルの思考の中の「位...


      「技術マネジメント総合」の活用事例

      もっと見る
      擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その1)

        【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を...

        【目指すべき開発体制 連載目次】 目指すべき開発体制とは(その1)擦り合わせ型と組み合わせ型 目指すべき開発体制とは(その2)日本企業文化を...


      ‐操作性改善‐ ‐修理情報活用‐  製品・技術開発力強化策の事例(その1)

      1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...

      1.機械の操作性の改善  自社の機械を購入してくれた顧客を訪問し、操作性について苦情を聞くことを中心に営業活動をしている機械メ-カがあります。多品種...


      製品開発部へのカンバン導入記(その2)

              前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...

              前回からの続きです。前回は製品開発部がカンバンを導入するに至った簡単な経緯と、最初の問題点(...